ハルヤスミ句会 第四十回
2004年1月
《 句会報 》
01 山へ向く一本高き枯尾花 じゅん(ま) 02 数へ日や違法看板ぶちこはし 春休(つ) 03 寒月のまんまるなるが上がりけり つよし(ま) 04 初空や無きがごとくに窓硝子 春休 05 初社ここから三十分の札 まどひ 06 雑煮待つ間を駅伝の牛蒡抜き 春休(じ) 07 書初めのおの字はみ出てほめらるる まどひ(つ・春) 08 篝火の燠きとなりをり初詣 つよし(◎じ・春) 09 正座してご挨拶してお年玉 まどひ(じ) 10 歯ブラシの毛のおとろへに松過ぎぬ 春休 11 初伊勢や賽銭受のひろびろと まどひ(つ・春) 12 見廻の長き廊下や寒卵 じゅん 13 町内に老人多し柚子湯立つ つよし 14 昇降機止まり出てくる寒卵 じゅん(ま) |
【 鋼つよし 選 】 ○02 数へ日や 違法看板も数へ日という季語を得て俳句になったところがいい。 ○07 書初めの 元気の良いところを買ったのだろうほめて育てるところをいただき。 ○11 初伊勢や 伊勢といえば三種の神器だったか20年毎の遷宮とか、えらく神々しいのだが、俗な面もあるということか。 10 歯ブラシの句、惹かれたが以前阿昼さんか? 似たような句があったような気がする。 12 長き廊下と寒卵の響き具合がどうも判らない。 【 じゅん 選 】 ◎08 篝火の 初詣は正月午前0時からだが神社やお寺ではもっと早くから篝火を焚いている。作者は遅くに初詣に出かけた。参道の篝火は燃え尽きて燠(おき)=炭火となってしまっているが、まだ赤く暗闇に幽玄な雰囲気を醸している。薪からは紫色の煙が立ち昇っているだろうし、木の焼けた匂いもあたりに漂っているのだろう。表記の「燠き」は「燠」ですね。それでさらに句が締ります。選句三句の中で最も余韻が深かった句でした。 ○06 雑煮待つ 正月の風物詩、大学箱根駅伝ですね。大晦日夜更かしし、遅い目覚めに雑煮を作ってもらっている作者。TVではちょうど往路花形コースである第2区間の激しい競り合いが映し出されている。ひ弱になったと言われる若者だが、選手の走る姿は新春の悋気にふさわしくすがすがしい。「おもちいくつ?」と妻の声がした瞬間、アナウンサーが「3,4人牛蒡抜きだ!」と絶叫した。作者もつられて「3,4個」と答えたかどうか・・・。(笑)「駅伝」は他のスポーツと違い、のんびりと楽しめる。「雑煮」との取り合わせで画面のこちら側の「おこた」の様子や台所の湯気までが見えてくる。 ○09 正座して おめかしした女の子が新年の挨拶におじいちゃんの家にやって来た。教えられられた通り正座をし「おじいちゃん、おばあちゃんあけましておめでとうございます」と手をついて頭をさげた。「お〜お、そうかそうか」とおじいちゃんはもうメロメロ状態。お年玉だけでなく全財産でもやるぞと思ってしまう。最近は家に上がるや否や「お年玉ちょうだい」とただ手を出すだけの子供がいるが、新年の儀式として句のようにちゃんと順序を踏まえて欲しいものである。掲句の女の子はお年玉を貰うとすぐ隣の部屋へ走り袋を開けたのだろうが、それも微笑ましい新年風景である。「〜して」の繰りかえしで女の子の動きがよく目に見えた。 以下、勉強の為それぞれの句についての感想を書かせていただきました。失礼の段、ご容赦下さい。 03 寒月の 中7の「まんまるなるが」と邪心無く述べたところがこの句の眼目。冬の澄み切った夜空に、蛇笏の「白炎」を曳いて上がった寒満月の美しさは、千の言葉を操るより、この句のように素直に詠むのが正道である。惜しいのは寒月に対し、「まんまる」の語感がやや間延びすること。 02 数へ日や 年末、金融などの電柱看板を次々取り外している景でしょうが、「違法看板ぶちこはし」の表現は荒っぽさを狙ったのでしょうが、俳句には向かなかったと思います。 04 初空や 窓硝子ごしに初空を見て、あまりの美しさに眼前の窓の存在を忘れているという句意でしょう。状況はわかりますが、句のように詠むと「窓硝子」に感動がいってしまいます。例えば寝たきりで窓越しにしか初空が見えないのなら、窓はさりげなく詠み込み、病床の身である事と初空とを響き合わせた方が良いと思います。 05 初社 「ここから三十分の札」がよくわかりません。門前から本宮まで30分かかるのでしょうか。それとも札(おみくじ)に何か特別な趣向があるのでしょうか。 07 書初めの よくある描写と思います。 10 歯ブラシの 年変わりに新しくした歯ブラシが、松過ぎて(16日)もう弱っているということを一句にしたのですね。ただこれでは理屈、観念句です。「おとろへ」と「に」がさらに句を観念的にしています。 11 初伊勢や 有名寺社の賽銭受けは正月は特別に大きなものを備えるのでしょうか。そこに目をつけたのは面白いのですが、伊勢神宮固有の習慣とは思えないところが句が輝いてこない理由でしょう。賽銭箱ではなく伊勢神宮を感じる他のものがあるかと思います。 13 町内に 「町内に老人多し」「町内に子供の多し」「町内に犬猫多し」などはよく見る描写。取り合せが「柚子湯」なのも予定調和ですね。 【 舟橋まどひ 選 】 @(山へ向く) 日本画や文芸でよく目にする景だと思うのですが、なんだかいいです。きっと言葉の使い方が上手なんでしょうね。とても素敵です。 B(寒月の) まんまるなるに澄んだ冷たさを感じます。その月を見たくなるような句。 M(昇降機) 長谷川町子さんが生きていたら、作品にするような句。なんだか産むところまで想像させる面白さがあると思います。 【 小川春休 選 】 ○08 篝火の 初詣、という晴れやかな季題に対して、燠という物事のお仕舞いを思わせる言葉を配したところが巧みです。アクタガワリュウノスケの「手を洗ひをる夕ごころ」の句に通ずる趣きです。 ○11 初伊勢や 何でもない句のようですが、「ひろびろ」という言葉が生きているように感じました。 ○07 書初めの 内容はよく分かりますが、このままでは「○○が××して〜なった」という俳句としては非常にまずい形です。「書初や大きくおの字はみ出して」などとした方がすっきりして良いのでは? 01 山へ向く すっきりして良い句だと思うのですが、「向く」はわざわざ言わなくても良い気がします。「山へ」とだけ言っても、向いていることは読み取れると思うのです。 05 初社 案内札の句だということは分かるのですが、三十分も先にあるものを「初社」と言っていいのかどうか…。まだたどり着いていないのに「初」と言えるかどうか…。季語の本意から外し過ぎてしまったかもしれません。 09 正座して これも「○○が××して〜なった」型の、物事の流れを追った形の句になっているようです。 12 見廻の つよしさんと同じく、廊下と寒卵の関係が今ひとつつかめません。何を見回っているのでしょうか? 13 町内に 老人と柚子湯、何だかイメージ的に近い感じがします。広がりがない感じです。 |
来月の投句は、2月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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