ハルヤスミ句会 第五十六回
2005年6月
《 句会報 》
01 うらおもて磨く便器や衣更 つよし 02 口に受けては雨粒を呑む小亀 春休(佐・山) 03 ビニールのピンクの豚が梅雨の溝 つばな(佐・春) 04 赤紫蘇や酒屋解かれて大空き地 どんぐり 05 いかがはしき雑誌出で来し草むしり 春休(鋼・ま) 06 羅を纏ひドーランこってりと まどひ(佐・ど) 07 あぶらむしつきたるままに折れている つばな 08 表札の名前をなぞりなめくぢり 春休(由・ま・ど) 09 境界のロープを越えて夏蓬 つばな 10 夕蛍刈られし畦にともりけり どんぐり(山・春) 11 黒南風や豆州太鼓のなまくさき 佐津子(由) 12 ふりかえりふりかえりゆく蛍川 どんぐり(山) 13 簾越し昼を灯して大の字に つよし(由) 14 胡坐居に抱かれし吾子や初ビール 由宇(ま) 15 出番まで姫はダービー占へり まどひ(鋼) 16 帰省子のお袋の味ビシソワーズ 由宇 17 万緑やこのたよりなき列島に まどひ 18 盆の里二泊となればお帰りを 由宇 19 ハワイより帰つて来れば梅漬かる 春休 20 揉め事を三つ収めて祭り笛 まどひ(◎ど・鋼・春) 21 柏葉紫陽花咲くや柵越えにけり 佐津子(鋼) 22 希少なる朝顔苗を夜盗虫 つよし 23 茄子胡瓜ミニ菜園のにんきもの 佐津子 |
【 梅原佐津子 選 】 ○02 口に受け 水槽の中の亀の様子と違い雨の粒を呑む様子は一味違う可愛らしさを感じます。 ○06 羅を お芝居の場面、うすものとドーラン化粧の濃さの取り合わせが良いと思います。 ○03 ビニールの よくこの様な場面で楽しい句ができますネ*私もみならいます。着眼の良さと申しましょうか。 【 金子由宇 選 】 ○08 表札の 湿って朽ちかけた表札(でしょうか)をなぞっていたら、なめくじりが… いじいじしますが「なぞり」と「なめくじり」の語呂がいいです。 ○11 黒南風や 黒南風は、くろかぜと読みましたが、黒潮から吹いてくる風でしょうか。暖かく湿った海風、魚、男の飛び散る汗がないまざって、豆州太鼓が追い討ちかけて、ぷんぷん匂います。 ○13 簾越し 簾越しに見る夏の日差しを、昼を灯してとは素敵な表現です。ほの暗い座敷は心地涼しく、大の字に寝転べばリラックス。今時の昼下がり、贅沢なひと時と味わいました。 次の二句も選びたいです。 05 いかがはしき 手を休めて読みふけったりしていませんか? 私の町では白いポストを設置し、この中に入れるよう呼びかけていますが。 10 夕蛍 畦には蛍袋が2本ほど刈り残されていて、こんな光景、私にも覚えがあります。 【 鋼つよし 選 】 ○05 いかがはしき 草むしりでは、缶やタバコの空箱類が捨ててあるが いかがわしき雑誌というのも世相の反映か。 ○15 出番まで 馬の出番なのか、姫の出番なのか迷うところある。内容が面白い。 ○20 揉め事を 揉め事が三つというのが良い。 ○21 柏葉紫陽花 咲くや超えるという措辞でいただいた。 【 舟まどひ 選 】 ○05 いかがはしき 長年草むしりをしていなかった空き地を町内会かなにかであちこちしているようです。どんな場所かが見えてきます。 ○08 表札の なめくじの動き、存在感がよくでていると思います。 ○14 胡坐居に きわめて平凡そして誰でも経験のあることですが、温度や皮膚感覚、重さなどそこにいるように感じられます。 【 渋川どんぐり 選 】 ○06 羅を うすものの人。見かけなくなりましたね。ドーランとは、踊りの発表会かなんかかしらん。貴重な映像です。 ○08 表札の 表札、てらてら光っちゃってるな。カタツムリの様に家を持たない、なめくじが、表札に・・・というのも、なんだか、カナシイかな。 ◎20 揉め事を 読んでてスカッとしました。いいなあ。土地にしっかり根付いた人。憧れます。私、揉め事起こすんなら、得意なんだけど。 この他に、なるほどと思った句 09 境界の 夏の蓬ってねえ、すごい生命力なんだよねー。丈は、へそより高いわ。横には広がるわ。 17 万緑や 自然のなかって、浮世の憂さを忘れます。ほんと、助けられてます。でも、このご時世!でも、この緑!!ありがとう。 【 山田つばな 選 】 ○02 口に受け そうなんですか・・・知らなかったです。 ○10 夕蛍 蛍の美しさ、切なさがひびいてきます。 ○12 ふりかえり 本当にそういう感じだと思います。 【 小川春休 選 】 ○03 ビニールの 即物的な表現ながら、「梅雨」の一語の働きで、溝の空気がしっかり伝わってきます。どこかシュールな景。 ○10 夕蛍 草を刈ったことによって、昨日より一層蛍が良く見えるということ。些細な発見を率直に句にしているところに好感を持ちました。 ○20 揉め事を これぞ祭りですねー。揉め事を収めたのは、やっぱり貫禄のあるおっちゃんなんでしょうね。 01 うらおもて 上五中七と下五がどちらとも人事なので、句が小さくまとまってしまった感じがします。下五は人事から離れた方が良いような…。個人的な好みかもしれませんが。 11 黒南風や 気になった句なのですが、「太鼓」が生臭いというのが一体どういうことかよく分かりませんでした。 13 簾越し 「大の字」になって昼寝をするのなら、明かりを消すような気もするのですが…(電気が点いているだけでも、やや暑さが増す気がします)。ちょっと合点が行きませんでした。作者に聞いてみたいところですね。 17 万緑や ちょっと観念的すぎるかなぁ、という感じです。 18 盆の里 川柳っぽい感じになっています。あと、原因・結果が入ってしまうと、読み手が想像力を働かす余地がなくなってしまいます。もっと何でもないようなところに「作者ならではの発見」が隠れているはずです。 21 柏葉紫陽花 「や」「けり」と、切れが二つになっています。途中で切るよりも、「柏葉紫陽花柵越えて咲きにけり」とした方が、柏葉紫陽花の勢いが句にも表れてきそう。 |
来月の投句は、7月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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