ハルヤスミ句会 第六十回
2005年10月
《 句会報 》
01 しっかりと葉にしがみつき秋の蝶 つばな 02 まるまつて葉擦れに落つる菜虫かな つよし(由・山) 03 行舟の岸根をうつや月の海 佐津子 04 水澄むや底に芥を淀ませて まどひ(ど・山) 05 この箱のかなり窮屈黒葡萄 春休(由・ま・鋼・ど) 06 あばら木にあくたもくたや秋出水 由宇 07 銅像の首まで浸かり秋出水 春休(ま) 08 ほらと声して毬栗の飛んで来る どんぐり 09 夕照の峰や黄金のススキ原 由宇 10 秋祭り果ててオロチは若者に どんぐり(山) 11 刈田道噛みきさうな犬連れて つよし(春) 12 鉄道の上歩き来て賢治の忌 つばな(佐・鋼) 13 秋茄子の花なほたんと朝日射す つよし 14 霧の海深き山並みけふは晴れ どんぐり 15 胃カメラのつきそいするや金木犀 佐津子(春) 16 差しくるる秋の日傘や吾妻橋 まどひ 17 芋掘りや爪の黒きを見せあふも 春休(佐・ま) 18 山の辺の古道に柿のあまたかな 由宇 19 しんまいや新炊飯器あとにふん 佐津子 20 葭群れてさざ波暗くなりにけり まどひ(佐・春) 21 てっぺんに烏ついばみ柿熟る 佐津子 22 垣根より猫が覗きし秋の暮 つばな 23 よく切れぬ鋏叱るやそぞろ寒 春休(由・鋼・◎ど) |
【 金子由宇 選 】 ○02 まるまつて 掴み損ねると丸まって奥に落ち、除去するのが難しいんです。今朝も気持ちワルーといいながら虫取りしました。 ○05 この箱の 大きな葡萄の実。つぶれてましたか。 ○23 よく切れぬ 切れぬ鋏を叱るが季語によくマッチして、暮れ易い日脚に焦る気持ちまでもが感じられます。 次の句も私の実体験ですので同感できます。 04 水澄むや 水底の芥、上澄みの透明感が際立ちます。 15 胃カメラの 検査の緊張を和らげる甘い匂いが漂ってきます。 14 霧の海 そうなんですが、霧はなかなか晴れないので日照時間が減るのです。 【 梅原佐津子 選 】 ○12 鉄道の 鉄道の上を歩くとは?いったいどの様な時なのでしょう?賢治は「銀河鉄道の夜」を書いていますがそのような気持ちなられたのですか?それとも事故で電車が止まり歩く事になったのでしょうか?とても意味深い句でした。 ○17 芋掘りや お友達と芋掘り、お芋は沢山掘れましたか? ○20 葭群れて 秋のもの悲しさを感じますがあたりの広々とした景色も感じられ、じーと見つめていたい*こんな一時を私は欲しい。 【 舟まどひ 選 】 ○05 この箱の そうそう葡萄って本当に窮屈そう。お皿の上でもそうなのだから箱に詰められてるのは、よく潰れないと思うほど。まして黒葡萄なら、もーこみあちゃって、こみあちゃって。 ○07 銅像の これ感じが出てますねー。あらゆる浸かったものの中から、銅像でしかも首。これ以上のものちょっと思いつきません。 ○17 芋掘りや 子供がカキ氷の舌を見せ合うという句がありましたが、これは大人もやりそう ですね。汚れた爪を見せ合ってもっと楽しくなるのです。 【 鋼つよし 選 】 ○05 この箱の つぶれそうな葡萄をうまく表している。 ○12 鉄道の 昔は歩いたけれど、今はあまり見かけない。忌日の句はツキスギがいいというから。 ○23 よく切れぬ そぞろ寒が合っているのではないか。 ほかに、 07 銅像の 佳句だが、銅像の首を写生して「浸かり」を置き換えられたらと思う。 16 差しくるる 吾妻橋は三句にいれるかどうか迷った。 17 芋掘りや 「みせあふも」は「も」でなければならないのかどうか判断がつかない。 【 渋川どんぐり 選 】 ○ 04 水澄むや 水遊び、好きでした。底には、いろんなものが沈んで重なっている。その上を水は流れて行くんだな。 ○ 05 この箱の これはこれは立派な葡萄。しばらく見とれていましょう。 ◎ 23 よく切れぬ ほんとに叱りたいのは、自分、かな。 他に、取りたかった句 09 夕照の そうそう、なんつっても、すすきは、黄金なんです。美しいのだ。 12 鉄道の上 鉄道の上も鉄橋の上も歩いた、若かりし頃。とぼとぼと・・。そうか、銀河鉄道と思えばよかったのか。 15 胃カメラの ついて来てと言われたのか、ついて行くと言ったのか。大切な人なんですね。 【 山田つばな 選 】 ○02 まるまつて 生暖かい菜虫の感触を思い出しました。 ○04 水澄むや どんなに濁っていても秋の水は澄むから不思議です。 ○10 秋祭り きっと格好良い若者でしょう。 他に好きな句 05 この箱の はちきれそうな葡萄が魅力的です。 08 ほらと声 勢いがあると思います。 09 夕照の 美しいです。 15 胃カメラの 病室の匂い、柔らかな日差し、時計の音を感じます。 20 葭群れて 寂しい感じがよく出ています。 【 小川春休 選 】 ○11 刈田道 稲が刈られた後の、何とも言えない寂寥感。「噛みきさうな犬」と響きあってますね。 ○15 胃カメラの 胃カメラの付き添いをしてくれた人も、金木犀のような雰囲気の方だったのでしょうね。そんな人が付き添いなら、胃カメラ検診も安心して受けられそう。 ○20 葭群れて 内容は何でもないことでも、それを格調高く言うことで、非常にイマジネーションに富んだ句になることがあります。この句がそうです。やっぱり型の力、定型の力は(うまく引き出すことができれば)すごいものがありますね。 02 まるまつて この句も採りたかったですが…。四句選ならば、といったところですね。 06 あばら木に 「あくたもくた」が良いですね。なかなか良い句だと思います。 08 ほらと声 発想は良い。ただ、どうにも散文的な感じが否めない。散文的なために、句にスピード感が出てきません。「ほらと声毬栗飛んで来たりけり」これでも意味は十分通じますし、リズムも良くなりました。 10 秋祭り 良い句だからこそ言いたい。「秋祭り」の「り」は要りません。ここは「果てて」ではなく「果つや」と切って欲しい。「オロチ」は「大蛇」と書いてルビを振った方が雰囲気が出そう。「秋祭果つや大蛇(おろち)は若者に」 12 鉄道の 良い雰囲気ではあるのですが、「鉄道の上」ではなく「線路の上」と言った方が正確では? 16 差しくるる 上手い句。しかし私は、上手い句には厳しいのです。景としてきれいだし、ことばのしらべも良いのですが、きれいすぎて面白味に欠ける気もします。 19 しんまいや 「新炊飯器」とは面白い目の付け所。このテーマで、たくさん句を作ってみることをオススメします。もっと面白い句が出てきそうです。 21 てっぺんに 「一句に動詞は一つ」という人がいます。一句に動詞が複数あると、どちらが句の中心なのかわかりにくく、散漫な句になりやすいからです。この句についても「ついばみ」と「熟る」のどちらがより作者の言いたいことなのか、わかりにくくなっています。どちらかに絞ってみてください。 |
来月の投句は、11月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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