ハルヤスミ句会 第六十三回

2006年1月

《 句会報 》

01 一升のお供え囲み講釈師      あたみ

02 神楽見に布団と酒を担ぎ来て    どんぐり(ま・鋼・春)

03 コートより手の出てをらぬ子供かな 春休

04 初雪やこの坂道をこの車      あたみ

05 でこぼこの雪道市内電車来る    つよし

06 立てつけの悪しきを蹴るやしづり雪 由宇(あ・ど・春)

07 着衣始早起きせねばと言い聞かせ  あたみ

08 乳呑児に年玉出すや受け取りぬ   まどひ

09 わが家系屠蘇はにがてぞもてあぐむ あたみ(鋼・ど)

10 おことばを春衣の薔薇にたまはりぬ まどひ(あ・ど)

11 みづうみに元日の月うつり初め   春休

12 雪晴れや雪を見舞はる木下道    由宇

13 紺暖簾雪の雫に濡れて黒      春休

14 高だかと宿り木を指しスキーかな  どんぐり(由)

15 冬帽を脱がん脱がんと赤子かな   春休(由・ま・鋼)

16 初護摩をたつぷり受けて日本髪   まどひ

17 球のごとでんぐり返つて初日かな  由宇

18 鏡餅まずは割れ目に包丁を     あたみ

19 脳天を抜くに余れる大氷柱     つよし(由・春)

20 少しだけ凍湖のほどけ舟着き場   どんぐり

21 平らかに深雪にうもれ野菜畑    つよし(あ・ま)




【 金子由宇 選 】
○14 高だかと  あれを見て!とストックで宿り木を指してのスキー。青空、銀世界、枯れ木に緑。巧みに滑るスキーヤーの姿。爽やかです。
○15 冬帽を  脱がんの繰り返しは、あかんぼうがイヤイヤしている可愛い仕草。長じても子にとって親心は、時に大きなお世話のようで。
○19 脳天を  “脳天を抜く”に、切っ先鋭い刃物のような氷柱を感じます。飛騨高山に住んでいた頃、軒先にびっしり大氷柱が並んでいました。今冬の凍てつく寒さにぴたりと符合して、素晴らしい。
その他好きな句です。
08 乳呑児に  お正月の普遍的なこんなやりとり、ほのぼのと笑みがこぼれます。
16 初護摩を  伝統的な行事に日本髪がよく合っています。
03 コートより  おさがり?それとも来年も着られるように? 

【 梅原あたみ 選 】
○10 おことばを  薔薇の模様の晴れ着は成人式のおことばを有り難く聞き、華やかな一日となられた事と思いつつ、あれこれと想像しました。
○06 立てつけの  雪景色、しづり雪,農家の冬景色が充分感じ取れ好きな句でした。
○21 平らかに  これも雪景色、でも生活感がにじみ出ています。深雪にうもれた野菜は又特別美味しさを増し、きっと鍋料理には申し分ない事でしょう。

【 舟まどひ 選 】
○02 神楽見に  毎年見ていてもう手馴れたものなのでしょうね。必要なものがよく分かってる。その土地の寒さ、そして冷えた体を神楽を見ながらお酒で暖める楽しさがつたわってきます。参加したくなります。
○15 冬帽を  まだ喋れない赤ちゃんが鬱陶しい帽子を全身を使って取ろうとしている様子が「脱がん脱がん」で生き生きと表現されています。やはり冬帽がいいと思います。
○21 平らかに  見慣れた光景のようですが、そこが野菜畑だと知っているのは、やはりその土地の人。となればただの広々とした雪景色にも特別な愛情が湧いてきます。

【 鋼つよし 選 】
○02 神楽見に  
○09 わが家系  
○15 冬帽を  
※ 鋼つよしさん体調不良のため、選句のみ聞き取りました。(春休)

【 渋川どんぐり 選 】
〇06 立てつけの  是がまあついの栖か雪五尺・・・一茶の世界ですなあ。しずり雪をこんなに楽しく詠めるなんて!
〇09 わが家系  優しいご家族の表情が浮かびます。あのー、そんな時は、我が家へ持ってきて下さい。なんぼでも飲みます。
〇10 おことばを  春衣。薔薇。華やかな年明けですね。どきどきします。この後の二人のやりとり、聞こえてきそうです。
この他に、とりたかった句です。
16 初護摩を  煙は別嬪さんの所へ行くと聞きます。初春のめでたさ、娘さんの美しさ。「たっぷり」が、いいなあ。
21 平らかに  「うちの野菜、雪の下で食べられん・・」 嘆きも聞き、大変とは思いますが、静かな雪の世界。憧れでもあります。

【 小川春休 選 】
○02 神楽見に  広島では観光資源として神楽に力を入れていて、都心部の広島城でも神楽をしていますが、やはりそういう神楽は、生活に密着している神楽とはちょっと違うんですよね。その点この神楽は、生活に密着した神楽っていう感じがして良いです。
○06 立てつけの  この生活感は良いですね。あるべきところにあるべきものがある、という感じで、ほっとする句です。
○19 脳天を  この氷柱の認識の仕方は意外性とリアリティがありますね。雪も氷柱も、ぱっと見は綺麗でも、人間の命を奪うこともあるのですから。
04 初雪や  「この」が二つ使われていますが、「この」の指すものがどんなものかがちょっと読み切れませんでした。
09 わが家系  ほんのりとしたユーモアの漂う良い句だと思います。
12 雪晴れや  「雪を見舞はる」とは、雪玉を投げられたということでしょうか? ちょっと分かりにくいかな?
14 高だかと  さわやかですね〜。松任谷由実風のスキーの情景。
16 初護摩を  好きな句なのですが、「初護摩をたつぷり」か「たつぷりと初護摩」が良いか、ちょっと考えました。個人的には、後者の方が優れているように思います。しらべがゆったりしていて、また「日本髪」に焦点が絞れた句になるように思います。
18 鏡餅  しっかり物事を言葉にしていこうという姿勢は良いと思います。ただ、まだ「この作者ならでは」の表現には到っていないようです。まずは、一つの題材で、たくさんたくさん句を作ってみてください。だんだんと、自分が書きたかったもの、自分ならではの表現が見えてくるはずです。
21 平らかに  とても良い雰囲気なのですが、「野菜畑」はちょっと言い方が雑な気がします。「冬菜畑」などの方が良いのでは?


来月の投句は、2月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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