ハルヤスミ句会 第六十九回

2006年7月

《 句会報 》

01 鴎外忌三百年の松なりき     あたみ(春)

02 畑に水撒いては蝶をおこすかな  春休(ど)

03 ふるさとの御堂涼しやかくれん坊 由宇(あ・ど)

04 あめんぼやあめんぼの輪を運びをる まどひ(由・あ)

05 浜離宮ビルの谷間や梅雨晴れ間  あたみ(鋼)

06 まつすぐな青田の道を登校す   どんぐり(山)

07 花ごよみ庭園芝のたひらかに   あたみ

08 固き土割つて白きは毒茸     つよし

09 (作者の意向により削除)

10 もぎとりの茄子をそのまま量り買ふ つよし

11 大の字になりて金魚を買へといふ 春休(山・ま)

12 詫び状をやっと書き上げ麻暖簾  まどひ(由)

13 夏座敷食ふてごろんと横になり  つばな

14 実梅落つハシブト鴉の嘴先に   つよし

15 甲板はツアーの旗と海霧と    あたみ

16 よく動くをさな撮らんと汗かいて 春休(阿・ま)

17 おしみなむ潮入りの池濁り池   あたみ

18 寝ころべば海の音めく扇風機   どんぐり(由・阿)

19 ちよと動く度に軋みぬ籐寝椅子  つばな(ま・春)

20 献血の列に流るる蚊遣り香    由宇(鋼)

21 炎天や鞄の底に本ひしやげ    春休(阿・鋼・ど)

22 荒縄に氷一貫下げ来たる     まどひ(山・あ・春)

23 打ち水や夕のコンクリ剥がしたし 由宇

24 夏草や何でも文句言ふ男     つばな



【 金子由宇 選 】
 暑中お見舞い申し上げます。このサイトは私にとってオアシスです。
○04 あめんぼや  あめんぼの繰り返しが輪につながります。水面に広がる波紋、あめんぼの動きが手に取るように分かります。それにしても最近、げんごろうなど水生昆虫を見かけなくなりました。
○12 詫び状を  気懸かりをなし終えた後のすっきり感に麻暖簾がぴったりです。昔の商家の所作にありそうなレトロな雰囲気も感じます。
○18 寝ころべば  浜茶屋や海の民宿を思い出します。
24 夏草や  暑苦しくてうっとうしいこんな男。「早く枯れておしまい」は言い過ぎですか。
11 大の字に  だだっこの奥の手。
16 よく動く  動くせいだけじゃないですよね。シャッターチャンスに凝るのも親心でして。

【 山田つばな 選 】
○06 まつすぐな  気持ちよい句です。
○11 大の字に  大物ですね。
○22 荒縄に  炎天の町のざわめきがみえるようです。
他に好きな句、02 畑に水 03 ふるさとの 18 寝ころべば 20 献血の 21 炎天や です。以上よろしくお願いします。

【 中村阿昼 選 】
○16 よく動く  子供の写真って難しい。それでもベストショットを狙って、走り回る子供の後を追って汗かきながらシャッターを切る親バカぶりがほほえましい。うちも来年の今頃はこうなのかな。
○18 寝ころべば  寝転んで目をとじれば故郷の海の音が。。いやいや年代物の扇風機だった。
○21 炎天や  暑そう。重そう。やっぱり物を詠んだ句はリアル。
他に好きだった句
02 畑に水
11 大の字に
12 詫び状を
22 荒縄に

【 梅原あたみ 選 】
○03 ふるさとの  かくれんぼは作者の幼い頃の思い出でしょうか?近頃の子供にもこの様な想い出を残してあげる事の出来る世の中が欲しいものです。
○04 あめんぼや  静かな情景を感じます。あめんぼのかよわさとその輪があたりの情景を物語り作者の気持ちが解ります。
○22 荒縄に  此れは又、一貫など!懐かしい言葉と情景ですネ 時代と共に見受けられにくい今日でも、実際にはこの様な生活も有るのですネ なんとも微笑ましい限りです。

【 舟まどひ 選 】
 各地で豪雨の被害が大変ですね。梅雨明けが待たれます。7月選句です。
○11 大の字に  そのままの句。そして普遍的で懐かしい句。
○16 よく動く  汗かいてが本当にうまい。なんでもないようですが、なかなかこうは作れません。特選です。
○19 ちよと動く  ありそうでない句。籐椅子のもっとも籐椅子らしいことを言っているのに、こういう句はないように思います。

【 鋼つよし 選 】
○05 浜離宮ビルの谷間や梅雨晴れ間  
○20 献血の列に流るる蚊遣り香    
○21 炎天や鞄の底に本ひしやげ    
 下記の選外作と甲乙つけ難かったが句材の新らしさで、浜離宮、献血、炎天の句を選んだ。今月は佳句が並んだのではないか。
 今年も梅雨豪雨で被害がでた、富山も夏の甲子園予選大会順延につぐ順延だ。
01 鴎外忌三百年の松なりき     
02 畑に水撒いては蝶をおこすかな  
04 あめんぼやあめんぼの輪を運びをる

【 渋川どんぐり 選 】
〇02 畑に水  早朝の水撒きでしょうか。あたらしい空気、水の冷たさ、飛び立つ蝶。行ってらっしゃーい。
〇03 ふるさとの  御堂は杜に囲まれて、ちょっとこわいとこもあって、涼しいんだなあ。優しかったかっちゃん、つかみ合ってケンカしたともくん、元気かな。  
〇21 炎天や  暑さのせいか、しばらく忘れてた本。チョコレートのように、鞄の底で溶けてるのではと思わせる、炎天という言葉です。
10 もぎとりの  夏野菜のもぎたては、本当に綺麗!なかでも、いっとうピカピカなのは、やっぱり茄子ですよね。これを手にするうれしさ。
15 甲板は  風に乗ってくる海霧を浜から見ることはあるが、客船の上ですか。視界は狭く、旗は霧にぬれ、お客さんたちの表情は・・?楽しく想像しました。
16 よく動く  これは、いい汗ですよねー。頑張れー。

【 小川春休 選 】
今回も三句選は悩みましたが、選に入れたい句が多くて悩むのは、幸せな悩みですね。
○01 鴎外忌  忌日の句として成功してると思います。「三百年の松」は、やっぱり鴎外ですね。漱石だとスミレでしょうか。
○19 ちよと動く  さりげないですが、繊細な句。
○22 荒縄に  文句なく良いですね。余計なものが何もない、こういう句が作りたいものです。
03 ふるさとの  なつかしさを感じる句ですが、そのなつかしさは「御堂」と「かくれん坊」だけでも十分感じられますので、「ふるさと」までは言わなくても良いように思います。どんな「御堂」かを描写することで、なつかしさをリアリティで肉付けすることができれば、もっと深い句になります。
04 あめんぼや  ダイナミックだけど静けさを感じる、面白い句です。
06 まつすぐな  このままでも良いのですが、「青田の道や」の方が、景がはっきりするように思います。「を」だと、「登校す」る子どもの方に焦点が当たっている感じです。
08 固き土  「固き」は説明しすぎの感あり。
10 もぎとりの  俳句は韻文。散文と韻文との違いをいつも気にかけながら作句しています。この句の「を」の用法は散文的ではないでしょうか。「を」を「ぞ」などに替えるのも一案。中七を「茄子(なすび)そのまま」として「を」を使わないのも一案。
12 詫び状を  この「やつと」からは心情がよく伝わってきます。ただし「麻暖簾」がベストかは難しいところ。
20 献血の  献血してもらう大事な血を蚊に横取りされないように、とウィットに富んだ句ですが、このウィットはちょっと川柳っぽい感じがです。
23 打ち水や  作り手の強い意志を感じる句ですが、その強い意志をストレートに出すには、途中で「や」で切る形はあまり適切ではなかったかもしれない。「剥がしたきコンクリートに水打たん」と一直線に言い切るのが良いと思います。あと、「コンクリ」は略語なので、句の中では略さずに!
24 夏草や  「何でも」はエブリシングなわけですが、「何でも」というより、「こんな些細なことにも文句を言う」という例示をした方が、「何でも文句言ふ男」がリアルに感じられます。たとえば、「夏草にまでも文句を言ふ男」とか。

来月の投句は、8月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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