ハルヤスミ句会 第三十四回

2003年7月

《 句会報 》

01 夏到来木々の蒼さと白いシャツ  キイロ(つ)

02 柴犬とその飼い主と瀧を見る   春休(阿)

03 母上はいつも留守して実梅かな  秋奈(じ)

04 あつあつの珈琲所望竹婦人    つよし(む)

05 チューリップ支えたるもの潔し  じゅん

06 タクシーの窓を開ければ初蝉よ  阿昼

07 でで虫をつついて細き傘のさき  九鈴

08 鬼百合やおのが花粉に汚れては  春休(秋・阿)

09 炎昼やぬつと出てきて大男    九鈴(秋)

10 荒梅雨や降ろす国旗の紐固く   つよし(む・九・春)

11 冷房のオフィスを出て涼しかり  阿昼(む)

12 大いなる馬鹿を通して花柘榴   秋奈(じ・春)

13 砂浜の貝殻集めて文字を書く   キイロ

14 紡錘の先美しき柿の村      じゅん

15 干し物に竿たはみたる日の盛   春休(◎九・つ)

16 病葉の嵩をおおきく掃れをる   秋奈

17 花こぼし花を散らして糸瓜棚   つよし

18 寒鴉遠くの餌に鳴き降りる    じゅん

19 くつきりと半分だけの梅雨の月  阿昼

20 薄物やくるくると傘回しては   九鈴(じ・春)

21 玄関を狭めポンポンダリヤかな  春休(秋・つ・九・阿)

22 曇り空走り出してく雨の音    キイロ



【 尾野秋奈 選 】
◎08 鬼百合や  本当にその通り、写生に脱帽です「おのが」がぎこちなく感じます。鬼百合よりカサブランカでも面白いかも。
◎09 炎昼や  やあ、暑苦しいとおもったらあやつか、彼はきっと優しい人でしょう。「ごめん」といいながら出てきたみたい。
◎21 玄関を  なつかしい、ポンポンダリアなんて、今時流行らない花。玄関にかざるとあの原色の赤・黄・橙色などで、ぐっと玄関が狭められたような感じがしたのでしょう。

【 松尾むかご 選 】
○04 あつあつの  珈琲を所望しているのはちょっと、冷えて(こころが)きてる作者 その側には、あっけらかんと竹婦人取り合せが面白い
○10 荒梅雨や  ずっぷり濡れた紐の締り具合 季、国旗、と重たくのしかかる凄さがある
○11 冷房の  これは、おやー?って感じの面白さ 今年なんかまさにこうですね。
02柴犬とや 13砂浜の なども落しきれない、好きな句です

【 鋼つよし 選 】
○01 夏到来  夏到来と切り出したところが良い、木々の蒼さや としたらと思う。
○15 干し物に  竿たわむまでに干してあって、即吟的な句。
○21 玄関を  ダリヤを見て、色々感じたことだろうが、この場合ダリヤと玄関の狭きとの取り合せがよい。

【 戸田九鈴 選 】

○10 荒梅雨や  濡れた紐の固さにリアリティがある。国旗がおもしろい。
◎15 干し物に  まぶしい大量の干し物が見えてくる。
○21 玄関を  ポンポンダリアの存在感がいいです。

【 中村阿昼 選 】
○21 玄関を  花瓶に山盛り活けられているのかな。カラフルなポンポンダリヤで明るすぎる玄関に?
○08 鬼百合や  百合の花粉ってすごいけど、鬼百合という響きでさらに野性的な荒々しさが出た。
○02 柴犬と  「見る」という言葉を俳句で使うのは難しいけど、この句の場合、あえて使うことで、無言で瀧を見ている二人と一匹のシルエットが見えてきて、瀧の音がせまってくるようだ。
10 荒梅雨や  ちょっと表現が粗いけど荒梅雨が効いている。
12 大いなる  花石榴が動くかもしれないけど、大いなる馬鹿が好き。
15 干し物に  撓むところに臨場感があるけれど日盛がはまりすぎ。
18 寒鴉  七月になぜに寒鴉?実は南半球の方とか。
20 薄物や  BSで再放送のあった「阿修羅のごとく」の加藤治子のイメージ。

【 じゅん 選 】
○03 母上は  今日も朝から雨。母を訪うとまたどこかへ出かけている。まあ、健康が一番。留守を守るのは今年もよく実った青梅の木である。この叙景、なかなかの策士。「いつも」は「今日も」の方が実梅に付く水滴まで見えてくる。
○12 大いなる  自分が一番偉いと思っている人の多い世で「大いなる馬鹿を通して」と自嘲できる人こそ一番偉い。花柘榴という曖昧な、しかしここではちょうど収まる(季語として)対象を見つけたね。「ざくろ」の表記は石榴?or柘榴?
○20 薄物や  薄物は羅でしょう。あるいは薄衣。祭りの夜のデートか、羅を着てルンルンでお出かけ。その気持ちの昂揚が「くるくると」傘を回させる。修飾語としては平凡だが変に言葉を造るより素直な気持ちが表出されて気持ち良い。

【 小川春休 選 】
○10 荒梅雨や  「紐固く」、そして「荒」の一字にリアリティがあります。力強い句。
○12 大いなる  「大いなる馬鹿を通して」だけだと漠然としててよく分からないのですが、季語で句が生き生きしてます。これも違う意味で力強い句。
○20 薄物や  うすものの身軽さ、柄の細い婦人物の傘、そして雨も当然小降りでしょう。小道具と動作から、いろいろなものが見えてきます。
01 夏到来  「夏」と「白シャツ」が季重ねで、「木々の蒼さ」も「万緑」などの季語とイメージ的に近いため、句に広がりが出ていません。基本的に、一句の中に季語は一つで十分。
03 母上はいつも留守して実梅かな  
04 あつあつの  寝起きでしょうか? そしてやはり寝ているのは御婦人でしょうか? なかなか面白いです。
05 チューリップ  「もの」が何か、ちょっと読み取りにくい感じです。具体的に言った方が良いかもしれません。
06 タクシーの  内容はよく分かるのですが、上五中七、ちょっと説明っぽい感じです。
07 でで虫を  「細き」はわざわざ言わなくても良いように思います。「でで虫の尻をつつくや傘の尖」など、でで虫についてもっと言葉を使ってやりたいところ。
09 炎昼や  面白い句です。3句選でなければ○でした。
13 砂浜の  物語を予感させる句ですが、季語がないのが気になります。季語に替わる、句の核となるような言葉もないですし…。
18 寒鴉  「遠く」の感じなど、なかなか良いのですが、やっぱり冬の句は今の時期の句会ではぴんと来ません。当季の句が並ぶ中では違和感が先に立ってしまいます。
19 くつきりと  「梅雨の月」と「くつきり」が、どうしても頭の中でつながりません。「梅雨の月」はぼんやりしたもの、というイメージがあるのですが…?


来月の投句は、8月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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