ハルヤスミ句会 第二百二十三回

2019年8月

《 句会報 》

01 孫に聞く宇宙のはなし盆の月     こげら(光・案・第・タ・鋼・春)

02 憂き日なり逃ぐる毛虫を土葬にす   みなと

03 ヒロシマのははそ葉の母汗滂沱    佳子

04 ゆふだちやジェリー藤尾の唄流れ   脩平(明)

05 そのままに溽暑の夜となりにけり   タロー(佳)

06 剃り跡をそよと吹かるる初涼かな   こげら(光・奥)

07 色糸の指に巻きつく鏡花の忌     ルカ(脩・こ・順・三)

08 目覚むるや車窓あまねく露に満ち   こげら(光・佳)

09 桃好きの母のおやつにつきあひぬ   明治

10 ぎこちなく首振りはじむ扇風機    時人(奥・愛・鋼)

11 朝まだき眠りの中に蝉の声      ひろ子

12 弁当を作るロボット明け易し     光太郎(ル・案・時・順・三)

13 自転車の籠のチラシも夕立かな    春休(こ・鋼)

14 髪洗ふバカなオトコと言ひながら   一斗(脩・タ・益・三)

15 蝉時雨君の目覚めを伏して待ち    高弘(明)

16 この道のアーチとなりぬ蝉時雨    脩平(明・一)

17 揺れてゐるだけの体操生身魂     佳子(脩・こ・一・時・第・奥・愛・タ・益・三・春)

18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな  タロー(脩・ル・一・時・奥・佳)

19 漠然と首に激震クーラー裡      順一

20 無精髭二ミリほど生え苧殻焚く    高弘(時・タ)

21 取り敢へず雌を囲うて甲虫      一斗(益)

22 雲急ぐ置いてきぼりの盆の月     愛

23 日輪や行路難なる大蚯蚓       明治(光)

24 百日草紅の大輪重たげな       つよし

25 しろばなのしろましろなるさるすべり 明治(案)

26 短夜やひとり乗りたる深夜バス    脩平

27 冷房と本の匂ひの五階に出      つよし(こ・タ・順)

28 蔓伸びて側溝までも南瓜かな     順一

29 夏の果電光ニュース徒に流れ     佳子

30 耳聡き少女ひとりの台風圏      ルカ(ぐ)

31 夏草に地図を広げて岐れ道      愛(ル・時・鋼)

32 商談はさておき鱧の料理かな     光太郎(脩)

33 わが昼はしばらく素麺コメンテーター 案山子

34 落蝉を拾ひ集めて花の下       つよし(第・春)

35 用済めば畳む机や涼新た       春休(こ・案・一・第・愛・ぐ・佳)

36 山茂り湖水に紅き船の影       時人(春)

37 颱風裡昼に最終電車発ち       高弘(益)

38 冷房にこの本読むと引き籠り     ひろ子(光・順)

39 賢治忌や弓を失くしたヴァイオリン  ルカ(脩)

40 蝉しぐれ柱のごとく目を瞑り     一斗(ぐ・佳・春)

41 船虫のごと芸人のうごめけり     益太郎(三)

42 炎暑かな律儀に借りを返すべく    案山子(一)

43 父母想ふ子を思ふ日の籐寝椅子    みなと(愛)

44 浜風に声も涼しやかつとばせ筒香   タロー

45 遠雷や兜太の一喝かも知れず     益太郎(明・愛・ぐ)

46 老医師のラジオ体操涼しかり     愛(案・第・順)

47 日めくりに力頂くけふ立秋      案山子(ル・益)

48 天花粉匂へる母の横たふる      みなと(奥)

49 抜露地やダチュラの花の薄紅な    時人

50 露草よまた露草よ床屋へと      春休(明・ぐ)

51 空蝉のそばに仰臥の骸かな      益太郎

52 白蓮の男遍歴蓮が咲く        順一

53 紫陽花の雫を振るう子犬かな     光太郎(ル)

54 父さんに三角揚げを帰省の子     ひろ子(鋼) 




【 久里脩平 選(脩) 】
○07 色糸の指に巻きつく鏡花の忌  この場合色糸は何色か?それは読み手に委ねるのか?しかし季語からすれば朱色か。この色の糸を小指に巻くと何とかと言うが。。。。
○14 髪洗ふバカなオトコと言ひながら  失恋はこの作者にとって打撃とはなっていない。髪を洗って明日はまた別の獲物(♂オトコ)狩りに出かけるのだろう。
○17 揺れてゐるだけの体操生身魂  どんなに年を重ねても体操は欠かせない。
○18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな  兄弟げんか?葭簀がいい。いい景である。
○32 商談はさておき鱧の料理かな  鱧料理は羨ましい。商談などそっちのけだ(帰還して上司に怒られるのは覚悟だ)。
○39 賢治忌や弓を失くしたヴァイオリン  中七から下五にかけての措辞と取り合わせて詩情豊かな句となっている。「銀河鉄道の夜」のジョバンニが浮かんで来た。秀句。

【 大越マンネ 選(マ) 】
(今回はお休みです。)

【 木下木人 選(木) 】
(今回はお休みです。)

【 槇 明治 選(明) 】
○04 ゆふだちやジェリー藤尾の唄流れ  「知らない町を歩いてみたい♪」が聞こえる。
○15 蝉時雨君の目覚めを伏して待ち  「蝉時雨と君」に情事の…深読みを誘われるが、幼児だったりして。
○16 この道のアーチとなりぬ蝉時雨  まさに、アーチだ!と感じることがある。
○45 遠雷や兜太の一喝かも知れず  なんともキナ臭い時代になっていないか。
○50 露草よまた露草よ床屋へと  リフレインがポツポツとある青い花の姿らしく効いている。

【 こげら 選(こ) 】
○07 色糸の指に巻きつく鏡花の忌  指に巻き付いてくる綺麗な色糸。耽美的でおどろおどろしい世界を彷彿とさせる、と思いました。
○13 自転車の籠のチラシも夕立かな  突然の夕立が自転車を濡らし、その籠の中にあるチラシにまで降り込んでいる。景がよく見える句。
○17 揺れてゐるだけの体操生身魂  体操をすればゆらゆら揺れるだけのヨボヨボ爺さんだが、一族の長老である。生身魂という季語がよいと思います。
○27 冷房と本の匂ひの五階に出  エレベーターのドアが開いてデパートの五階に出た、という景でしょうか。作者の好きな場所かもしれませんね。 
○35 用済めば畳む机や涼新た  しっかりした作りの句と思います。きちんと整理整頓された部屋、持ち主の几帳面さなどが想像される。季語も響いていると思う。
 その他気になった句、
 10 ぎこちなく首振りはじむ扇風機  扇風機の一物仕立てとは、なかなか難しいことをやられていると思います。採りたかった句。
 18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな  葭簀の中から覗き見ているのでしょうか。夏の一コマですね。
 28 蔓伸びて側溝までも南瓜かな  語順?(「蔓伸び」と「南瓜」を近づけたいと思います。)
 32 商談はさておき鱧の料理かな  面白いとは思いますが、下五の表現が少しインパクトに欠けると思いました。
 46 老医師のラジオ体操涼しかり  早朝の体操でしょうか。雰囲気があると思います。

【 森本光太郎 選(光) 】
○01 孫に聞く宇宙のはなし盆の月  宇宙科学は難しいですね。
○06 剃り跡をそよと吹かるる初涼かな  着眼点が良いと思います。
○08 目覚むるや車窓あまねく露に満ち  しっかりとした俳句だと思います。
○23 日輪や行路難なる大蚯蚓  猛暑ですから大変です。
○38 冷房にこの本読むと引き籠り  この気持ち、良く分かります。

【 ルカ 選(ル) 】
○12 弁当を作るロボット明け易し  
○18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな  
○31 夏草に地図を広げて岐れ道  
○47 日めくりに力頂くけふ立秋  
○53 紫陽花の雫を振るう子犬かな 

【 石黒案山子 選(案) 】
○01 孫に聞く宇宙のはなし盆の月
○12 弁当を作るロボット明け易し
○25 しろばなのしろましろなるさるすべり 
○35 用済めば畳む机や涼新た
○46 老医師のラジオ体操涼しかり 

【 一斗 選(一) 】
○16 この道のアーチとなりぬ蝉時雨    
○17 揺れてゐるだけの体操生身魂     
○18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな  
○35 用済めば畳む机や涼新た       
○42 炎暑かな律儀に借りを返すべく 

【 中村時人 選(時) 】
○12 弁当を作るロボット明け易し
○17 揺れてゐるだけの体操生身魂
○18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな
○20 不精髭二ミリほどはえ苧殻焚く
○31 夏草に地図を広げて岐れ道
 他に気になった句は
 06 剃り跡をそよと吹かるる初涼かな
 07 色糸の指に巻きつく鏡花の忌
 26 短夜やひとり乗りたる深夜バス
 28 蔓伸びて側溝までも南瓜かな
 53 紫陽花の雫を振るう子犬かな

【 土曜第九 選(第) 】
○01 孫に聞く宇宙のはなし盆の月  帰省する度孫は体も頭も成長しています。
○17 揺れてゐるだけの体操生身魂  私の職場にもこんな感じでラジオ体操する社員がいます。
○34 落蝉を拾ひ集めて花の下  やさしい心をいつまでも持ち続けてほしいと思います。
○35 用済めば畳む机や涼新た  仏壇の前の盆用意のための折りたたみテーブルを想像しました。
○46 老医師のラジオ体操涼しかり  清清しい人生をきっと歩んで来られたのでしょう。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○06 剃り跡をそよと吹かるる初凉かな  私もさっぱりとして、風にふかれたい。
○10 ぎこちなく首振りはじむ扇風機  文明の利器だった扇風機もいまや、古いのでしょうか。
○17 揺れているだけの体操生身魂  私の近くにも似たようなことをしている人がいますが。
○18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな  子ども心をとらえています。
○48 天花粉匂へる母の横たふる  いまは、介護を必要とされるお母さまでしょうか。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇10 ぎこちなく首振りはじむ扇風機
〇17 揺れてゐるだけの体操生身魂
〇35 用済めば畳む机や涼新た
〇43 父母想ふ子を思ふ日の籐寝椅子
〇45 遠雷や兜太の一喝かも知れず

【 小林タロー 選(タ) 】
〇01 孫に聞く宇宙のはなし盆の月  こうやって時代も世代も移っていきます。すこし三段切れっぽい
〇14 髪洗ふバカなオトコと言ひながら  この季語には戀の成就も残念も入っているので、説明っぽいけれど。
〇17 揺れてゐるだけの体操生身魂  それでも健康は嬉しい。
〇20 無精髭二ミリほど生え苧殻焚く  朝剃って、もう一度剃る気はない、程度のものだが焚くだけえらい。
〇27 冷房と本の匂ひの五階に出  夏の駅ビルかパルコが過不足なく表現されてうまい。

【 森 高弘 選(高) 】
(今回は選句お休みです。)

【 石川順一 選(順) 】
〇07 色糸の指に巻きつく鏡花の忌  季語は「鏡花の忌」。泉鏡花。彼の小説世界をいくつか思い浮かべてみました。
〇12 弁当を作るロボット明け易し  季語は「明け易し」。24時間働く工場。夏の夜明け。組み合わせがいいと思いました。
〇27 冷房と本の匂ひの五階に出  季語は「冷房」。気晴らし的な行為と思いました。「五階に出」がいい。
〇38 冷房にこの本読むと引き籠り  季語は「冷房」。意志が感じられる句。
〇46 老医師のラジオ体操涼しかり  季語は「涼し」。涼しいと言う感覚を考えさせられました。

【 川崎益太郎 選(益) 】
〇14 髪洗ふバカなオトコと言ひながら  髪洗うのは、女? 男? 女なら恨み節。男なら自虐。
〇17 揺れてゐるだけの体操生身魂  ラジオ体操は、子どもと老人ばかり。
〇21 取り敢へず雌を囲うて甲虫  本能(性欲)は、甲虫も人間も同じ。
〇37 颱風裡昼に最終電車発ち  台風のために起きた珍現象。
〇47 日めくりに力頂くけふ立秋  毎日変わる名言、迷言、珍言。便の出もいい。「努力癖があるなぁ、おまえには」(8月1日)。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
〇30 耳聡き少女ひとりの台風圏  一人留守番の少女か。人一倍音に敏感であれば台風の雨風の音に不安も募るだろが、なんとなく句はあっけらんとしているのが不思議。
〇35 用済めば畳む机や涼新た  卓袱台の様に畳める机でさっと用を済ませてさっと片付ける。涼新たがぴったり。
〇40 蝉しぐれ柱のごとく目を瞑り  蝉時雨の中にいると別世界にいる感覚になる時があるがその感じがよく出ている。ただ目を柱のごとく瞑っていると取られしまうかも。
〇45 遠雷や兜太の一喝かも知れず  兜太だったら一喝する様な事が多かったこの夏。遠雷よりもストレートに雷鳴とか、稲光ではどうだろう。
〇50 露草よまた露草よ床屋へと  露草のどんどん増えていく様がよくわかる。で、いきなり床屋へと、につながるバランスが面白い。

【 水口佳子 選(佳) 】
〇05 そのままに溽暑の夜となりにけり 〈そのままに〉は緩い言葉ではあるけど、多くのことが含まれているようにも。昼間も蒸し暑かったがそのまま夜も‥と言う事だけでなく、昼間何か特別な出来事があり〈そのままに〉やりきれない夜に・・とか。何も語っていない分、思いを巡らしてしまう。
〇08 目覚むるや車窓あまねく露に満ち どれだけの時間眠っていたのか。眠る前は車窓から外の景色がはっきりと見えていたのに、目覚めるとすっかり露に覆われて何も見えない。〈あまねく露に満ち〉が、見たままの景ということを超えて、心理的な何か・・とも取れる。
〇18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな この〈泣かぬ子〉はどんな思いで〈泣く子〉を見ているのか。我慢することを覚えた子(覚えさせられた子)は、素直に泣ける子を羨ましく思ったに違いない。〈葭簀〉越しの見え隠れする陰影がよく効いている。
〇35 用済めば畳む机や涼新た 日常的なことを詠んだ何という事はない句。畳まれて机が仕舞われたことによって、生まれた空間が涼し気。〈新涼〉が動かない。
〇40 蝉しぐれ柱のごとく目を瞑り 降り注ぐ〈蝉しぐれ〉に立ち止まって耳を傾けていると、自身が柱のように感じられる・・こういう感覚はよくわかる。

【 三泊みなと 選(三) 】
○07 色糸の指に巻きつく鏡花の忌 
○12 弁当を作るロボット明け易し 
○14 髪洗ふバカなオトコと言ひながら 
○17 揺れてゐるだけの体操生身魂   
○41 船虫のごと芸人のうごめけり  

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○01 孫に聞く宇宙のはなし盆の月  この頃の孫は可愛いけれど。
○10 ぎこちなく首振りはじむ扇風機  年代の扇風機を目に浮かべる。
○13 自転車の籠のチラシも夕立かな  仕事中だと思います。
○31 夏草に地図を広げて岐れ道  灼けるような日なかを想像します。
○54 父さんに三角揚げを帰省の子  滑稽味があり、四コマ漫画を思い浮かべました。

【 小川春休 選(春) 】
○01 孫に聞く宇宙のはなし盆の月  孫が最近熱中している宇宙のことを帰省先の祖父・祖母に聞かせてくれたのでしょう。事実としてはシンプルなのですが、宇宙に関連のある「盆の月」という季語の大きさが、句を活かしてくれているように感じる。大らかさが良いです。
○17 揺れてゐるだけの体操生身魂  子供の頃、ラジオ体操なんてやってもやらなくても別に変わらない、なんて思っていましたが四十歳を超えて本気でラジオ体操をしてみたら、けっこうキツくて驚きました。生身魂ともなると「揺れてゐるだけ」でも充分体操になるんでしょうね。これまで考えたこともなかったですが、こう言われると実感がある。景としても、ゆらゆら揺れる生身魂がちょっとユーモラスで面白い。
○34 落蝉を拾ひ集めて花の下  子供による、プリミティブな弔いでしょうか。その行動の奥の、落蝉を悼む心情が伝わってきます。
○36 山茂り湖水に紅き船の影  「万緑叢中紅一点」という詩句を思い起こさせますが、その「紅」が船である所が異色。周囲の木々の緑、船の鮮やかな紅、そして船の紅の影を映す水面、これらが色鮮やかに目に浮かんできます。
○40 蝉しぐれ柱のごとく目を瞑り  蝉の声に一時無心となったのか、それとも夏の暑さによる疲労か。抜け殻のようになった状態の描写としての「柱のごとく」が印象的です。
 02 憂き日なり逃ぐる毛虫を土葬にす  上五の「憂き日なり」が言いすぎです。中七下五の出来事について、上五で作者自身が感想を言ってしまっている。感想のパートは読者に残してあげる余裕が欲しい。
 04 ゆふだちやジェリー藤尾の唄流れ  通勤や出張のときによくラジオを聞くのですが、AMラジオなどではけっこう昔の曲がよく流れるんですよね。夕立で外界と遮断されて、懐かしい曲が流れてくると、そこが現在ではないような、錯覚を覚えます。
 06 剃り跡をそよと吹かるる初涼かな  上五中七の内容に対して、季語があまりにもストレートすぎる。単なる思い付きの例ですが、例えば下五を「休暇明」などとすれば、休暇の間はオフなので鬚も剃らずにのんびりと過ごして、休暇明けに合わせて鬚も綺麗に剃ったのか、などと読者が想像を拡げることができる。
 08 目覚むるや車窓あまねく露に満ち  目覚めるとすぐ目に入る車窓、電車の旅でもしていたのでしょうか。ただ、走っている電車には露はとどまらず落ちてしまうので、違うのかな。自動車の旅か仮眠か。ちょっと状況が分かりづらいかもしれません。
 12 弁当を作るロボット明け易し  コンビニなどで朝早くから並んでいる弁当は、こうしてロボットが稼動して作っているんでしょうね。感謝しなくてはなりません。
 14 髪洗ふバカなオトコと言ひながら  男性も髪を洗うのに、季語の「髪洗ふ」は女性を想像させる場合が多いですね。これまで積み上げられてきた先行作品の作り上げてきたイメージと言うべきか…。この句も、男性が「バカなオトコ」と発言しても悪くはないはずなのですが、この句を読んだ人のほとんどは女性を想像するんだろうなと思うと、季語というものの不思議を感じずにはいられません。
 15 蝉時雨君の目覚めを伏して待ち  君との関係など、少々曖昧というか、語れていない部分が多いように感じます。「伏して待ち」と言わず、中七下五を丸々「君」の眠っている様子の描写に費やした方が、「君」の様子はもちろん、それを見守る「私」の心情も立ち上がってくるのではないかと思います。
 18 泣かぬ子が泣く子見ている葭簀かな  上五中七の状況に対して、情に溺れず非情な下五の季語が良い。どちらにも心情的に加担せず、ドライに句にしている所に惹かれる。採りたかった句です。
 20 無精髭二ミリほど生え苧殻焚く  ディテールが句に命を与えることも多いですが、この「二ミリ」はあまり効果的とは思えないような…。
 25 しろばなのしろましろなるさるすべり  作者の意図は分からないでもないのですが、少し上五の「しろばなの」というのが不自然に感じる。個人的な好みもあろうかと思いますが、私なら「はなびらの白をましろくさるすべり」などとしたい。全部ひらがなというのも表現上の効果がありますが、一箇所だけ漢字というのも効果があるのではないかと思います。いろいろと推敲してみてください。
 26 短夜やひとり乗りたる深夜バス  気分は分かりますが、そもそも深夜バスは大抵一人で乗るものなので、当たり前と感じます。季語「短夜」も、「深夜バス」で夜であることは分かるので、あまり効果的ではないように感じる。
 27 冷房と本の匂ひの五階に出  エレベータを降りた瞬間の景、デパートの書店が入っているフロアでしょうか。珍しい場面の句。
 29 夏の果電光ニュース徒に流れ  「徒に」という所に作者の気分が色濃く窺われる。ニュースが表示されても、誰に見られるでもなく…、という。雰囲気のある句。
 32 商談はさておき鱧の料理かな  内容は面白いのですが、俳句という字数の限られた表現の中で、「の料理かな」という六音分はいかにも間延びしているように感じる。
 37 颱風裡昼に最終電車発ち  面白い場面を句にされているのですが、ちょっと理が勝ち過ぎているようにも感じます。
 42 炎暑かな律儀に借りを返すべく  前半が冷夏だった分、その借りを返そうと後半は律儀に炎暑に…、という句だと思いますが、ちょっと理屈っぽい感じがします。
 44 浜風に声も涼しやかつとばせ筒香  「かつとばせ筒香」とあれば、それが球場での声援だと分かります(筒香選手を知っている人には)。となると「声も」という部分がほぼ蛇足です。そこを削って「浜風も涼しやかつとばせ筒香」であれば絶対に採った句。
 47 日めくりに力頂くけふ立秋  気分は分かりますが、わざわざ下五を字余りにしてあることが効果的とは思えません。
 48 天花粉匂へる母の横たふる  単に湯上がりということか、それとも他に何か意味があるのか、今一つ読み切れない。
 51 空蝉のそばに仰臥の骸かな  この空蝉と骸とが同じ蝉のものであるかはさておき、蝉の成虫としての羽化、そして死がひとところに同時にあるのは印象的です。


次回の投句は、9月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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