【 李雷太 選(雷) 】
(今回はお休みです。)
【 大越マンネ 選(マ) 】
◯06
張りぼての河豚取り去られ梅雨曇り 客を楽しませる看板がなくなるのも今年は雨のせいだけではなさそう。
◯25
ハンカチの真白がその人のすべて 清廉潔白な人柄がうかがえる。
◯31
塀越えてニコライ堂へ夏の蝶 ニコライ堂に夏蝶がマッチしている。
◯36
佃煮もさつと混ぜ込み嫁菜飯 美味しそう。「さつと」がいかにも慣れた感じで。
◯47
躾糸抜いて賢母の大昼寝 賢母と大昼寝の対比が面白い。
【 木下木人 選(木) 】
○02 今日やけに素直な姉よ生ビール
○28
住み替る人無く網戸外れをり
○34 芭蕉布のうしろ姿の座り皺
○39 快速の過ぐるベンチや夏帽子
○42
麦秋をサイクリングの列ゆけり
以上、宜しくお願いします。
【 槇 明治 選(明) 】
○03
野良犬と目の合っている我鬼忌かな 龍之介のこちらを睨みつけるような写真を思い出す。犬もたじろいだか。
○18
夏雲や餃子に透けて韮の青 いかにも旨そう。
○34 芭蕉布のうしろ姿の座り皺 座り皺も着物の魅力か。
○36
佃煮もさつと混ぜ込み嫁菜飯 ご相伴にあずかりたい。
○53
蟻の道たどり脱衣所には西日 子どもの頃から行く先を辿らずにはいられなかった、夏の日の追憶。
【 小林タロー 選(タ) 】
○23
ジーパンを束子で洗ふ梅雨晴間 今風の伸びたりするGパンではないのだろう。厚手のそれは束子でしか洗えない。
○35
マンゴーを頬張る放るシクロ漕ぐ ベトナムの日常を切り取った。シクロの予約は「Grab」でできる。
○38
抜けられぬ路よ桑の実ふまずには 滑らかでない語感がよい。
○41
炎天にホームセンターの遠く DIYのホームセンター、でもその前に炎天下、そこまでいかねばならない。
○51
べた凪のオロロンライン鼓草 オロロンラインが楽しい。鼓と響くか。
【 こげら 選(こ) 】
○03
野良犬と目の合っている我鬼忌かな この句の意味を知ろうとして「白」という短編を読んでしまいました。
○10
心太伯母の贈与に驚きぬ 突然の話。遺産だろうか。季語もいいと思います。
○18
夏雲や餃子に透けて韮の青 鮮やかな映像。夏雲との対比も見事。
○19
落ちきらぬ黴に針飛び蓄音機 古いレコードを洗浄したのでょう。久しぶりに聴く音。
○27
水着かたく絞りて踝の清ら なぜかティーンの女子のイメージが浮かんだ。みずみずしい光景と思う。
その他採ろうか迷った句、
40
広げればみりとひび割れ古水着 「みり」が気にいってしまった。
42
麦秋をサイクリングの列ゆけり 「を」が上手いとおもう。
49
海月涌く川面に揺れる月明かり クラゲは川にも発生するらしいですね。幽玄な光景。
【 森本光太郎 選(光) 】
○09
売り子らはレースのマスクかき氷 洒落たマスクですね。
○18 夏雲や餃子に透けて韮の青 「韮の青」が、いかにも夏らしい。
○30
舶来の柱時計や鴎外忌 「舶来」という表現が良いと思います。
○39 快速の過ぐるベンチや夏帽子 いかにもノンビリしています。
○54
たけやさおだけ暑苦しさが近づき来 いかにも夏らしい呼び声ですね。
【 ルカ 選(ル) 】
○11 船倉に遺りし父の麦稈帽
○25
ハンカチの真白がその人のすべて
○27 水着かたく絞りて踝の清ら
○42 麦秋をサイクリングの列ゆけり
○47
躾糸抜いて賢母の大昼寝
【 石黒案山子 選(案) 】
○31 塀越えてニコライ堂へ夏の蝶
○34 芭蕉布のうしろ姿の座り皺
○39 快速の過ぐるベンチや夏帽子
○50 耳朶悲鳴眼鏡補聴器夏マスク
○54 たけやさおだけ暑苦しきが近づき来
【 一斗 選(一) 】
(今回はお休みです。)
【 中村時人 選(時) 】
○19 落ちきらぬ黴に針飛び蓄音機
○22
ヒール手に素足で走る渚かな
○30 舶来の柱時計や鴎外忌
○34 芭蕉布のうしろ姿の座り皺
○54
たけやさおたけ暑苦しきが近づき来
他に取りたかった句、気になった句は
01 遠浅の海へ五分夏来る
18
夏雲や餃子に透けて韮の青
20 カーテンの下より梅雨の寒さ来る
38 抜けられぬ路よ桑の実ふまずには
48
勤行の太鼓の音や松落葉
56 早緑のまだ無邪気なる手毬花
以上宜しくお願いいたします。
【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○06 張りぼての河豚取り去られ梅雨曇り
○16
パパヤ熟れシクロに揺られ夕まぐれ
○18 夏雲や餃子に透けて韮の青
○19 落ちきらぬ黴に針飛び蓄音機
○50
耳朶悲鳴眼鏡補聴器夏マスク
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇18
夏雲や餃子に透けて韮の青 茹でると特に透けますね。夏雲とよく合います。
〇42
麦秋をサイクリングの列ゆけり 気持ちの良い景です。麦秋とサイクリングの付きすぎがいいです。
〇50
耳朶悲鳴眼鏡補聴器夏マスク これはこれは、その上今夏はマスクですものね。
〇54
たけやさおだけ暑苦しきが近づき来 思い出しました。そう言われれば確かに暑苦しい。
〇57
テレワーク例年通り更衣 コロナが来ても、鳥はいつものように鳴き、花は咲きます。
【 森 高弘 選(高) 】
○18
夏雲や餃子に透けて韮の青 ○マクロから一気にミクロに来るおかしみが良かった。
○23
ジーパンを束子で洗ふ梅雨晴間 爽快な感覚。洗っている瞬間も激しい日差しが。
○30
舶来の柱時計や鴎外忌 確かに鴎外の書斎にはありそうで共感が持てる。
○34
芭蕉布のうしろ姿の座り皺 ちょっとした間抜けさと作者の羨望の目と。
○50
耳朶悲鳴眼鏡補聴器夏マスク 詞書が必要かも知れないが、今しか詠めないものとして一点。
01
遠浅の海へと五分夏来る 雰囲気だけの世界で、コピーを読んでいる気分になる。
19
落ちきらぬ黴に針飛び蓄音機 上五は言わなくても良いような。
31 塀越えてニコライ堂へ夏の蝶 季移りしそうなのが残念。
38
抜けられぬ路よ桑の実ふまずには 踏んでもさほど損害は無さそうな気がする。
【 石川順一 選(順) 】
○03
野良犬と目の合っている我鬼忌かな 季語は「餓鬼忌」。芥川龍之介の忌日に野良犬と目が合う。新鮮な経験だったはず。
○20
カーテンの下より梅雨の寒さ来る 季語は「梅雨寒」。カーテン下から隙間風でしょうか。蜘蛛が居たのかもしれないと思いました。
○25
ハンカチの真白がその人のすべて 季語は「ハンカチ」。大胆な断定に作者の人格を見ました。
○38
抜けられぬ路よ桑の実ふまずには 季語は「桑の実」。靴が汚れても自然の豊饒さを認識したのかもしれません。
○47
躾糸抜いて賢母の大昼寝 季語は「昼寝」。大母で賢母。昼寝のスケールも大きい。
【 川崎益太郎 選(益) 】
○14
コレラ禍や水道のないスラム街 昔から水道の有無が、疫病の基。
○19
落ちきらぬ黴に針飛び蓄音機 黴やウイルスは、どうやっても完全には落とせない。
○33
生きるとは朝の牛乳桜桃忌 その昔、新聞少年が、その前に配達された牛乳を盗み飲む事件が頻発し、ニュースとなった。
○55
日傘さし香水つけて今の男(もん) テレビにウイルスのようにはびこるオネエー。
○57 テレワーク例年通り更衣 自宅勤務でも更衣。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○01
遠浅の海へと五分夏来る 「まで」ではなく「へと」にしたことで海に出ていくワクワク感が増している。
○18
夏雲や餃子に透けて韮の青 水餃子だろう。厨の窓からか、食卓の窓からか、夏空が眩しい。空の青、ニラの青。気持ちいい!
○19
落ちきらぬ黴に針飛び蓄音機 体験しないと出来ない句だ。どんな音質なのだろう。
○25
ハンカチの真白がその人のすべて 俳句らしく言葉を並べ替えては味わいが失われてしまうかもしれない。ささやかなことにその人のすべてが。
○38
抜けられぬ路よ桑の実ふまずには ウチの犬の散歩道でもあります。よ の詠嘆にやれやれという気持ちとこの季節が今年も来たという嬉しさも。
【 水口佳子 選(佳) 】
○08 ほととぎすけふ里山の大威張り
○18
夏雲や餃子に透けて韮の青
○38 抜けられぬ道よ桑の実ふまずには
○39 快速の過ぐるベンチや夏帽子
○56
早緑のまだ無邪気なる手毬花
【 三泊みなと 選(三) 】
○05 契約のまとまり拝む鰻かな
○09
売り子らはレースのマスクかき氷
○25 ハンカチの真白がその人のすべて
○36 佃煮もさつと混ぜ込み嫁菜飯
○45
青空の底のぬけたる茅舎の忌
良い句が沢山あり迷いました(#^.^#)
どうぞよろしくお願いいたします。
【 鋼つよし 選(鋼) 】
○02
今日やけに素直な姉よ生ビール 今日やけにの措辞がよい。
○04 枇杷の実の花の如きに小さかり 実感があふれている。
○18
夏雲や餃子に透けて韮の青 韮の青といい旨そうな。
○47 躾糸抜いて賢母の大昼寝 躾糸とは懐かしい言葉に賢母ときた。
○50
耳朶悲鳴眼鏡補聴器夏マスク 漢字を並べた表現もよい。
採用したい句
03 野良犬と目の合っている我鬼忌かな
55
日傘さし香水つけて今の男(もん)
【 小川春休 選(春) 】
○19
落ちきらぬ黴に針飛び蓄音機 綺麗に拭いたつもりが残っていた黴で針が飛ぶ。かなり特殊な状況を、かすかな黴というディテールを手がかりにして、実感を持って句に詠み込んでいます。
○33
生きるとは朝の牛乳桜桃忌 「生きるとは、朝の牛乳ですよ。難しく考えてはいけません。」などという一節が太宰の小説にあるかは知りませんが、いかにも太宰っぽいテイストと感じさせる。
○36
佃煮もさつと混ぜ込み嫁菜飯 そういう食べ方もあるのか、旨そう。一点だけ気になったのは、「も」が少しうるさく感じる点。「を」で良いのではないでしょうか。
○40
広げればみりとひび割れ古水着 何年経過すれば「古水着」と呼ばれる資格を得るのか、はっきりとは分かりませんが、この句の物はかなりの年代物と見た。経年劣化で硬くボロくなった化学繊維がひび割れて、今にも崩壊しそう。「みり」という擬音語が効いている。
○51
べた凪のオロロンライン鼓草 ネットで検索すると、「あこがれの絶景ロード」としてオロロンラインの画像がたくさん出てきました。雲も無い、見渡す限りの空と草原が目に浮かぶ。そんな中で、足元の小さな鼓草に目を止めた所も良い。
01
遠浅の海へと五分夏来る 既に海に到着しているのか、まだ海へ向かっている途中(推定残り移動時間が5分)なのか、今一つはっきりしない。
06
張りぼての河豚取り去られ梅雨曇り 何やら店が倒産しても「張りぼての河豚」だけは残そう、などという報道も洩れ聞こえてきますが、店あってこその「張りぼての河豚」だと思いますね。
07
あつぱつぱ容赦なく天使を洗ふ 文字通りの「天使」を洗ったのではなくて、幼児かペットを天使と呼んだということでしょうか。
10
心太伯母の贈与に驚きぬ 面白くなりそうな内容なのですが、作者が「驚きぬ」と言っても、読者は何に驚いたのか、贈与の中身が分からないとピンと来ません。
11
船倉に遺りし父の麦稈帽 何かの時に置いたままになっていたのでしょうか。古ぼけた麦わら帽が、在りし日の父の姿を思い起こさせてくれる。
12
七十で献血アウト大豆蒔く 年齢制限で献血を断られたということなのでしょうが、俳句の叙述としては「アウト」はちょっと辛い。ただ、こういう俗な表現が上手く機能する場合もある。
17
マッサージチェアがねぐら羽抜鶏 まず鶏を室内で飼っていることに驚いたのですが、ネットで調べてみると室内飼いしている人もいるそうです。朝の鳴き声、トイレ、羽繕いによる埃など、かなり大変そうですが、愛があれば何とかなるのかも知れません。
21
水無月にあれよぐうたら感謝の日 「ドラえもん」ですね。6月に祝日がないことを嘆いたのび太少年が、ドラえもんの道具の力を借りて、6月2日を「ぐうたら感謝の日」と定める、という話がありました。
22
ヒール手に素足で走る渚かな 松田聖子の歌の世界ですね。
25
ハンカチの真白がその人のすべて 非常に印象的な句。作者と「その人」は、親しくなりたいという気持ちがありながらも、親しくなれぬまま遠ざかってしまった、そんな関係ではないでしょうか。
26
朝暑しロールケーキを二個食べる ロールケーキを数える単位として「個」がしっくりこないのですが、二本か二切れではないでしょうか。朝からロールケーキ二本平らげる人はそうそう居ないので、二切れですかね。
27
水着かたく絞りて踝の清ら 〈少女みな紺の水着を絞りけり(佐藤文香)〉を思い出す。この二句を並べると、この句の内容に句またがりの仕立て(あと上五の字余りも)があまり合っていないように感じる。「清ら」、すっきりとした清潔感を出すには、シンプルに仕立てた方が良いと思う。
30
舶来の柱時計や鴎外忌 いかにも「鴎外忌」らしい。
31
塀越えてニコライ堂へ夏の蝶 ニコライ堂の白と夏の蝶の色とが対照的。無駄のない端整な句。採りたかった句です。
34
芭蕉布のうしろ姿の座り皺
35
マンゴーを頬張る放るシクロ漕ぐ 初心者向けに「一句に動詞は一つ」などと言う人もありますが、要するに、一句の中に動詞が多いと要点がはっきりせずごちゃごちゃしてしまいやすいから注意せよ、ということです。この句も三つの動詞を並列で並べて、時間の経過が出てしまってまとまりがない句になっている。「食ひ終へしマンゴー放りシクロ漕ぐ」などとすれば、並列的ではなくなりますので、多少はその弊害も解消するかと思います。
37
弁当を五個つくる朝四十雀 弁当を作るのはだいたい朝ですので、わざわざ句の中で「朝」と言わなくても良いかなと感じます。「弁当を五個こしらへて四十雀」などで良いのではないでしょうか。
41
炎天にホームセンターの遠く よっぽど何かホームセンターに行かざるを得ない用事があったのでしょう。下五の字足らずに不思議な余韻がある。
44
真夏日の銭湯同じ顔ぶれが まあ銭湯というものは、だいたい地域の常連が集まる物ですが、なかなか雰囲気は出ている。
47
躾糸抜いて賢母の大昼寝 大らかかつユーモラスな句ですが、「賢母」という言葉はどうも理屈っぽい。「躾糸抜き終へ母の大昼寝」ぐらいで充分かと(「大昼寝」の「大」も何だか少し気になりますが…)。
49
海月涌く川面に揺れる月明かり 景としては悪くないと思うのですが、切れを入れるとか語順を入れ替えるとか、ぱっと鮮明に浮かんでくるような句にしてほしい所です。
52
梅雨佳境移植の済まぬ花の苗 長雨が続いて花の移植作業が進まない、ということなのですが、少々説明っぽい印象です。
54
たけやさおだけ暑苦しきが近づき来 上五を字余りにした七七五の形です。今現在だけでなく、過去の夏の記憶とさおだけ売りの売り声が強く結び付いているのかも知れません。ただ、厳密に言うと「暑し」は季語ですが「暑苦し」は季語と言えるかどうか微妙なラインだと思います。
57
テレワーク例年通り更衣 テレワークなら何を着ても自由だろうと思いますが、それでもやはり習慣で…、という内容は分かりますが、これも少々説明的です。
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