ハルヤスミ句会 第三十六回

2003年9月

《 句会報 》

01 ベランダに少女定刻花木槿    じゅん

02 馬の尾に藁屑まじり秋旱     春休(つ・九・じ)

03 糸瓜水一リットルは溜まりをる  つよし(阿・む・ま)

04 天高くよく食ひ笑ひて帰りけり  九鈴(じ・阿・春)

05 手伸ばして用事を済ます雨の月  じゅん

06 この年はちちろ少なき月見かな  春休(つ・ま)

07 爪切つて何も始めず秋うらら   じゅん(九・春)

08 虫時雨夜明け鴉の鳴きにけり   つよし

09 残る蛾や自動販売機につどひ   春休(つ・九・む・ま)

10 雨上がる気配のなきや虫の闇   つよし(む・春)

11 柳散る中也の帽子ちんまりと   春休(じ・阿)



【 鋼つよし 選 】
○02 馬の尾に  季語に五文字使ったので、藁屑まじりとしか表現できないとは思うけれどもうすこしきっちり分かるともっとよい。
○06 この年はちちろ少なき月見かな
○09 残る蛾や  夜の自動販売機に集うのは、蛾のような輩ともよめるが、とくに秋にこだわって残る蛾としなくても良いと考える。
01 ベランダの句、迷ったが少女と槿は甘いものと甘いものの取り合わせのような気がした。

【 戸田九鈴 選 】
○02 馬の尾に  まじるっていう感じがよくわからないのですが、とてもいい感じなのでいただきました。挟まっているのかな? 
○07 爪切つて  「爪塗って」ならば、至福の時です。   
○09 残る蛾や  集っているのは人間。うらぶれた夜の感じがいいなあ。 
05 手伸ばして  何の用事か聞かぬが花?

【 じゅん 選 】
○04 天高く  「天高く」、おやっと思わせる書き出し。一転「食ひ」「笑ひ」「帰り」と単純明快にその日の行動を詠った。この明快さがお手柄。
○02 馬の尾に  朝手入れされた馬の尾だが、昼頃には糞尿や泥で汚れる。見ると馬の尾に藁屑が付いている。夏を乗り越えた疲労の馬に秋の日差しは容赦なく降り続く。「〜に…まじり」と説明になってしまったのが惜しい。
○11 柳散る  確かに写真などで見る中也の帽子は小さい。柳散る下に中也がたたずんでいる写真を見ているのか、または柳の葉が散っていくのを見て、夭逝した中也を思い出したか、それはどちらでも構わない。「小さくて」ではなく「ちんまりと」に作者の中也への親しみが感じられる。季語が動くかとの疑問は、実際作者の眼前の景であるならば「柳散る」が「桐一葉」でもよし。
03 糸瓜水  「糸瓜水が1リットル溜まった」という報告の句になっています。一句一章、二句一章にせよ、糸瓜の句は子規のイメージをどう超えるかに尽きると思うのですが。
06 この年は  私は季語の重なりは避けています。まして「ちちろ」「月見」と季感の強い語が重なると、鑑賞の入口でヘナヘナとなってしまいます。
08 虫時雨  「虫時雨」と「鴉」。どちらに焦点があるのかわかりません。二種の動(生)物を取り合わせるのは難しいですね。
09 残る蛾や  自動販売機に虫が集まってくるのは珍しい景ではありませんね。平凡な景の場合、もっと強烈な(非常識な)ものとの取り合わせ、あるいは表現が必要かと思いますが如何でしょう。
10 雨上がる気配のなきや  「雨上がる気配のなきや」は平凡な表現。ずっと降り続く雨、これからも降り続くであろう雨。その雨と虫の闇を合わせるのなら、「残る蛾」でも申しました通り、「雨」については作者のオリジナルな、強烈な個性表現が必要と思います。

【 中村阿昼 選 】

○11 柳散る  中也のふるさとの湯田温泉を思い出しました。柳散る公園に置き忘れられた帽子は中也のものだったのかも。
○04 天高く  先日の合宿での私を写生されたのかと思いました。「笑ひて」は「笑ひ」にすると七音になってよいかと。
○03 糸瓜水  いったいどれだけ採るつもりだったのか。まだまだ採れそうです。

【 松尾むかご 選 】
○03 糸瓜水  たかが糸瓜水と言うなかれ 貯まって行くのを見てる嬉しさがある
○10 雨上がる  微かな雨の音、と入り混じる虫の音 闇、妖気な世界に引き込まれそう
○09 残る蛾や  末のつどひが気になるが、景としては面白い、なんか、もっとよい句になりそう


【 船橋まどひ 選 】
パソコン復旧ならず、投句間に合いませんでした。
又選評なしの選句だけさせていただきます。
3・6・9です

【 小川春休 選 】

○04 天高く  何だかとてもばかばかしくて良い句だと思いました。ただ、中八がとても気になります。「て」は無くても良いのでは?
○07 爪切つて  しばらく何もせずにのんびりとしていたいような、そんな「秋うらら」の感じがよく出ています。
○10 雨上がる  「夜長」という言葉は使われていませんが、「雨の夜長」という雰囲気が伝わってきます。ただ、「なきや」という言い回しは「ないだろうか?」という疑問の意味にも取れるため、少し曖昧なようです。もっとはっきり言い切った方が良いかもしれません。
05 手伸ばして  席を立たずに手を伸ばして何か用事を済ました、ということなのでしょうが、「用事」が何なのか読む手がかりが少なすぎるように感じました。
08 虫時雨  「夜明け」に「虫時雨」というのがあまり自分にはなじみがないので、ちょっとぴんと来ませんでした。あと、虫も鴉も両方鳴くものなので、要素がだぶっているような感じです。


来月の投句は、10月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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