ハルヤスミ句会 第五十三回

2005年3月

《 句会報 》

01 マスクより口はみ出せる欠伸かな  春休(由・山)

02 雪かきもエクササイズと若き妻   由宇(山)

03 美し女になほも香水水仙花     由宇

04 前足をきちんと揃へ春炬燵     つばな

05 観覧車高く吉備路のチューリップ  どんぐり

06 青ッ洟の子どもひさびさ涅槃西風  つよし

07 いいわけのいらぬ朝寝も湯治宿   まどひ

08 灯火のガラスに映る涅槃雪     つよし

09 ひなあられよりも赤子の口小さ   春休(山)

10 春の雪止めば明るくなりにけり   つばな(鋼・ど・春)

11 時ならぬお江戸の雪や雛納     まどひ

12 野火つけてゆく人種を蒔くように  どんぐり(鋼・ま)

13 さざなみの水面に浮ひて鴨一羽   由宇

14 野火高くこちへ来るなと駐在は   どんぐり(ま・春)

15 啓蟄の早足虫や鎌の先       つよし(ど・ま・春)

16 啓蟄の抱けば腹蹴る赤ん坊     春休(鋼)

17 まつすぐに来て春潮のへたりけり  まどひ(鋼)

18 白鳥の旋回飛びや帰るころ     つよし

19 明日よりは村の名も消え鳥雲に   春休(由)

20 春雨にちよいとうたたねしたやうな つばな(由・ど)



【 金子由宇 選 】
○01 マスクより  風邪か花粉症。どちらにしても身体はけだるく、つい欠伸がでます。ふわぁーと大欠伸した途端、口がはみ出して滑稽。
○19 明日よりは  市町村合併で、村の名が消えるのでしょうか。寂しいような惜しむような気持ちが、鳥雲によく繋がっていきます。
○20 春雨に  倉田紘文さんの「雨の日は音たてて春すすみけり」を思い出しました。対照的に春雨は静かに降り、しかも空気はしっぽり生暖かくて、ついうたたねしますよね。“ちょいと”が飄としていて、いいです。

【 鋼つよし 選 】
○10 春の雪  明るくなるというのは、単に外が明るくだけでなく、心の中も明るくという感じが春の雪にあると思う。
○12 野火つけて  種蒔くという比喩も温かみのある言葉でよい。
○16 啓蟄の  虫も人間も命の息吹。力強くて良い。
○17 まつすぐに  春だからまだ海水温度も低いせいでしょうか。へたると見たところが良い。
 マスクの句のほか、今月は取りたい句多く迷いました。

【 舟まどひ 選 】
○12 野火つけて  見たことはないのですが、ああこういう感じなのか、とイメージ出来る句です。火もやはり育てるものなのですね。
○14 野火高く  駐在がいい。その町や村の雰囲気をうまく表現していると思います。夢中になって両手を振ってる感じとか、必死に押しとどめてる様子が駐在で生きてるようです。
○15 啓蟄の  早足虫が面白い。これだけでちょこちょこ這い回るスピード、大きさ、目に見えるようです。

【 渋川どんぐり 選 】
○10 春の雪  ふんわりと軽い春の雪。止めば明るい!! 春が来るとうれしいんで
す。なぜかしらん。 
○15 啓蟄の  土から顔出したと思ったら、鎌の先とは。ううむ、なんか、他人と思
えない間の悪さ。   
○20 春雨に  濡れるのもいいけど、うたたねもいいですね。 
この他にとりたかった句
02 雪かきも  雪国の女性は美しく、たくましいと聞く。この新妻もさぞ・・・。 
08 灯火の  なんだか、幻想的で、ボーっとしてしまいました。      
16 啓蟄の  虫や蛙に負けてないわさ。僕だって。 

【 山田つばな 選 】
○01 マスクより  すごいところを見ましたね。恐かったでしょう。
○02 雪かきも  溌剌とした可愛らしさがよく表れてます。
○09 ひなあられ  なんとまあ可愛らしい。慈しみの眼差しを感じます。
 他に好きな句、気になった句。
05 観覧車  春らしい景色がいい感じ。
12 野火つけて  後半がわからない。
17 まつすぐに  面白い。
 以上です。もうすぐ桜ですね。

【 小川春休 選 】
○10 春の雪  降っていたかと思うともう止んでいる、そんな「春の雪」の感じがよく出てます。
○14 野火高く  「野火高し」と切った方が良い気がしますが、臨場感があってのどかで好感を持ちました。
○15 啓蟄の  まだ啓蟄なのに、鎌の先にはもうちょろちょろと足早に動き回る虫がいる。そんなちょっとした驚きを、控え目ながらうまく表現できていると思います。
02 雪かきも  「エクササイズ」という言葉はあまり俳句で使われてるのを見ない言葉ですが、面白いですね。いかにも「若き妻」という感じです。
04 前足を  これはこれは、お行儀の良い猫ですね。「春炬燵」ならではという感じです。冬だとなりふり構ってられませんからね。
06 青ッ洟の  最近の子供って洟水垂らしてないですよねー、という感懐と「涅槃西風」がよく合ってます。
08 灯火の  雰囲気のある良い句だと思うのですが、ちょっとインパクトが弱い気もしました。
11 時ならぬ  雛納めの頃の雪、良いですね。ただ、「お江戸」より江戸の中の具体的な地名の方がより一層趣き深い気がします。私は江戸の地名に詳しくないですけど、薗部庚申さんがとっても詳しいです。
12 野火つけて  野火をつける様を「種を蒔くように」と見たところはとても良いと思うのですが、残念なことに散文的。「ゆく人」の四字が特に蛇足のようです。「種蒔くやうに野火つけて」とすれば七五できちっと収まります。後の上五は推敲を。
17 まつすぐに  「へたりけり」は面白いのですが、「まつすぐに来て」が必要かどうか。句の中に余計な時間の経過が出てしまっているように思いました。
20 春雨に  小唄のような肩の力の抜けた感じが良いですね。今回良い句が多かったですね。5・6句くらい○にしたい感じでした。


来月の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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