ハルヤスミ句会 第六十五回

2006年3月

《 句会報 》

01 松の葉に水気たつぷり名残雪   つよし(あ・ま・春)

02 ほろ酔いの星はすばるや冴返る  由宇

03 春雨にじんわり髪の膨張す    春休

04 ウミネコか戀の猫かと朝の屋根  どんぐり

05 梅散つて赤子の眉毛生え揃ふ   阿昼(あ・春)

06 耕して忘るるあれやこれやかな  春休(◎ど・由・鋼)

07 淡雪やかがめば深く象の皺    まどひ(阿・鋼・ど)

08 おしゃべりの別れたがきを春の雷 つよし(ど)

09 磯の香の若布祭りやのぼり旗   あたみ

10 春光の長きトンネル入りにけり  由宇

11 ここよりは赤の列なりチューリップ まどひ

12 接待におはれ大鍋わかめ汁    あたみ(阿・春)

13 擂り鉢の底ちふ浜や木の芽吹く  どんぐり(由)

14 若布干す漁師小屋には顔なじみ  あたみ

15 銭湯のがらんと乾く紀元節    まどひ

16 はつぴ着て若布汁をば味見する  あたみ(ま)

17 春風にゆらりだらりや古木の実  つよし

18 ふきの芽の立つなり峡に一里塚  由宇

19 願懸けも今日までと言ふ蕗のたう どんぐり(阿・由・ま)

20 赤ちやんを春の障子の傍に置く  阿昼

21 雛あられさくと消ゆるや舌の上  春休

22 涙目で眠る赤子と春炬燵     阿昼(あ・鋼)

23 天麩羅の蕗薹しやりとほろにがし あたみ

24 さくら餅提げたるすずろ歩きかな 春休



【 中村阿昼 選 】
○07 淡雪や  動物園の春はまだ浅く、淡雪の降る灰色の空の下、灰色の象がゆっくりと足を折ってかがむ姿が目にうかびます。
○19 願懸けも  願掛けも今日までだからと出かけたその日は、きっとお天気もよく、蕗の薹がそここに見かけられる参道を歩くのもなんとはなしに心がはずむことでしょう。
○12 接待に  採りたてのわかめでお接待、海辺の春祭りでしょうか。まだ少し冷たい海風の中、体も心もあたたまりそうなわかめ汁ですね。
ほかに好きだった句
17 春風に  ゆらりだらりがいかにも春風の中という感じ。何の木か気になります。
24 さくら餅  さ行の韻がかろやかで春らしいです。

【 金子由宇 選 】
○06 耕して  鍬持て大地と会話、不思議と癒され無心になれるので、素直に共感できます。
○13 擂り鉢の  うす緑した明るい山が浜を包囲し、浜がますます小さく見えて。絵のような光景が浮かびます。
○19 願懸けも  古い社か野のお地蔵様でしょうか、寒さの中何度も願掛けて。今はもう蕗の薹芽吹く春、誓願成就の言葉ありですね、きっと。
その他好きな句です。
17 春風に  ゆれてる木の実は枯れ色、♪緑のそよ風いい日だな… のどかな一景。でも春の風は結構強くて花粉が…。

【 梅原あたみ 選 】
○01 松の葉に水気  名残雪と松の木、松の青さ、その葉に白と、とても美しい景色がよみがえります。
○05 梅散つて  赤ちゃんの愛らしさとご家庭の幸せを深く感じられわかりやすくて好きです。
○22 涙目で  この句も赤ちゃんの様子がとても良く解りこんな句を私もその昔作りたかったですネ*うらやましいかぎりです。

【 舟まどひ 選 】
○01 松の葉に  いつもはカサカサと乾いたイメージの松の葉が水気たっぷりと言ったことで存在感がでてきました。名残雪がよいかということが分からないのですが、色彩的に美しいと思いました。
○16 はつぴ着て  「をば」がとてもいい。祭りの世話役の弾んだ心、浜のようす、参加したくなります。 
○19 願懸けも  満願の日ほっとした気持ちを、喜んでくれているように蕗のとうが芽をだしました。よかったね。よかったね。

【 鋼つよし 選 】
○06 耕して  頭より体が解決してくれそう。
○07 淡雪や  象に自分の気持を託したような味がある。
○22 涙目で  涙目への見所がよい。
4句目、5句目
12 接待におはれ大鍋わかめ汁
05 梅散つて赤子の眉毛生え揃ふ
接待、梅散るも写生の効いた佳句ではないか。
てんぷらの蕗の薹・・ひとひねりがほしい。

【 渋川どんぐり 選 】
◎06耕して  私は耕しません。でも、此度一番ひかれた句です。「ストレス解消は畑だよ。」とでも言う様な軽い詠みっぷりですが、「耕すこと」「日々のあれこれ」の重さを感じました。
○07 淡雪や  象と雪。キリマンジャロでもない所で、本当なら、出会うことは無かったのかもしれないのに・・。と、あらためて思いました。淡雪、皺にしみじみ。
〇08 おしゃべりの  たぶん旧友。たぶん女性二人。なんでもない会話が弾みに弾んで、止まらない。雷でも鳴ってくれないことにはねー。
この他にとりたかった句です。
03 春雨に  笑う句ではありません。じんわり、悲しい句です。天然パーマで雨人間の私にとりましては・・・。草木を育てる春雨よ。私の髪はほっといて。
09 磯の香の  春はね、何と言ってもワカメなんです。香りが何とも言えません。若布祭、行きたい。のぼり旗が私を呼んでいる。何処ですか?教えてください!
20 赤ちやんを  幼なは、あたたかく、あかるいところへ。

【 小川春休 選 】
○01 松の葉に  質感・空気まで伝わってくるような写生句ですね。
○05 梅散つて  穏やかな良い句ですね。「梅散るや」もしくは「散る梅や」などとして、上五で切った方が、句に広がりが出るかもしれません(その場合は「生え揃ふ」より「生え揃ひ」か?)。
○12 接待に  余計な言葉は一つもありません。とにかく勢いが良い。俳句はこれで良いのだと思います。
07 淡雪や  動物園の象。南国出身の象にふる雪。「象の皺」という一部分に焦点を絞ったことで、句にリアリティが生まれています。ただ、気になったのは「かがめば」という動きが、この句に必要かどうか…。「淡雪」と「象の皺」だけで十分なのではないか、「かがめば」という動きは要らないのではないか…。
08 おしゃべりの  ちょっと季語が合ってないような気がします。上五中七の内容に対して、季語がちょっと重いかな。
13 擂り鉢の  この句も余計なことは言っていませんが、十分味のある句になっていると思います。
14 若布干す  この生活感は良いですね。個人的には、尾道を思い出しました。
16 はつぴ着て  気持ちの弾みが「をば」に表れてますね。楽しい句です。私なら、下五「味見せむ」としたいところですが、原句とどちらが良いかは判断の分かれるところ。作者の気分にしっくり来る方でどうぞ。
17 春風に  「ゆらりだらり」が楽しい。春らしい句です。
18 ふきの芽の  姿勢正しい句です。この姿勢の正しさを持ったまま、さまざまの身近な出来事をたくさん句にしていってください。
19 願懸けも  不用意に「言ふ」は使いたくないですね。「今日と言ふ」を「今日で終りと」などにすれば良いのでは? ほっとした感じと「蕗のたう」がよく合っていて、良い句だと思います。
22 涙目で  泣いていてそのまま眠ってしまったのでしょうか。「涙目で眠る」という描写は、親ならではのものを感じます。ただ、その後の「と春炬燵」が散文的な感じ。「赤子や春炬燵」でも、親子で春炬燵に入っているというのは伝わると思いますよ。


来月の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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