ハルヤスミ句会 第六十一回

2005年11月

《 句会報 》

01 登らんとしてバス唸る紅葉坂    春休(ど)

02 白露のおくれさきだつ産土に    由宇

03 紅葉狩りかけだす少年もうみえず  佐津子(ど)

04 本屋に閉店貼り紙惜しむ秋     由宇(佐)

05 次々と烏の鳴くや畳替       まどひ

06 団栗の実を拾いては駒となす    佐津子

07 焼肉の列の長さや芋煮会      つよし

08 大根と葱と母ちやん来たりけり   阿昼

09 呼ばれた気しつつに新酒またふくむ 春休(由・佐・ど)

10 芋煮椀雨粒入りを奉る       つよし(ま)

11 大輪の菊花ささえる輪っぱかな   佐津子(ま)

12 今朝冬の虹だ虹だと爺寄つて    どんぐり

13 水底の落葉池の面の落葉      まどひ

14 指一本あまるお靴や落葉掃     つよし(由・春)

15 下車せんと着ぶくれどもを掻き分けて 春休(阿・ま)

16 冬麗や中州の砂の白々と      どんぐり

17 はるばると庚申庵の炬燵まで    阿昼(鋼)

18 障子まだ開けられざれば這ひまはり 春休(阿・由・佐・鋼)

19 神在や潮風に耳すましをり     どんぐり

20 階上のくしやみ聞こゆる炬燵かな  阿昼(鋼・春)

21 お二階はやつと寝たらし玉子酒   まどひ(阿・春)

22 サイボーグの進捗知るや神無月   由宇

23 草紅葉しばらく選びて押葉かな   佐津子




【 中村阿昼 選 】
○18 障子まだ  やっと這い這いできるようになった子供なんでしょうね。つかまり立ちできるようになったら、障子も無事ではすまなさそう。
○15 下車せんと  「着ぶくれども」という言い方が面白い。掻き分けている本人も着ぶくれどもの一人。暖かい車内でついうとうとして乗り過ごしそうになってあわてているのかも。
○21 お二階は  二世帯住宅かマンションか。ちょっと迷惑なお二階にそう腹を立てているわけでもなさそうに思えるのは、「玉子酒」のあたたかさのせいなのかも。
その他気になった句
12 今朝冬の  「今朝冬の虹」っていいことありそうですね。「爺寄って」は、「爺ちゃんが寄っていって言ってくれた」ってことでしょうか。ちょっとわかりにくかったのが残念。
14 指一本  「お靴」というのは、小さな子供の靴?落葉掃を手伝っているのでしょうか?それだと「や」で切っちゃうとわかりにくいのでは。
22 サイボーグの  携帯電話もネットでのお買い物も、昔はSFの世界の話だった。いつかサイボーグが俳句で当たり前に詠まれる日も来るのでしょうか。「神無月」がちょっと理に落ちている感じはありますが、題材が面白かった。

【 金子由宇 選 】
○09 呼ばれた気  例えば団体旅行のときなど、こんな憎めない人結構います。
○14 指一本  お手伝い、「お靴」にかわいらしさがにじみ出て。 
○18 障子まだ  語呂の良くない「開けられざれば」が素晴らしいです。赤ん坊が活写されて、障子を開けてあげたくなります。大人(パパorママ)の幼を見守るあったかい目、ほのぼのします。
その他 
01 登らんと  目に紅葉、耳にエンジン音。紅葉坂は歩きがおすすめです。
07 焼肉の  誰しも違うテイストに惹かれるものですよね。

【 梅原佐津子 選 】
○04 本屋に  何処も同じ傾向が見られ残念です。誠に惜しい限りです。
○09 呼ばれた気  新酒の味わい深く、一度口にしたなら小々のことなど聞く耳を持ちたくないのでしょう*またふくむが、感情豊かで好きでした。
○18 障子まだ  開けられざれば、に子供の幼さの表情が感じ取られ、そばで見守る親のぬくもりも感じられ良い句に思えます。

【 舟まどひ 選 】
○10 芋煮椀  目上の方にさし上げたのでしょうかね。川原の様子、人数まで雨粒からイメージできます。
○11 大輪の  輪っぱがすごく面白い。ホントあれは何て言うのでしょうかね。菊の大きさや色、数等読み手でそれぞれ違う景になる所がとてもいい。特選です。
○15 下車せんと  自分も着膨れなのにね。人の着膨れって確かに鬱陶しい。この感じよくわかります。

【 鋼つよし 選 】
○17 はるばると  「はるばるときて二月の銀閣寺」という句があったが銀閣寺の句とくらべて炬燵なる俗語がなんとも良い。
○18 障子まだ  這ひまはりの下五が良い。
○20 階上の  俗な風景が良い。
選外で惹かれたのが次の三句
08 大根と葱と母ちやん来たりけり   
09 呼ばれた気しつつに新酒またふくむ 
13 水底の落葉池の面の落葉      
落葉の句「みなそこのおちばいけものおちば」「みなも水面」
として「池の」のを削除したら自由律の感じで良いように思った。

【 渋川どんぐり 選 】
○01 登らんと  紅葉の山々が連なる。大きな景色が思い出されます。私もそのバスに乗らねば。
○03 紅葉狩り  少年は、走るんだな。急坂でも、山の上でも。今のうちだぞー。走っとけよー。もうみえず・・・。
○09 呼ばれた気  あー、やっぱり、とってしまった。あまりに美味そうで。たぶん、ほんとに呼ぶ人がいたんでしょう。でも、新酒だ。
この他に、とりたかった句
10 芋煮椀  川原に降り出した雨。でも、それもいいかも。
18 障子まだ  そのうち、少し障子開けて、そーっと顔をのぞかせるようになりますね。楽しみ。

【 小川春休 選 】
○14 指一本  子供の足はすぐ大きくなるので、やや大きめの靴を買うもの。それを「指一本あまるお靴」とは上手い表現。「落葉掃」も昔の童謡のようなメルヘンを漂わせていて良いです。
○20 階上の  「狩の宿階下激しき口喧嘩」(辻桃子)という句もありますが、この句もなかなか。階上のくしゃみが聞こえるほどの静かな夜、もしくは、建物中に響きわたるほどの大くしゃみ。
○21 お二階は  「階上」と「お二階」の違いをどう読むか。あえて言うなら「階上」の人はきっとあんまり親しくなく(マンションの1階上の住人、とか)、「お二階」には二階の人への敬意やら親しみが感じられる(たとえば民宿における客や下宿人)。こういう違いに気を配りながら句を作りたいものです。玉子酒も良い感じ。
03 紅葉狩り  良い句だと思うのですが中八が気になる。「かけだす」を変えて「紅葉狩少年駆けてもうみえず」のようにすれば五七五になります。もう一度推敲してみてください。
04 本屋に  雰囲気は好きなのですが、上五の字足らずと、季語と本屋の閉店がツキスギのようで気になります。
06 団栗の  何をどうしてこうなった、という報告になってしまっています。
10 芋煮椀  芋煮会、雨天の場合中止、ただし少雨なら決行、といったところでしょうか。「奉る」も決まっていて、風格のある句。
12 今朝冬の  「寄つて」がちょっとわかりにくいのが残念。立冬の虹と爺の組み合わせは面白いのですが。
13 水底の  「一月の川一月の谷の中」(飯田龍太)という句にあこがれて、私もこういう対比・リフレインの句をいろいろと作ってみましたが、けっこう難しいもの。この句ももう一つすっきりしきれていない感があります。もう一度推敲を!
16 冬麗や  中七下五の清浄な感じとこの上五とでは、きれいすぎるようです。あと、句に動きがないのも気になるところ。
17 はるばると  庵の主の挨拶句でしょうか。何にもないところだが、まあ炬燵にでも入っていってください、と。味のある句。
19 神在や  個人的好みかもしれませんが、「神在の潮風に耳すましけり」としたいところ。「神在」という季語はなかなかに難しいですね。
22 サイボーグの  上五中七の意外性からすると、下五がおとなしすぎる嫌いがあります。下五でもおどろかせてほしい。でも突拍子もない季語だと句自体がバラバラな印象になってしまう。考えどころです。

来月の投句は、12月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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