ハルヤスミ句会 第二百二十四回

2019年9月

《 句会報 》

01 大根撒いたか詮索好きなばあ様が   つよし(時・光)

02 機嫌良く演歌傍から法師蝉      案山子(雷・益)

03 エンジンを切るやたちまち虫時雨   木人(案・鋼)

04 夜業とは一人コードに蹴つまづき   春休(時・奥・益・佳)

05 星飛べりシュルッと空音のこしつつ  こげら(益・三)

06 深煎りのキリマンジャロや小鳥来る  明治(こ・時・順)

07 肩書を捨てた老後や秋涼し      光太郎(案・第・愛)

08 街中に群るゝ漢や秋暑し       脩平(愛)

09 秋灯や橋の袂にラーメン屋      時人(雷)

10 端正な体育座りよ月の友       ぐり(こ・一・第・愛・佳・春)

11 マゼンタを発見したり虫の闇     順一(奥・ぐ・春)

12 霧晴れの連山皆の足を止め      第九(木・こ・奥・光)

13 小鳥来て小さき小鳥を蹴散らしぬ   こげら(鋼)

14 荷解きもひと段落や万年青の実    ぐり(マ・明・こ・ル・時・奥・順)

15 甲子園優勝校は虹を見て       光太郎

16 紅葉山星も色めき黄昏る       第九

17 透明人間あきかぜに身をほどく    佳子(愛・三)

18 おめかしのコーラス隊や敬老日    マンネ(木)

19 芋掘られ一カ所だけが干上がれり   順一

20 月今宵誕生会の主役にて       ひろ子(マ・益)

21 秋簾よきことのみを思い出す     ルカ(雷・三)

22 秋茄子となりそふ花の数多なり    つよし(木)

23 新涼や窓に間近き枕元        案山子(順・光)

24 釣堀の客疎らなり青すずこ      時人

25 赤とんぼ触れてはならぬ空がある   益太郎(雷・第)

26 眼帯のをんな一人のをどりかな    脩平(愛・佳)

27 故郷やトマトは甘く酸つぱくて    光太郎(案)

28 野分去り穂の出始める草の庭     ひろ子

29 西瓜切る夫の嫉妬も女偏       益太郎(案・奥)

30 星月夜栞はさみし父の本       ルカ(佳)

31 澄む秋へ上りのボタン長押しす    佳子(マ・第・三)

32 日の差さぬ深き谷へと秋の蝶     木人(マ)

33 敬老日中途半端に生きてをり     愛(案・鋼)

34 天高し袋のパンの汗かいて      春休(雷・明・一・ぐ・佳)

35 するすると剥けばくるくる桃の皮   愛(春)

36 一年生石蹴り帰る休暇あけ      つよし(明)

37 石畳精霊飛蝗のご登場        順一

38 きちきちやお尻ふりふりラブラドール 案山子(こ)

39 晩夏光そのまま在りぬ父の椅子    脩平(ル・一・第・順・光)

40 チェーンソーいち日うなる野分跡   ひろ子(木・三・光)

41 始発便寡黙ばかりのそぞろ寒     第九

42 踏み入ればそよ風も無し霧の谷    春休

43 男の子にも女の子にも持て南州忌   愛

44 椨や往来しげき秋雀         明治(順・鋼)

45 月代やほろほろ羽化の息づかひ    佳子(ル)

46 文机に寝そべる猫や夜の秋      マンネ(木・一・春)

47 のんべえの血に悪酔いの薮蚊かな   益太郎

48 横向の自画像描くも子規の忌ぞ    明治

49 夜食取る蓋に取分け相猫に      時人(明・一・ぐ)

50 解らないけれど頷き螻蛄鳴く     ぐり(益・春)

51 倒木に流れ変へたる川や秋      木人(マ・明・ル・ぐ・鋼)

52 野分晴出勤前の窓磨き        マンネ(ル・時・ぐ)

53 賢治の忌無伴奏チェロ聴いており   ルカ

54 倒木に潰れし屋根も良夜かな     こげら 




【 李雷太(久里脩平改め) 選(雷) 】
○02 機嫌良く演歌傍から法師蝉  機嫌が良いのは一般的には演歌を歌っている詠み手であろう。しかし別の読みでは法師蝉が機嫌が良いとも読める。選者は後者の読み方に共感する。俳諧みが増す。
○09 秋灯や橋の袂にラーメン屋  二次会、三次会の後お世話になるのはラーメン屋。医者からは止められているけれど、ラーメンのしめは飲んだ後のセレモニーとして格別だ。そのラーメン屋、橋の袂にあるのは某地方都市。ぽつんとそこだけ秋の灯が点っている風景。大都市では出会うことのない風景だ。この土地で活計を営むことに後悔はない詠み手。
○21 秋簾よきことのみを思い出す  忘れかけた簾。この夏色々な事があった。しかし良きことだけを覚えておこう、と言う詠み手の心が伝わってくる。 
○25 赤とんぼ触れてはならぬ空がある  触れてはならぬ空とは詠み手の心象だろう。その空の色と茜色がその心象を強くしている。
○34 天高し袋のパンの汗かいて  そのようなパンは食べられない。しかし俳句としての描写でそれは詩に昇華する。季語の位置が対比を明確にし切れの良い句として成り立っている。

【 大越マンネ 選(マ) 】
◯14 荷解きもひと段落や万年青の実  引越しはひと苦労ですが、新居での生活にゆとりと希望が感じられます。
◯20 月今宵誕生会の主役にて  月の輝く夜に誕生を祝福してもらえるなんて、ロマンティックで素敵です。
◯31 澄む秋へ上りのボタン長押しす  秋晴れにスケルトンのエレベーターに乗って、どこまでも上昇して行きたい感じ
◯32 日の差さぬ深き谷へと秋の蝶  秋蝶は儚い生命を知るごとく、深い谷へと消えてゆくのでしょうか。
◯51 倒木に流れ変へたる川や秋  相当な被害を受けた川にも澄んだ水が流れ、静かな秋が訪れる。自然は偉大です。

【 木下木人 選(木) 】
○12 霧晴れの連山皆の足を止め
○18 おめかしのコーラス隊や敬老日
○22 秋茄子となりそふ花の数多なり
○40 チェーンソーいち日うなる野分け跡
○46 文机に寝そべる猫や夜の秋

【 槇 明治 選(明) 】
○14 荷解きもひと段落や万年青の実  気がつけば万年青の実がほんのり色づき始めた…。
○34 天高し袋のパンの汗かいて  焼きたてパンの温もりと香りが立ち上がる。
○36 一年生石蹴り帰る休暇あけ  のびのびと子育てできる場所が少なくなってしまった。
○49 夜食取る蓋に取分け相猫に  「蓋に取分け」に相棒感がいっぱい。
○51 倒木に流れ変へたる川や秋  表情を一変する台風時の川。

【 こげら 選(こ) 】
○06 深煎りのキリマンジャロや小鳥来る  よい取り合わせで季語と響き合うと思います。でも「キリマンジャロ」とまで言う必要があるのかな、とは思いました。
○10 端正な体育座りよ月の友  月を見ながら膝を抱えて静かに座っている友人。作者の友を思う気持ちも伝わって来ます。
○12 霧晴れの連山皆の足を止め  霧が晴れて姿を現した山々の美しさに登山道にいる皆が足を止めて見入っているのでしょう。光景がよく見える句と思います。
○14 荷解きもひと段落や万年青の実  引っ越しして来たのでしょう。作業が一段落してふと見ると万年青の実が。雰囲気があると思います。
○38 きちきちやお尻ふりふりラブラドール  犬の散歩でしょうか。犬が来るとバッタが逃げ飛ぶのか。ちょっとコミカルで楽しい風景。

【 森本光太郎 選(光) 】

○01大根撒いたか詮索好きなばあ様が 何となくユーモラスな俳句だと思います。
○12霧晴れの連山皆の足を止め 景色が目に浮かぶようです。
○23新涼や窓に間近き枕元 納得、という感じです。
○39晩夏光そのまま在りぬ父の椅子 お父様は死亡されたのでしょうか。
○40チェーンソーいち日うなる野分跡 千葉県の台風禍。大変でしたね。

【 ルカ 選(ル) 】
○14 荷解きもひと段落や万年青の実 
○39 晩夏光そのまま在りぬ父の椅子 
○45 月代やほろほろ羽化の息づかひ 
○51 倒木に流れ変へたる川や秋  
○52 野分晴出勤前の窓磨き  

【 石黒案山子 選(案) 】
○03 エンジンを切るやたちまち虫時雨
○07 肩書を捨てた老後や秋涼し
○27 故郷やトマトは甘く酸つぱくて
○29 西瓜切る夫の嫉妬も女偏
○33 敬老日中途半端に生きてをり

【 一斗 選(一) 】
○10 端正な体育座りよ月の友       
○34 天高し袋のパンの汗かいて      
○39 晩夏光そのまま在りぬ父の椅子    
○46 文机に寝そべる猫や夜の秋      
○49 夜食取る蓋に取分け相猫に 

【 中村時人 選(時) 】
○01 大根蒔いたか詮索好きなばあ様が
○04 夜業とは一人コードに蹴つまづき
○06 深煎りのキリマンジャロや小鳥来る
○14 荷解きもひと段落や万年青の実
○52 野分晴出勤前の窓磨き
 他に気になった句は
 03 エンジンを切るやたちまち虫時雨
 12 霧晴れの連山皆の足止めて
 51 倒木に流れ変へたる川や秋  下五は秋の川で良いと思いますが
 53 賢治の忌無伴奏チェロ聴いており  中七は(チェロの独奏)で如何でしょうか
 54 倒木に潰れし屋根も良夜かな

【 土曜第九 選(第) 】
○07 肩書を捨てた老後や秋涼し 「捨てた」という言葉に複雑な心情を察します。
○10 端正な体育座りよ月の友 幻想的な可愛らしさを感じます。  
○25 赤とんぼ触れてはならぬ空がある 誰にでも他人には立ち入られたくない心の闇のようなものがあることを連想しました。   
○31 澄む秋へ上りのボタン長押しす そのまま天空へ登ってしまいたい青空なのでしょう。
○39 晩夏光そのまま在りぬ父の椅子 昼下がりの主のいない書斎の静謐感や喪失感が感じられます。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○04 夜業とは一人コードに蹴つまづき  心情が、伝わってきます。
○11 マゼンタを発見したり虫の闇  暗いところに発見した喜び、はてさて何だったのでしょうか。
○12 霧晴れの連山皆の足を止め  くっきりと山並みが現れてきました。
○14 荷解きもひと段落や万年青の実  新しい新居におちつきたい。
○29 西瓜切る夫の嫉妬も女偏  食べ物のうらみは怖いですね。表現が、おもしろいです。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○07 肩書を捨てた老後や秋涼し  本当にそうですね。これからは軽々と俳句を楽しんで下さい。
○08 街中に群るゝ漢や秋暑し  おやおや前句と対のようですね。こちらは暑苦しい。
○10 端正な体育座りよ月の友  「体育座り」が「端正」かどうか分かりませんが「月の友」なのでいいでしょう。
○17 透明人間あきかぜに身をほどく  「あきかぜ」に身をほどいて、どうなったのか知りたいです。
○26 眼帯のをんな一人のをどりかな  盆踊りの踊りの輪の中に眼帯の女の人が一人いたと言う着眼点がユニーク。

【 小林タロー 選(タ) 】
(今回はお休みです。)

【 森 高弘 選(高) 】
(今回はお休みです。)

【 石川順一 選(順) 】
○06 深煎りのキリマンジャロや小鳥来る  季語は「小鳥来る」。落ち着いた感じが好もしく、渡って来た鳥を祝福しているようにも見えました。
○14 荷解きもひと段落や万年青の実  季語は「万年青の実」。リラックスした時の植物。花から実への成長が意識され意識が充実して来る。
○23 新涼や窓に間近き枕元  季語は「新涼」。抱き枕でも使って居るのかと空想しました。
○39 晩夏光そのまま在りぬ父の椅子  季語は「晩夏光」。何かが終わった後であるかのような風景は人の心を厳粛にすると思いました。
○44 椨や往来しげき秋雀  季語は「秋雀」。スズメも結構たくさんいたのかもしれません。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○02 機嫌良く演歌傍から法師蝉  演歌を歌っていると法師蝉が鳴き出したという、有り勝ちだが、面白い句。
○04 夜業とは一人コードに蹴つまづき  一人残業の侘しさが読める。コードが上手い。
○05 星飛べりシュルッと空音のこしつつ  流れ星の音を聞いたという本当のような嘘のような話の句。
○20 月今宵誕生会の主役にて  誕生会の主役は人間でなく名月という面白い句。
○50 解らないけれど頷き螻蛄鳴く  耳も遠くなり、解らないけど頷くことも多くなった。季語が上手い。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○11 マゼンタを発見したり虫の闇  虫の闇の中にマゼンダの赤紫が発光しているように見える。正体は何?心理的なものなのか。解らなさに惹かれた。 
○34 天高し袋のパンの汗かいて  出来立てのパンだからこそ汗をかく。天高しが気分がいい。 
○49 夜食取る蓋に取分け相猫に  相棒の猫で相猫?ほのぼの感が秋の夜にあっている。取ると言わずに一句にできたらスッキリしそう。      
○51 倒木に流れ変へたる川や秋  9月の台風では東京でもかなり倒木があった。実感がある。
○52 野分晴出勤前の窓磨き  なんというか、ものすごくきちんとしている方ですね。出勤前の窓磨きは自分にはハードルが高いけど、達成感がありそうですね。
 その他に気になった句 
 20 月今宵誕生会の主役にて   
 26 眼帯のをんな一人のをどりかな        
 44 椨や往来しげき秋雀  

【 水口佳子 選(佳) 】
○04 夜業とは一人コードに蹴つまづき  「夜業」という言葉から小さな規模の会社や工場を思った。こんなに働いても大して儲けにもならないのに・・と思ったかどうか、「コードに蹴つまづき」が可笑しいような悲しいような。「とは」は説明的かとも思ったが、嘆きのようなものも感じられる。
○10 端正な体育座りよ月の友  「端正な体育座り」が月見の夜にとても美しく感じられる。「端正」という一言で句の中の空気が引き締まったように思う。作者の友への視線に熱いものを感じるが・・
○26 眼帯のをんな一人のをどりかな  「をんな一人の」が少し気になった。一人で踊っているのか、踊りの輪の中にそういう人が居たのか?ただ「眼帯のをんな」が妙に艶っぽい。視点の面白さ。
○30 星月夜栞はさみし父の本  こういう句はよくあるかもしれない。「父の本」だけがそこにある。もしかしたら父はもうこの世の人ではないのかもしれない・・とも思う。「星月夜」がそんな気分に。
○34 天高し袋のパンの汗かいて  晴れ渡った秋の空の下で食べているのは「袋のパン」。公園で昼休みのサラリーマンが、コンビニのパンをかじっているのかなあとも。トリビアルなところを句にしてある。

【 三泊みなと 選(三) 】
○05 星飛べりシュルッと空音のこしつつ  
○17 透明人間あきかぜに身をほどく 
○21 秋簾よきことのみを思い出す 
○31 澄む秋へ上りのボタン長押しす    
○40 チェーンソーいち日うなる野分跡 

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○03 エンジンを切るやたちまち虫時雨  現場での臨場感がある。
○13 小鳥来て小さき小鳥を蹴散らしぬ  鳥の世界にも序列がある。
○33 敬老日中途半端に生きてをり  人生を省みると色々。
○44 椨や往来しげき秋雀  椨と雀の対比が絵になる。
○51 倒木に流れ変へたる川や秋  目の当たりにした景は自然の恐ろしさ。
 以上お願いします。

【 小川春休 選(春) 】
○10 端正な体育座りよ月の友  正座でもあぐらでもなく体育座り。体育座りでもどことなく育ちの良さが出ているような、そんな佇まいですね。着眼点が独特で面白い。
○11 マゼンタを発見したり虫の闇  「発見したり」という表現に硬さがある点が少々気にはなりますが、虫の闇の中に思わぬ色彩を見出した感覚の鋭さは印象的でした。
○35 するすると剥けばくるくる桃の皮  何だかちょっと馬鹿馬鹿しいような、でも不思議と楽しい句。こういう句は書こうと思ってもなかなか書けない。
○46 文机に寝そべる猫や夜の秋  そこは寝る所ではないのですが…、手紙を書こうかと思っていたのですが…、という飼い主の軽い当惑がちょっと可笑しい。「夜の秋」で暑さが一段落すると、猫の行動パターンも夏とは変わってきますね。
○50 解らないけれど頷き螻蛄鳴く  人の基本スタンスとして、何でも否定から入る人と、まずは肯定的に相手の話を聞く人と、二つの類型がありますよね。この句の人は、後者なんでしょう。聞き上手というか、話す側からしたらこういう人に話を聞いてもらいたいものです。内容が分かるか分からないかよりも、聞いて頷くことの方が大事。
 03 エンジンを切るやたちまち虫時雨  エンジンを切ると音も静かになりますし、ヘッドライトも消えて一気に闇が訪れる。そこに思い出したように虫時雨、という訳です。採りたかった句です。
 05 星飛べりシュルッと空音のこしつつ  星の飛ぶ音を「シュルッ」というオノマトペで表現する所は面白いな、と思ったのですが、句の後半がもったいない。「シュルッ」というオノマトペだけで読者に伝わるイメージを、さらに説明を加えているようで、せっかくのスピード感やオノマトペの面白さが半減しているように感じます。
 07 肩書を捨てた老後や秋涼し  退職後に俳句を始める方が多いので、こういう句は毎年かなりよく目にします。
 12 霧晴れの連山皆の足を止め  雰囲気は何となく伝わるのですが、「皆」が漠然としています。街を歩く人々なのか、学校の子供らか、農作業中の人たちか、もう少しだけ、読みの手がかりが欲しいと思わされる句です。
 13 小鳥来て小さき小鳥を蹴散らしぬ  「弱い者たちが夕ぐれ さらに弱い者を叩く」と歌ったのは確かザ・ブルーハーツだったですね。人間の世界も自然界も厳しい。
 15 甲子園優勝校は虹を見て  実際にこうだったのかも知れませんが、景としてはちょっと出来過ぎという印象です。
 23 新涼や窓に間近き枕元  景としては分かるのですが、朝なのか夜なのか、時間帯が分かるように書かれていれば、もっと良い句になるのではないかと思います。
 26 眼帯のをんな一人のをどりかな  大勢で踊っている中の一人が眼帯の女だったのか、それとも一人きりで踊っているのか、少し工夫すれば、きちんと状況が分かる句に出来るのではないかと思います。雰囲気がある句なだけに、もったいないです。
 28 野分去り穂の出始める草の庭  「野分」も「草の穂」も季語なので、少し季重ねが気になります。
 30 星月夜栞はさみし父の本  父の本に栞をはさんだのは私なのか、元から父がはさんでいたのか、そういう所がよく分からない。季語も雰囲気だけで、あまり読みの助けにはなってくれていない。上下名詞の形になっているのも出来れば避けたい。
 31 澄む秋へ上りのボタン長押しす  上へ行くエレベーターを呼ぶためのボタンでしょうか。「長押し」すると早く来る、とか何か意味があるのでしょうか。普通に押すのと長押しとの差がよく分からない。
 36 一年生石蹴り帰る休暇あけ  休暇明けの一年生の姿に大人の側はいろいろな想像をしますが、自分が一年生だったときのことを思うと、石を蹴ってる時って純粋に「石を蹴ること」しか考えてなかったですね。まあ、私が単純な子供だっただけかも知れませんが…。
 39 晩夏光そのまま在りぬ父の椅子  これは上下名詞の形の悪い例です。「そのまま在」ったのが晩夏光なのか父の椅子なのか、どちらにもかかって曖昧です。
 40 チェーンソーいち日うなる野分跡  倒木の撤去作業ですね。今回の台風で被害を受けたのかも知れません。
 41 始発便寡黙ばかりのそぞろ寒  雰囲気はよく伝わりますが、そもそも始発便ってこういうものではないかという気も少しします。
 43 男の子にも女の子にも持て南州忌  この「持て」、モテのことなんですね。「何を持つのか…?」としばらく考え込んでしまいました。
 44 椨や往来しげき秋雀  そういえば、雀も身体の小さい鳥なので、あまり暑さに強くないのでしょうか。秋になって涼しくなると動きが活発になるような気がします。
 48 横向の自画像描くも子規の忌ぞ  そう言えば自分の横顔ってあまり見たこと無いですね。ちなみに、子規は自分の正面からの顔があまり好きではなかったそうです(目が離れ過ぎているとかで…)。
 49 夜食取る蓋に取分け相猫に  内容的には面白いと思うのですが、動詞は「取分け」の一つだけで充分で、上五の「取る」は無くても良いような(そうすると字数が余ってしまうのですが…)。
 52 野分晴出勤前の窓磨き  個人的な好みかも知れませんが、中七下五の表現、名詞的で少し硬いように感じる。「窓を磨きて出勤す」などの方が動きが出るのではないかと思いました。



次回の投句は、10月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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