ハルヤスミ句会 第六十二回
2005年12月
《 句会報 》
01 ふかふかの畑の産なる泥の葱 つよし 02 なるほどと今朝の一口納豆汁 あたみ 03 かたければ煎餅を茶に翁の忌 春休 04 生真面目な主の顔や花八手 まどひ(ど) 05 麦麹かすかに匂ふ障子かな どんぐり(由・鋼・春) 06 遮断機の長きをコートの襟立てる 由宇(あ・ど・春) 07 老いてなほダンスパーテイクリスマス あたみ(ま) 08 同柄のマフラー人とすれ違ふ つよし(あ) 09 しやぶしやぶのたれ薄まれば夜の更けて 春休 10 役員の率先休暇や雪囲 つよし(由) 11 餌をまけばおつくさうに冬の鯉 まどひ(あ・ど) 12 冬鴎しばし振子の如く飛ぶ どんぐり(鋼) 13 渡船にて鯛つり人の着ぶくれて あたみ(春) 14 家鳴りして夜を急ぐや雪起こし 由宇 15 風邪の身の全力をもて饂飩吸ふ 春休(由・ま) 16 殺伐のニユースまたもや身の凍る 由宇 17 脱ぎし物しかと畳みて風邪を病む 春休(ま・鋼) 18 姪の描きし似顔絵を貼る冬の壁 どんぐり 19 寝静まる白き障子でありにけり まどひ |
【 金子由宇 選 】 ○05 麦麹 実家の亡き祖母の香り、郷愁にかられます。 ○10 役員の 役員の庭の立派な植木、最近の植木屋さんの日当、高いらしいです。 ○15 風邪の身の 風邪ウイルスに侵された身、萎えた体力食欲。気力をふりしぼってすするこの「饂飩」、喉越しも味も良くなさそう。漢字の「饂飩」がぴったり。お大事にと言いたくなります。 次の句も好きです。 03 かたければ 若者も、試してみてください。これが結構おいしいのです。老いは、歯、目、耳の順にくるとか。 【 梅原あたみ 選 】 ○06 遮断機の 冬の寒さにたえながら遮断機の上がるを待ちわびる様子が襟立てるに感じられました。 ○08 同柄の これは不思議と単純なようですが、そうでないかも*道行く人にも一つの俳句が出来てしまうなんて素晴らしい着眼のように思いました。 ○11 餌をまけば おつくさうに*に注目し勉強になりました。鯉はおつくさうでも餌を食べない事には? ※ 梅原佐津子さんは、梅原あたみさんに俳号を変更されました。(春休注) 【 舟まどひ 選 】 ○06 遮断機の 雰囲気はよく出てると思いますが、「長きを」をもう少し工夫すると、分かりやすくなると思います。 ○15 風邪の身の なんと言っても「全力をもて」がうまい。渾身の饂飩喰いですね。 ○17 脱ぎし物 言い回しが面白い。俳味があるというか、端正なおかし味です。 【 鋼つよし 選 】 ○05 麦麹 ご商売のお屋敷ではあります。戸外の寒さや季節を感じます。 ○12 冬鴎 振り子は良いけど、「如く」は如くすぎて「やうに」とか工夫があればもっと良いと思う。 ○17 脱ぎし物 今回の特選。下五のひねりが効いている。 選びたかった句 06 遮断機の 07 老いてなほ 15 風邪の身の 16 殺伐の 同感の句だが、17文字でどう表すか、時事的な事柄では、短歌に遅れをとっている気がしている。 【 渋川どんぐり 選 】 〇04 生真面目な 花八手のとぼけた風情。対照的な主の顔。でも、きっと、いい人だと思われます。 〇06 遮断機の 開かずの踏切があるそうな・・・。何度も、いくつも、通りすぎて行く車輛。凍えます。これは。 〇11 餌をまけば 寒い。動きたくない。めんどくさい。あー、でも、飯は食わねばならぬ。なにか、他人でないような、鯉。 このほかに、とりたかった句。面白かったです。 10 役員の 休暇をとって、雪囲。これぞ正しい上司の姿だ。きっと。 13 渡船にて 神楽の演目「鯛釣り恵比寿」を思いました。ふくよかで、にこやか。でも、釣りのためなら、寒風もなんのその。 【 小川春休 選 】 ○05 麦麹 非常に雰囲気のある句。「障子」がとてもよく効いています。 ○06 遮断機の おそらく、「遮断機が下りたまま中々上がらない」ということを「遮断機の長き」と表現されたのでしょうが、ちょっと曖昧な表現になっています。「遮断機(の棒)自体の長さが長い」とも読めます。推敲してすっきりするともっと良くなりそうです。 ○13 渡船にて 中々良いと思うのですが、「にて」の使い方など、ちょっと散文的なところが気になりました。「着ぶくれていざ鯛つりの船へかな」などなど、いろいろな言い方を考えてみて下さい。 01 ふかふかの 「ふかふかの」が「畑」に掛かるのか、「泥」に掛かるのか、「葱」に掛かるのかがはっきりしません。 04 生真面目な 「花八手」も中々良い雰囲気なのですが、もうちょっと主と客との関係や背景が見えてくる季語の方がわかりやすいと思います。わかりやすくしたから良い句になるかというと、必ずしもそうでないのが俳句の難しいところですが…。 11 餌をまけば 「冬で寒いから、鯉も億劫そう」という理がついてしまっています。「冬の鯉」とまとめてしまわずに、季語と鯉とを離せば、少しは理があからさまじゃなくなると思います。 12 冬鴎 目の付け所は良いのですが、「しばし」で必要以上に時間の経過が盛り込まれています。これを言わずに一句にしたいところ。 16 殺伐の 気持ちは分かりますが、「身の凍る」ではストレートすぎる気がします。 18 姪の描きし 「冬」である必然性が弱いようです。「姪の描きし似顔絵貼るや年迎」などとした方が、イメージが広がりそうです。 19 寝静まる 寝静まった頃の障子の白さが鮮やかに見えるということは、冬の月の光をさえぎるものがないのでしょう。 |
来月の投句は、1月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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