ハルヤスミ句会 第三十五回

2003年8月

《 句会報 》

01 廻し飲む麦茶薬罐の空戻り    つよし(九・や)

02 斧の刃の背もてボートに釘打てり 春休

03 吊り橋の揺れに酔ひたり心太   つよし

04 今朝秋のうどん打ちたる手真つ白 春休(む・つ)

05 新涼や門口に椅子置かれあり   むかご(九)

06 雨小粒時に大粒盆の市      つよし(ま・じ)

07 掃除機の掃除などして秋旱    やすみ(む・春)

08 何探しをるか忘れし涼しさよ   春休

09 三色のペン滑らかや生身魂    九鈴(つ)

10 生きてゐる人の踊れる盆踊    じゅん

11 盆の月靴は揃えて並べられ    やすみ

12 手花火に土美しく浮かぶかな   じゅん(ま・や)

13 終戦記念日七八人が茂みより   九鈴

14 桶の水こぼしつつ来し墓参    むかご(ま・九・や・春)

15 筆箱に鉛筆揃へ敗戦日      九鈴(つ・じ)

16 線香の雨に曲がるや川施餓鬼   むかご(じ・春)

17 台風の最中水槽洗ひをる     じゅん(む)

18 秋団扇切手貼られて届きたる   春休



【 船橋まどひ 選 】
新入会員の舟橋まどひ と申します。
選評の能力がありませんので、選句だけさせていただきます。

6・12・14 です。

し、しかしうまいですね〜〜当たり前ですが。

【 松尾むかご 選 】
○04 今朝秋の  このうどん食べたいと、思わせる句だ 食べ物はうまそうに書く、は、基本 真つ白はましろ(真白)でいいのでは
○07 掃除機の  こればかりは、一気にガーっと済ましてしまう訳にはいきませんね その、ゆっくりを楽しんでいるのでしょうか
○17 台風の  台風と水槽は、関係ありそで、なさそで でも、句に収まっていて可笑しい


【 鋼つよし 選 】
○04 今朝秋の  今朝秋との取り合せでいただきました。今朝秋やでも良いのではないか。
○09 三色のペン
○15 筆箱に  揃へ になっているから、わざわざと言うか、なにかこだわりでもあるのか敗戦日で戴きました。
 * 線香と施餓鬼、墓参りと桶の水こぼす・・・近すぎに思う。

【 戸田九鈴 選 】
○01 廻し飲む  廻し飲む、は説明。戻りたる麦茶薬缶の軽きこと、とかで十分に伝わるんじゃないかな。
○05 新涼や  何が始まるんでしょう。期待感があります。
○14 桶の水  足元の悪そうな墓が想像されます。「墓参かな」で山本山を直してほしいです。
02 斧の刃の背 ワイルドで臨場感があります。刃までなくても、斧の背でわかりそうです。

【 じゅん 選 】
○06 雨小粒  「俳句とはこんなにも簡単なものか」と初心者は思うだろう。簡単平明な句が凡句で終るか名句になるかは紙一重である。掲句は雨粒だけに焦点を当て、最後に「盆の市」と落ちつかせたことで名句となりえた。
○15 筆箱に  58年前の8月15日朝。子供達はいつも通り筆箱に鉛筆を入れ登校した。一方現在のニッポン。不景気などと騒いでいるがとにかく平和。作者は筆箱に鉛筆を一つずつ揃えながら戦禍に散った人々を偲んでいる。
○16 線香の  「川施餓鬼」とは馴染のない季語でしたので歳時記を調べました。実物を見たことないのでよく分りませんでした。しかし「雨に曲がるや」という線香への措辞が百の言葉よりも川施餓鬼を言い尽くしていると思うのです。

【 小川やすみ 選 】
01 廻し飲む 学生時代の夏の暑い日の部活を思い出しました。
12 手花火に 土が美しいというのが良いですね。
14 桶の水  水をいっぱい入れて運ぶのはたいへんなんですよね。狭い道でえっちらおっちら運んでいる様子が浮かんできますね。

【 小川春休 選 】
○07 掃除機の  秋旱というとどうしても日差しの当たるところに目が向きがちですが、室内のことに目を向けたのが面白いですね。秋旱だと暑くて家事もタイヘンなのです。
○14 桶の水  お参りする方もかなりご高齢なのでしょうか、それとも墓までの道が悪いのでしょうか。そこはちょっと分かりませんでしたが、墓に参ろうとする気持ちの強さは確かに伝わってきました。
○16 線香の  想いの句だと思うのですが、「線香が雨に曲がる」という描写のリアリティのおかげで、想いに流されずに強い句になっているように思います。
01 廻し飲む  上五はわざわざ言わなくても良さそう。「空つぽで戻りし麦茶薬缶かな」などと言うこともできますし、いろいろ推敲の余地がありそうです。
03 吊り橋の  下五が「心太」だと、「吊り橋を渡っていた時」と「心太を食べている時」の間に時間の経過が生まれてしまうと思うんです。できれば違う季語で、もっと吊り橋に焦点を絞りたいところ。
05 新涼や  涼しいから門口に椅子を置いて(そこで涼む)、という理が付いているように思われます。
06 雨小粒  できている句だと思うのですが、下五「盆の市」がベストかな、という疑問が残ります。
10 生きてゐる  盆で生者と死者を対比するのは、ちょっとツキスギの感があります。
12 手花火に  「手花火」ではなく「土」の美しさに目をつけたところがなかなか面白いですね。
15 筆箱に  「筆箱に鉛筆揃」えたのはどんな人でしょうか? 小学生? ちょっと読む手がかりが少ないような。
17 台風の  句の素材は面白いのですが、「最中」とわざわざ言う必要はないのでは? 「台風」と「水槽洗う」の取り合わせを、切れを利かせて、もっと鮮やかに一句にしたいところです。


来月の投句は、9月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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