ハルヤスミ句会 第四十一回

2004年2月

《 句会報 》

01 雪つぶてぎゆつと固めし手が真つ赤 春休(や)

02 見送りの後に落ちけり寒椿     やすみ(つ・と・春)

03 雪兎智恵子のあをい眼を刻む    とう子

04 つまみ上げて裏返しみる落椿    じゅん(ま)

05 飼い猫の夜這い見送る雪の道    やすみ

06 おにはそと鬼は外とぞ泣きにけり  まどひ(と)

07 麻痺の手に鬼の豆とてよこせとや  つよし(春)

08 魚は氷を上るを網の仕掛けられ   むかご(ま)

09 はるの雪傘にふれてはすべりけり  春休(む)

10 春一番よりかかるもの倒しけり   むかご(じ・ま・と・や)

11 追ひついて梅のところで並びけり  まどひ(む・じ)

12 草餅に手を出さぬひと一人ほど   むかご

13 富士山の形に崩し残る雪      つよし

14 ごみの日の男と女うすごおり    じゅん

15 しずしずとお盆はこべば梅の花   まどひ(む・じ)

16 立春も立ち尽くしている夜の淵   とう子

17 神式の葬すぐおはる雪解かな    つよし

18 ひたすらに眠れますよう春一番   とう子(つ)

19 よく見ればおはぐろなされ古雛   春休(つ)

20 袋から色の飛び出す雛あられ    じゅん(や・春)

21 雨やんで光まぶれの猫柳      まどひ



【 松尾むかご 選 】
09 はるの雪  鮮やかな色の傘を柔らかい春の雪が、降りてきては、滑り落ちる はるですなあ
11 追ひついて  梅のところが、すてき、清潔な香りと、形・・・きっと、追いついて並んで、歩いて、角まできたら「それじゃ」ってね
15 しずしずと  梅の花ってすごい季語ですね ポンと、この梅の花をいれると現れる、清潔で、清々しい空気。お盆に乗っているであろう、御茶までが、香しい

【 鋼つよし 選 】
○02 見送りの  たんなる偶然にすぎないのだが、軽い驚き
○18 ひたすらに  季語と上五、中七の離れぷりが良い。
○19 よくみれば  古い雛だから、いろいろ剥落しているのだがよく見れば・・・この場合の「よく見れば」は良いのではないか。
 *12 草餅、14 ごみの日の おもしろい素材だがもうひとひねりほしい。

【 じゅん 選 】
○10 春一番  「よりかかるもの」がこの句のポイント。具体的なものを言わず「寄りかかるもの(全部)」としたことで、春一番の烈しさを暗示します。ただ始めに春一番と置いたことで原因〜結果となってしまいました。こういう場合は下に春一番を置くと俄然良くなります。
○11 追ひついて  梅をこう詠んだのは斬新な切り口ですね。「梅のところで」が出そうで出ない表現です。この一語で一気に梅の花が見えます。「追いついて」は「追いかけて」でしょうか。
○15 しずしずと  梅の花の見えている場所に作者はいるのでしょうが、お盆を運んで行くとそこに梅の花があったという構成が面白いですね。子供たちのお茶会の景と解したいですね。大人ならよろしさが半減。「お茶や御菓子を運ぶ」と言わず「お盆を運ぶ」がいいですね。梅の花の楚々とした感じと、子供のおぼつかない足取りがよく響いています。
 今回も頂かなかった句について感想を書かせていただきます。失礼の段お許し下さい。
01 雪つぶて  「雪つぶてをぎゅっと握り締めたら手が真っ赤になった」という報告で終ってしまいました。一物にせず下5を広い景に飛躍させると面白いと思います。
02 見送りの  作者は誰も居なくなった静けさを詠みたかったのでしょう。詩心を感じる句ですが、因縁めいた作りになってしまい惜しいと思います。  
03 雪兎  雪兎は知恵子の純真な心の化身でしょうか。智恵子抄を読み返したくなる句です。私の勉強不足ですが「あをい眼」の意図、必然性がわかりませんでした。   
05 飼い猫の  面白い景ですが描写に対し「雪の道」と場所を言ったこと、または季語に対し「見送る」と結果を言ったことで報告になってしまいました。
06 おにはそと  「おにはそと」と言いながら幼い子が泣いているのでしょう。面白い句ですね。「とぞ泣きにけり」が柔らかい表現なら頂いてました。
07 麻痺の手に  こういう現実は俳句に納めるのは難しいですね。 
08 魚は氷を  「網の仕掛けられ」に一ひねり欲しかったです。
09 はるの雪  春雪は湿度を伴うものですが、この句のように乾いた雪も降りますね。それが傘をすべって地に着く頃はもう形はないのです。いい句ですが表現が変化球なら取りました。
12 草餅に  「ほど」は「だいたい」の意味ですので、「一人ほど」はこの場合描写と響き合わないと思います。
13 富士山の  「富士山の形」は評価が分かれると思います。     
16 立春も  景が見えてきませんでした。「立春」と「立ち」は何か狙っているのだとは思いますが。
17 神式の  雪が解けるのと葬式が終るのとに理屈が見えました。「雪解川」ならいいと思います。
18 ひたすらに  春一番は昼間の土埃を吹き上げるイメージがあるので、夜とは響き合いませんでした。
19 よく見れば  「おはぐろ」に着目したのは正解。推敲で秀句になると思います。「よく見れば」は要らない言葉ですね。
21 雨やんで  「光まぶれ」は面白い表現ですが、「雨やんで」とされると原因〜結果になってしまい取れませんでした。

【 舟橋まどひ 選 】
04 つまみ上げて  落椿の、死んだばかりの小鳥のような感じ。まだ生温かそうなその感じを私も句にしてみたくて「手に取りて息づくやうな落椿」というのを作りましたが、こちらのほうがリアルだし上等です。つまみ上げがうまい。   
08 魚は氷を  こうゆう句やはり好きです。けなげさの先に待ち受ける運命の罠・・・少女漫画の王道。
10 春一番  台風のようにすべて薙ぎ倒すのではなく誰かによりかかってるものを振り払う。ふわーと、でも強く。
その他では  
09 はるの雪 も景がはっきり見えていいと思いました。

【 多々野とう子 選 】
A見送りの 椿の赤の鮮やかさが胸にきわだつ句だと思いました。
Eおにはそと こころ優しい幼い子供が泣いている情景が浮かびました。
I春一番 「よりかかるもの」という選択で成された表現に、なるほどと思わされました。

【 小川やすみ 選 】
01 雪つぶて  雪合戦のあと手がまっ赤になったあと手がじんじんしてくるんですよね。
10 春一番  春が近づいてうれしいのですが、あの風は困ったものですね。
20 袋から  「色のとびだす」という表現がいいですね。ひなあられ食べたくなりました。

【 小川春休 選 】
○20 袋から  「色の」が良いですね。目に浮かぶようです。昔のホトトギス雑詠のような姿勢の正しい句で好感を持ちました。
○07 麻痺の手に  病気の平癒を祈る気持ちが読み取れると、途端に豆撒きの持つ意味が重く伝わってきます。中七下五も勢いがあって力強いです。
○02 見送りの  静けさが伝わってきます。「見送りの後」というところがうまいです。
06 おにはそと  何で泣いてしまったのかがちょっと読み取れませんでした。
10 春一番  分かりやすくて良い句。「もの」とあえて具体的に言わなかったのも良かったと思います。箒やら何やらかんやら、全部倒されてしまったのでしょうね。
11 追ひついて  地味ではありますが、さりげなさに好感を持った句です。
14 ごみの日の  「ごみの日の男と女」ってどういう感じなのでしょうか? 「うすごおり」も離れ過ぎのような気がします。
15 しずしずと  良い雰囲気なのですが、ちょっと「梅の花」らしすぎる気がしました。ツキスギっぽい感じです。
16 立春も  立春、というと普通朝や日中をイメージしますが、この句では夜。そして場面は淵。とても新鮮な感じを受けました。ただ、「立春も」の「も」のせいで、曖昧な句になっているようです。
21 雨やんで  言わんとするところは分かるのですが、ちょっと散文的な感じです。切れがあると良いかもしれません。


来月の投句は、3月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

back
back.
top
top.