ハルヤスミ句会 第四十二回
2004年3月
《 句会報 》
01 あの人はもうふりむかぬ雪の果て とう子(つ) 02 雪代のはしるや水車せはしなく 春休(む) 03 表より呼ぶ声のして春炬燵 むかご(じ・春) 04 新草に容赦なき風くることよ つよし(む・と) 05 口笛がふけなくなって梅の花 とう子(つ) 06 私の目凝っと見てゐる女雛の眼 まどひ 07 菱餅の向き変えてゐる児の手かな じゅん 08 飯食はぬ猫恋にでもやぶれたか 春休 09 春耕や野鼠の巣をいかんせん むかご 10 涅槃会の受付にゐる恩師かな つよし(む・じ・ま・春) 11 耳打ちの息こそばゆく沈丁花 まどひ(つ・と) 12 芹摘みの流れに白根揃えたる むかご(◎じ・ま・と・春) 13 優しいは褒め言葉でなし雁供養 とう子 14 コンビニの袋は置いてぶらんこす じゅん(ま) 15 ふれてみてくぐってみてる柳かな まどひ 16 花の骸(から)芽ぐみし枝にひつかかり つよし 17 マンションの窓を横切りしゃぼん玉 じゅん 18 そよそよと疲れて帰る春ショール まどひ 19 夜桜のカーブに事故の多きこと 春休 |
【 松尾むかご 選 】 02 雪代の せわしなく、とごく普通のことばで投げ掛けていることで、ずんと、入ってくる、全てが動き出す春のエネルギーを感じる。 04 新草に 草も木も風に晒されて逞しく育つのですね、ちょっと離れた目線がよい。 10 涅槃会の あの世で恩師に会ったかのような・・・ 【 鋼つよし 選 】 01 あのひとはもうふりむかぬ雪の果 05 口笛がふけなくなつて梅の花 11 耳打ちの息こそばゆく沈丁花 評 選んだ3句とも、口語的表現でかつ取合せの句ばかりとなったが。雪の果、梅の花、沈丁花に対して、類想、類句を感じない表現で、参考になった。 【 じゅん 選 】 ◎12 芹摘みの 芹を摘んですぐ野川で根を洗う。雪解け水を含んだ小川は清冽で手が切れるほど冷たい。ところどころに雪が残っているが、その間を黒々とした土がのぞいている。早春の光の中で、芹の青さと根ひげの白さが鮮やかに浮かんできます。見事な客観写生の句です。 03 表より 風呂に入っていたり簾の内側にいたりする人に外より声がかかる、という句はよく見ます。こういう情景を句にするには季語に何を置くか、あるいは描写にどうオリジナリティを持たせるかですが、この句は「春炬燵」でいただきました。 10 涅槃会の 私は涅槃会を詳しく知りませんが、その受付を詠んだ句は少ないのではないでしょうか。退職後に地域活動に精を出す恩師はすでに一人のお年寄りである。そこに一抹の寂しさが生まれる。 ここに座っている恩師はおそらく生涯一教員として退官なされた方なのでしょう。 【 舟橋まどひ 選 】 10 涅槃会の なんと言ってもお釈迦さまは偉い。尊さ、有り難さではキリストより上なような気がします。だから、恩師と言えども釈迦のイベントでは受付程度なのでしょう。 12 芹摘みの 匂い、感触、動き、とてもいいと思います。 14 コンビニの ハハハハ、分かる、分かる。抱っこと言う訳にもねー。ハンドバックじやないし。 その他4の新草と7の菱餅もいいと思いました。 【 多々野とう子 選 】 4) 新草に 新春らしさがよいと思いました。 11)耳打ちの 沈丁花、がいいですね。甘い香りとあいまって、甘い関係なのでしょうか。 12)芹摘みの 色がきれいです。水はまだ冷たいでしょうね。 【 小川春休 選 】 ○10 涅槃会の 涅槃会で「受付」を読んだ句は少ないんじゃないでしょうか。しかもその受付にいるのは恩師。なかなか味のある句だと思います。 ○03 表より まだ春浅い、静かな空気が感じられる句。「春炬燵」が利いてますね。 ○12 芹摘みの とてもすがすがしい句。蕪村的な色彩を感じる句ですね。切れなど言い回しにもう一工夫するともっと良くなるかもしれません。 01 あの人は 「恋の終わり」を思わせる上五中七と「雪の果て」だと、イメージ的にツキスギのように感じました。 04 新草に 言い回し等、好きな句なのですが、「新草」と「容赦なき風」の対比がはっきりし過ぎのように思いました。 05 口笛が 上五中七と下五とで意味内容が切れているわけですが、もうちょっと状況がイメージしやすい季語の方が良いような気がしました。 11 耳打ちの 季語も合っているし、なかなか雰囲気のある句だと思います。 14 コンビニの 「袋は」より「袋を」の方がさりげなくて良いように思います。 18 そよそよと 疲れて帰る様子を「そよそよ」という擬音で表すのはちょっとおもしろいと思いました。 |
来月の投句は、3月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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