ハルヤスミ句会 第七十回
2006年8月
《 句会報 》
01 夏蝶のつき来る坂や往生寺 まどひ(山) 02 二間ほど片陰切れの手覆かな つよし 03 橋一つ渡す影さへ灼かれをり 由宇(山・鋼・春) 04 テニス子の筋肉質の日焼けかな つよし 05 蕎麦一枚頼みて夕立やり過ごし 春休(由・ま) 06 夕立の吹き込む山の出湯かな 春休(ま) 07 浮いてこい浮きつぱなしで売られをり まどひ(鋼・春) 08 蛇口より生ぬるき水原爆忌 春休(山) 09 おもむろに座り直して盆の僧 つばな(由・鋼・ま) 10 亡き母の鮨飯あふぐ団扇かな 由宇 11 盆棚のぐにやりとしたる桃の尻 つばな(由) 12 夕されば墓洗ふ人三三五五 由宇 13 ちよつとづつ飲みちよつとづつ減るラムネ まどひ 14 口あけて鴉飛び立つ秋暑かな つよし(春) 15 秋風に酒を飲むなといふ教へ つばな |
【 金子由宇 選 】 ○05 蕎麦一枚 時代小説、例えば鬼平犯科帳の世界が思い浮かびます。おおらかなこの句の作者は男性でしょうね。 ○09 おもむろに 僧のこんな所作は何処も同じようです。読経の声が聞こえてきそうです。 ○11 盆棚の 供物は早めに下げて食べればいいのに、なぜかこうなるのです。 その他 02 二間ほど 暑くて手覆をはずしたいけどはずせない。 【 山田つばな 選 】 ○01 夏蝶の 蝶は誰かの化身でしょうか。 ○03 橋一つ 影までも灼かれているなんて……どこへ通じる橋でしょうか。 ○08 蛇口より 亡き御霊にせめて一杯の水を供養したいです。 他に好きな句 02 二間ほど 眩しさを感じます。 06 夕立の ザーッとした雨音、お湯の匂いを感じます。 13 ちよつとづつ 小さな子でしょうか。ビー玉を止めるのって難しいんですよね。 14 口あけて カラスに暑さを感じます。 以上。車で30分も走れば軽井沢だけど、遊びに行く時間がありません。蒸し暑い中ではあはあいってます。 【 舟まどひ 選 】 ちっとも涼しくなりませんね。8月選句よろしくお願いします。 ○05 蕎麦一枚 いい風情です。もう少し俳句的な言い方だともっといいと思います。 ○06 夕立の 気持ちのいい句。バーっと吹き込んでその後晴れた時の葉から滴がしたたる何とも言えない風情まで感じさせてくれます。 ○09 おもむろに 読経の声、部屋の空気、羅の衣擦れの音まで聞こえてきそう。 【 鋼つよし 選 】 ○03 橋一つ渡す影さへ灼かれをり ○07 浮いてこい浮きつぱなしで売られをり ○09 おもむろに座り直して盆の僧 03、07 「をり」というのは形式動詞で、私は、極力使わない表現をこころがけているが、良いところを写生した佳句ではないか。 09、うまく、句にされたと思う。 そのほか、01 夏蝶の 辻先生の自信作に往生寺の句がある。(BS俳句で先生はそう明言していた。)句は、思い出せないが。先生を驚かすような句を期待する。 11 盆棚の お下がりが待ち遠しいような痛みかたを表現出来たらと思う。 【 小川春休 選 】 ○03 橋一つ 酷暑をリアルに感じます。話は反れますが、「影さへ灼かれ」に原爆を思い出しました。広島出身で、小さい頃からそういう話を聞かされて育ったせいだと思うのですが、本当に、壁とかに人の影が焼き付いたりした跡が残っているのです。 ○07 浮いてこい これまた何だか売れなさそうな「浮いてこい」ですね。そこが可笑しい。 ○14 口あけて 口をきりっと閉じていると、引き締まった感じ。かたや、口を開けて飛び立つ鴉は、何だかだらしない感じ。夏の暑さと残暑でお疲れなんでしょう。 09 おもむろに 何でもないようですが、すごくリアルにお坊さんを感じられます。 10 亡き母の じんわりと来る句ですね。 12 夕されば 内容は良いと思うのですが、ちょっと言い方が固いようです。「人」が固いのかな。 13 ちよつとづつ 「減る」をいいたいのであれば、「飲み」は要らないかもしれません。ラムネを飲むのも、飲んだから減るというのも、言わずもがなですから。「飲み」がなければまた違ったリズムが生まれるかも。 15 秋風に 色々と連想を誘う句。「秋風」が少しさみしいような切ないような。でも聞く方は聞き流しちゃうんでしょうか、「秋風」が吹き過ぎるように。 |
来月の投句は、9月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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