ハルヤスミ句会 第七十二回

2006年10月

《 句会報 》

01 秋桜や布団たたけば羽毛とび   春休

02 秋天に布団百枚干しにけり    あたみ(ど)

03 秋水や羽根つくろへば波生まれ  春休(由・あ・山)

04 爽やかに日向の冷えて来たりけり まどひ

05 松ぼくり拾ひ飯盒洗ふかな    どんぐり(あ)

06 オクラ摘むヘルシーの声や段畑  あたみ

07 広々と蜘蛛の巣張りぬ秋日中   つよし(由・山)

08 添水打つところの石やすりへりて まどひ(あ・春)

09 道譲る秋の彼岸のさはがにに   春休

10 ブルーシート被へる山の台風禍  由宇

11 月の道用もないのに電話して   つばな

12 草の香をさせて戻りてもう寝しよ 春休(ど)

13 十月のダンボール箱の漫画本   つばな

14 御神馬の鞍降ろさるる秋蝶来   どんぐり(鋼)

15 大根蒔く二人は無口となりにけり あたみ(鋼)

16 菊の香やしみじみ今を生かされり 由宇

17 どすどすと落ち葉のなかを歩み来る つよし(ど)

18 月満ちて文楽人形ぱたと死に   まどひ

19 名月や逝し母への言葉かけ    あたみ

20 マラソン部桜紅葉をけちらして  あたみ

21 芥火の煙りつぎつぎ木守柿    つよし(由・春)

22 秋潮の引けばつながり島と島   春休(山・ま)

23 しらじらと航跡旅の秋暮るる   由宇

24 何の日やら八幡様に秋燈     どんぐり(鋼・ま・春)

25 セーターのはみ出すカラーボックスを つばな(ま)




【 金子由宇 選 】
○03 秋水や  波一つなく澄みきった水面が、かえって際立つような句です。
○07 広々と  秋晴れの中、蜘蛛の仕事の見事な事。真ん中にいる蜘蛛は威風堂々としているかのよう。
○21 芥火の  焚き火。煙くて目を上げれば柿の木に実一つ。
その他
09 道譲る  お彼岸だから踏まないように、食べないように。
14 御神馬の  一抹の寂しさを感じます
12 草の香を  秋晴れの日、外遊びから帰った親子の会話でしょうか。今の時代だから嬉しい句です。ねましょと読みましたが・・・。

【 梅原あたみ 選 】
○03 秋水や  水鳥のおだやかな様子が静かさと同時に深まる秋の気配すら感じられました。
○05 松ぼつくり  松ぼっくりを拾う、飯盒洗ふ*熱海にはない生活、心がなごみますネ。
○08 添水打つ  庭園や庭先や、その他いろいろの所で見かけるものです。此処は何処だったのでしょう?思いの深い好きな句と成りました。

【 山田つばな 選 】
○03 秋水や羽根つくろへば波生まれ
○07 広々と蜘蛛の巣張りぬ秋日中
○22 秋潮の引けばつながり島と島
3*7*22です。情景が目に浮かび上がってきます。

【 鋼つよし 選 】
○24 何の日やら  何の日やら・・今回の特選句、俳句はこんな具合でよいのだと思うのだがつい説明しがちです。
○14 御神馬の  神馬の鞍と秋蝶の景色がほほえましい。
○15 大根蒔く  いつのまにか無口になるんで、よくわかるがもっとその感じが出せないものかと思った。

【 渋川どんぐり 選 】
○02 秋天に  空の高さ。広がる布団。気分晴れ晴れ。干した人は、ご苦労さん。ところで、布団百枚ある所って、何処?まあ、どこでも、いいかあ。
○12 草の香を  原っぱや公園で、いっぱい遊んだんでしょうね。いい一日で、よかった。
○17 どすどすと  かさかさでなく、こそこそでなく、どすどすですか。これはどうしても、落ち葉より、この人のことが、気になります。
この他に面白かった句です
11 月の道  月の道は、どこまでも明るく、歩くと、少しひやりとして。どうぞ、留守番電話でありませんように。
13 十月の  十月。秋深まり。今年も深まり。また、これといったことも成せず、終わりそう。漫画でも読むかなあ。
18 月満ちて  恋ゆえのこの結末でしょうか。ごたごたあっても、最期は、ぱたと。生の文楽、見たくなりました。
以上、選句です。
みな、おもしろくて、ものすごく、迷いました。
選ぶのに、時間がかかった。

【 舟まどひ 選 】
○22 秋潮の  わこさんの句だったか「島と島つながっている干潟かな」というのがありましたが、こちらの句も動きがあって面白いです。ただ着想と言う点では、やはり二番手の感は否めないですね。
○24 何の日やら  「何の日やら」というのが新鮮です。作者は離れた所から八幡様の灯りを見ているようです。「秋灯」が境内の様子をいろいろ想像させてくれます。
○25 セーターの  面白い所に目をつけました。でも他に言い方がないものかなと思いました。自分でもできないのですが。

【 小川春休 選 】

○08 添水打つ  他の人が見落としてしまうような細かいところをしっかりと見て、しっかりと句にしているところに好感を持ちました。句がしっかりしているので、石の来し方に思いを馳せることができるのです。
○21 芥火の  辞書で引くと「芥火」は「海人(あま)が藻屑を燃やす火」とのこと。「つぎつぎ」という描写が適切かどうか、少し疑問は残りますが、藻屑を燃やす火の煙と木守柿、良い景です。
○24 何の日やら  読み手の素朴な驚きが自然な形で詠み込まれていて良いと思います。こう詠まれると「八幡様」も地域の生活に密着してる感じが伝わってきます。
02 秋天に  これまた気持ちの良い句。
05 松ぼくり  今ひとつ「松ぼくり」と「飯盒」がつながりが弱いような…。句が一つにまとまらずに、バラけてる感じがします。言い方(表現の仕方)にも原因があるのかもしれません。
07 広々と  上手い句。なのですが、「どこかで見た」感もある…。私自身もこういう句を作ったことがあるような気がする。
11 月の道  「月の道」で「電話」ということは携帯電話なのでしょう。携帯電話を句に入れるのは難しいですが(私がそう思ってるだけかもしれませんが)、こう自然な形で使うと良いのですね。
12 草の香を  久々に自句解説を。下五「もう寝しよ」は「もうねしよ」と読み、「もう寝てしまったかぁ」「もう寝てしまったなぁ」ぐらいの意味です。
14 御神馬の  取り合わせは良いと思うのですが、言い方が漠然としていて、印象が散漫になっています。「御新馬」と「秋蝶」の位置関係がもっとはっきりするように推敲すれば、もっと良い句になるはずです。たとえば「秋蝶来鞍降ろしたる御新馬に」など。
15 大根蒔く  良いのですが、わざわざ中八にしなくても、の感あり。「は」を取って五七五に収めた方が良いです。
16 菊の香や  中下の感慨に対して、「菊の香」ではキレイスギの気がします。
17 どすどすと  良い句が多くて三句選には入りませんでしたが、迫力があって面白い句です。
20 マラソン部  細かいことかもしれませんが、「マラソン部」という「部」はあまりないのでは? 一般的には「陸上部」だと思います。俳句は字数が限られていますから、細部の用語の正確さ・的確さが、句が活き活きするかの分かれ目になります。
25 セーターの  何気ない景を描いていて好感を持ちましたが、最後の「を」が句を曖昧にしているようです。「セーターのはみ出しカラーボックスよ」(「よ」は「ぞ」でも可)などとすると、もっとすっきりした表情の句になりそう。

来月の投句は、10月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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