ハルヤスミ句会 第二百二十九回

2020年2月

《 句会報 》

01 花時の洞門抜けしバイクかな    木人(佳)

02 蝶生る正面にきれいなマスク    佳子(明・一)

03 二種類のスポンジ使ふ余寒かな   順一(雷・明)

04 助手席の娘無口や鳥雲に      ぐり(マ・こ・佳・春)

05 ヒヤシンス米研ぐ音に酔うてゐる  みなと(順)

06 おぼろ夜の花椒にしびれ舌の先   こげら(ぐ・鋼)

07 屋上に旗を振る人冬終る      一斗(ぐ・佳)

08 浅春やマシンに抱かれ伸びる腰   明治(案・奥・鋼)

09 凍東風や大縄跳びの綱太し     タロー(マ・明・案・奥・ぐ・三)

10 ガス漏れの点検二月礼者かな    ひろ子(益)

11 止血絆創膏ぎゆつと春兆す     明治(マ・益)

12 女子アナの笑ひのつぼや春炬燵   こげら

13 塊りを行つたり来たり春浅し    順一

14 いよいよか出たな花粉の初くさめ  マンネ(案)

15 還付金書き忘れたり申告期     ひろ子

16 だうしても見付からぬ紙冴返る   順一

17 小流れの小石を拾ふ春うれひ    雷太(一・順)

18 春帽子家出せし日の彷徨を     みなと

19 人なれば色惚ならん猫の恋     案山子(益・三)

20 赤蕪やユル・ブリンナはロシア人  タロー

21 凍て返る四時になつたら動かうか  つよし(タ・光)

22 蛇穴を出でて五臓に赤みさす    佳子(奥・ぐ・春)

23 灯りをる酒蔵横町春淡し      雷太(順)

24 風花や戻しやりたや梅二輪     案山子

25 顔出しの看板の顔春の闇      明治

26 春立つや魚屋のまへの氷屑     春休(こ・奥・佳)

27 朝凍の蛇口開くや白い音      タロー(こ)

28 耳奥に揺れる繊毛春寒し      佳子(マ・三)

29 うららかや円卓めぐる紹興酒    こげら(光)

30 予兆なりひと月早く梅開く     つよし

31 相席と同じ定食春隣        雷太(明・案・一)

32 春の雪音楽室の窓に佇ち      一斗(雷・時)

33 カタコトと八個茹でるや春玉子   ひろ子(ぐ・春)

34 春満月もう何もかも腹のなか    春休(タ・こ・一・奥)

35 水中に伸びる根つこや龍天に    マンネ(タ・益・春)

36 いま少し春泥つけて歩こうか    ぐり(雷・マ・木・明・タ・一・時・順)

37 弟はラッキーパーソン大試験    みなと

38 人事句と花鳥の間(あわい)雪おんな 益太郎

39 だしぬけに猫の恋路やビル夜陰   時人

40 懐に文忍ばせて春灯        案山子(時・益)

41 霾るや臨時ニュースがまた入り   一斗(雷・木・案・三・鋼・春)

42 午前様しじみ汁をばたつぷりと   時人

43 雛市の手を引かれてる君と僕    マンネ

44 船宿の馬穴二杯の浅蜊かな     木人(時・佳)

45 新宿は眠らぬ街や猫の恋      時人(雷・木)

46 恋猫は厚底靴でスタンバイ     益太郎(光)

47 切岸の底に関所の跡や梅      木人(こ)

48 二ン月で町はやうやう雪景色    つよし

49 囀を見上げればふと目眩して    ぐり(木)

50 春愁の君よらあめんが伸びるぞ   春休(タ・光・三・鋼)

51 ウグイスに餌をやり過ぎ下野の危機 益太郎(光・順)

52 旅の僧夜はわずかな凍豆腐     光太郎

53 霜焼けの手で敬礼の兵士かな    光太郎(木・時・鋼)

54 わらび餅店頭に置く道の駅     光太郎  




【 李雷太 選(雷) 】
○03 二種類のスポンジ使ふ余寒かな  確かに台所には幾つかのスポンジがある。この句では季節の変わり目でスポンジを使い分けている主婦の目がある。意表を突かれた句材である。
○32 春の雪音楽室の窓に佇ち  詠み手はうら若き(若しくはその昔そうであったか)乙女だろうか。甘い雰囲気が伝わる。春の雪は好きな季語である。
○36 いま少し春泥つけて歩こうか  このように決断させるのは何だろう?私が住んでいる地方ではこのような体験は先ずできない。だからこのような景に少々の憧れを感じる。
○41 霾るや臨時ニュースがまた入り  臨時ニュースだから悪いニュースであろう。これからこの季語の季節だ。この季語を産んだ外国からの襲撃にてんやわんやの昨今の日本。流れる臨時ニュースに右往左往。この句はまさにタイムリ。
○45 新宿は眠らぬ街や猫の恋  不夜城の街が新宿。何時でも艶っぽい夜が続く。猫の恋ではなくヒトの様々な恋も展開されている街。この街の夜を訪ねなんくなり既に数十年。今でも様々な男の女の物語が展開されるこの不夜城。この句に出会いふと現職時代の日々を思い出した。

【 大越マンネ 選(マ) 】
○04 助手席の娘無口や鳥雲に 
○09 凍東風や大縄跳びの綱太し
○11 止血絆創膏ぎゆつと春兆す
○28 耳奥に揺れる繊毛春寒し
○36 いま少し春泥つけて歩こうか

【 木下木人 選(木) 】
○36 いま少し春泥つけて歩こうか
○41 霾るや臨時ニュースがまた入り
○45 新宿は眠らぬ街や猫の恋
○49 囀を見上げればふと目眩して
○53 霜焼けの手で敬礼の兵士かな

【 槇 明治 選(明) 】
○02 蝶生る正面にきれいなマスク
○03 二種類のスポンジ使ふ余寒かな 
○09 凍東風や大縄跳びの綱太し
○31 相席と同じ定食春隣
○36 いま少し春泥つけて歩こうか

【 小林タロー 選(タ) 】
○21 凍て返る四時になつたら動かうか  
○34 春満月もう何もかも腹のなか  すっかり満ち足りた感
○35 水中に伸びる根つこや龍天に  水中も空中も春
○36 いま少し春泥つけて歩こうか  なにかが起こりそう、まとまりそう
○50 春愁の君よらあめんが伸びるぞ  現からの呼びかけ

【 こげら 選(こ) 】
○04 助手席の娘無口や鳥雲に  娘はこれから親許を離れて行くような気がする。季語が良いと思う。「娘無口や」がちょっと詰まった感じはしますが…。
○26 春立つや魚屋のまへの氷屑  春の光に氷屑が解け出している様子も見えるような。雰囲気があると思う。
○27 朝凍の蛇口開くや白い音  水は出ずシューという音だけ出て来たのでしょうか。音が「白い」というのがユニーク。(ホワイトノイズという言葉もありますが…)
○34 春満月もう何もかも腹のなか  ご馳走を平らげた、と同時にくよくよ考えていた事も忘れてしまおう、という風に取れる所が面白い。春満月が響き合う。
○47 切岸の底に関所の跡や梅  丁寧に描写されていていると思う。最後の「梅」の置き方は意見が分かれるかも。
 その他、
 16 だうしても見付からぬ紙冴返る  何の紙なのでしょう。納税に必要な書類?
 17 小流れの小石を拾ふ春うれひ  春愁の雰囲気はあると思います。
 31 相席と同じ定食春隣  日替り定食を頼んだのでしょうか。
 53 霜焼けの手で敬礼の兵士かな  北方の兵士でしょうか。つらそうだし何だか独裁政治を思わせる。

【 森本光太郎 選(光) 】
○21 凍て返る四時になつたら動かうか  何となくユーモラスな俳句だと思います。
○29 うららかや円卓めぐる紹興酒  中国らしい大らかな俳句です。
○46 恋猫は厚底靴でスタンバイ  技術の進歩は早いですね。
○50 春愁の君よらあめんが伸びるぞ  夢想から現実へ。ユーモラスです。
○51 ウグイスに餌をやり過ぎ下野の危機  ワイロは前時代的ですね。

【 ルカ 選(ル) 】
(今回お休みです。)

【 石黒案山子 選(案) 】
○08 浅春やマシンに抱かれ伸びる腰
○09 凍東風や大縄跳びの綱太し
○14 いよいよか出たな花粉の初くさめ
○31 相席と同じ定食春隣
○41 霾るや臨時ニュースがまた入り

【 一斗 選(一) 】
○02 蝶生る正面にきれいなマスク    
○17 小流れの小石を拾ふ春うれひ    
○31 相席と同じ定食春隣        
○34 春満月もう何もかも腹のなか    
○36 いま少し春泥つけて歩こうか 

【 中村時人 選(時) 】
○32 春の雪音楽室の窓に佇ち
○36 いま少し春泥つけて歩こうか
○40 懐に文忍ばせて春灯
○44 船宿の馬穴二杯の浅蜊かな
○53 霜焼けの手で敬礼の兵士かな
 他に気になった句は
 01 花時の洞門抜けしバイクかな
 03 二種類のスポンジ使ふ余寒かな
 18 春帽子家でせし日の彷徨を
 33 カタコトと八個茹でるや春玉子
 41 霾るや臨時ニュースがまた入り
 以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○08 浅春やマシンに抱かれ伸びる腰
○09 凍東風や大縄跳びの網太し
○22 蛇穴を出でて五臓に赤みさす
○26 春立つや魚屋のまへの氷屑
○34 春満月もう何もかも腹のなか 
花粉飛来に新型コロナウイルスと蔓延して
います。皆さま、どうぞご自愛ください。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
(今回はお休みです。)

【 森 高弘 選(高) 】
(今回はお休みです。)

【 石川順一 選(順) 】
○05 ヒヤシンス米研ぐ音に酔うてゐる  季語は「ヒヤシンス」。米研ぐ音が幻想的だったのでしょうか。
○17 小流れの小石を拾ふ春うれひ  季語は「春うれひ」。石に何か刻んだのかもしれません。
○23 灯りをる酒蔵横町春淡し  季語は「春浅し」。灘の酒が造られている地域などが想起されました。
○36 いま少し春泥つけて歩こうか  季語は「春泥」。石の力、良さを思います。
○51 ウグイスに餌をやり過ぎ下野の危機  季語は「鶯」。下野の危機とは明治6年政変なども想起でき、ユーモラスだと思いました。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○10 ガス漏れの点検二月礼者かな  珍しい季語を面白く取り合わせた句。
○11 止血絆創膏ぎゆつと春兆す  九・八の二句切れ、「ぎゆつと」が上手い。
○19 人なれば色惚ならん猫の恋  言われてみればの句。
○35 水中に伸びる根つこや龍天に  水中の根と難しい季語を上手く取り合わせた。
○40 懐に文忍ばせて春灯  ありがちの景だが、青春の淡い思い出。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○06 おぼろ夜の花椒にしびれ舌の先  最近流行っている花椒。四川風麻婆豆腐でしょうか。おぼろ夜のぼんやりした気分と痺れてぼうっとなっている舌先がいかにも春の宵。
○07 屋上に旗を振る人冬終る  何の為に?と手がかりがないのですが、何かとても意味がある行為のように思わせるのは冬終るの季語のせいか。他の季語でもいいものがありそうな気もする。
○09 凍東風や大縄跳びの綱太し  凍東風の中、大勢の子供達が大縄をしている。太い綱が地面を叩きつけて砂埃が舞う様子まで浮かぶ。
○22 蛇穴を出でて五臓に赤みさす  蛇が透き通っていて内臓が見えるわけではないが、いかにも穴をでて徐々に体中に生命力が湧き上がっていく感じ。赤みさすがいい。
○33 カタコトと八個茹でるや春玉子  カタカナのカタコトがいかにも軽やかで春めいている。8個も茹でるなんてピクニックにでもいくのかな。

【 水口佳子 選(佳) 】
○01 花時の洞門抜けしバイクかな  
○04 助手席の娘無口や鳥雲に
○07 屋上に旗を振る人冬終る
○26 春立つや魚屋のまへの氷屑
○44 船宿の馬穴二杯の浅蜊かな

【 三泊みなと 選(三) 】
○09 凍東風や大縄跳びの綱太
○19 人なれば色惚ならん猫の恋 
○28 耳奥に揺れる繊毛春寒し 
○41 霾るや臨時ニュースがまた入り 
○50 春愁の君よらあめんが伸びるぞ 

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○06 おぼろ夜の花椒にしびれ舌の先  家には誰もいない一人の夜を思わせる。
○08 浅春やマシンに抱かれ伸びる腰  ジムでの時間、浅春が良い。
○41 霾るや臨時ニュースがまた入り  何かと思わせるのが良い。
○50 春愁の君よらあめんが伸びるぞ  おいおい君は元気出せ。
○53 霜焼けの手で敬礼の兵士かな  海外での句か、北国の句か、又は回想の句か。

【 小川春休 選(春) 】
○04 助手席の娘無口や鳥雲に  「鳥雲に」という季語で、人との別れを暗示する句はたくさんあるのですが、「助手席」「娘」「無口」と具体的な描写を積み重ねて、背景にある親子関係や物語を想像させる、奥行きのある句になっていると思います。
○22 蛇穴を出でて五臓に赤みさす  蛇の内臓は体に合わせて細長く出来ており、人間と同じく心臓や肝臓、腎臓などが存在し、消化は胃で行います。穴を出た蛇は色の薄い蛇だったのか、内臓の赤みが透けて見えている。何とも生々しい景。
○33 カタコトと八個茹でるや春玉子  一人二個食べるとしても、四人。茹で玉子はそのまま食べても良いし、サラダに入れても良いし、何となく春らしい食材ですね。音の響きも楽しい句です。
○35 水中に伸びる根つこや龍天に  上五中七の描写、よく見えてきますし、窓からよく日の入る明るい部屋の風景までも想像される。また、ひょろひょろと伸びる根が天に昇る龍の髭を連想させてくれて楽しい。
○41 霾るや臨時ニュースがまた入り  自分とは関わりのない遠くのニュースと思っていたら、じりじりと近づいてくる…。そういった焦燥感のようなものが「また」の一語から伝わってくる。
 01 花時の洞門抜けしバイクかな  「花時」と時候のように表現すると、ぼんやりしてしまう気がする。しっかりと物と物の取り合わせにした方が句も鮮明になるのではないか。
 06 おぼろ夜の花椒にしびれ舌の先  内容的には面白いのですが、上五は「や」で切って良いのではないでしょうか。
 10 ガス漏れの点検二月礼者かな  「二月礼者」とは「仕事の関係などで正月に年始回りができなかったために、二月一日に年賀に回る人」のこと。ガス漏れ点検業者は年賀に回っているのではなくて仕事をしているのではないですか。季語の意味がきちんと踏まえられていないように感じる。
 11 止血絆創膏ぎゆつと春兆す  句またがりの句において、俳句としてのリズムをどのように生み出していくか。ケースバイケースですが結構難しい問題です。この句の場合、個人的にはちょっとリズムが崩れているように感じます。語順を入れ替えて、「春兆す止血絆創膏ぎゆつと」とした方がリズムは良いようです。
 12 女子アナの笑ひのつぼや春炬燵  女子アナが炬燵に入っているのでしょうか。それともテレビの画面の中にいるのでしょうか。状況が今一つよく分かりませんし、中七の表現も分かりにくいというか回りくどいように感じます。
 14 いよいよか出たな花粉の初くさめ  分かる! 風邪や寒気などから来るくしゃみと、花粉のせいで出るくしゃみって違うんですよね。
 19 人なれば色惚ならん猫の恋  恋猫は、人間で言う色惚けどころでなく、もっとなりふりかまわぬ全力勝負、という印象です。見立ての句なのですが、その見立てに共感できないと、あまり面白くはないです。
 21 凍て返る四時になつたら動かうか  四時は朝なのか夕方なのか。夕方だと、だんだん寒くなるばかりなので、朝の四時でしょうね。それにしても四時とは早い。朝早くから御苦労様です。
 27 朝凍の蛇口開くや白い音  蛇口を開いた瞬間の寒々しい水音を、「白い音」と捉えた。感覚的な表現だが、実感として共感できる表現になっていると思う。
 28 耳奥に揺れる繊毛春寒し  繊細な所を捉えている句だとは思いますが、「繊毛」の語がいかにも硬い。「うぶげ」や「にこげ」などで良いのでは?
 29 うららかや円卓めぐる紹興酒  いかにも春らしいうららかな酒宴。円卓を囲む面々の表情までも想像される。
 31 相席と同じ定食春隣  ちょっと気まずかったりもする相席ですが、同じ定食を食べているとなると途端に親近感を感じたりして。「春隣」の効き方がなかなか上手い。採りたかった句です。
 32 春の雪音楽室の窓に佇ち  進級・卒業も近い時期。春の雪に何を思っているのでしょうか。
 36 いま少し春泥つけて歩こうか  春泥という季語には、雪解けの喜びが込められています。この句の弾みのある口調もやはり、雪解けの喜びの感じられるものです。
 42 午前様しじみ汁をばたつぷりと  「飲みすぎたから蜆汁を」という理屈が見え過ぎる。
 44 船宿の馬穴二杯の浅蜊かな  「おっ、今夜は酒蒸しかい?」なんて声の聞こえてきそうな。物だけを描いていますが、読者にいろいろと想像させてくれる句です。採りたかった句。
 45 新宿は眠らぬ街や猫の恋  「新宿は眠らぬ街」は使い古された表現で面白くありません。
 49 囀を見上げればふと目眩して  内容はなかなか面白いのですが、「見上げればふと」という言い回し(特に「ふと」はなるべく使いたくない!)や句末の「して」など、語り過ぎてすっきりしていない印象。「囀の方を見上げてたちくらみ」などとしたい所です。
 51 ウグイスに餌をやり過ぎ下野の危機  何のことか分からずしばらく考え込みましたが、ウグイス嬢に法定上限を大きく超えた報酬を支払って辞任した元大臣夫妻のことですね。個人的には、国会はいくら欠席してもまず下野することはないと思いますが…。
 53 霜焼けの手で敬礼の兵士かな  一句通して読むと、「で」のところで引っかかります。かな止めの句でまとめるよりも、「霜焼けの手」を強調して、違う仕立て方をした方が良いのかな、とも感じます。



次回の投句は、3月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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