ハルヤスミ句会 第七十三回

2006年11月

《 句会報 》

01 ふるさとやうち棄つる田に野紺菊 由宇(ど・ま)

02 菊花展単鉢競技ちふ日和     どんぐり

03 文化の日嫁の活け花夫と見ゆ   あたみ

04 引越の荷に一束の吊し柿     春休(あ・山)

05 鳥人(フライヤー)の疲労困憊十三夜 あたみ(ど)

06 芋煮会石見の山を二つ越え    春休(山)

07 待つ人のグラスに沈む檸檬かな  由宇

08 我楽多に値のつく小春日和かな  まどひ(山・ど・春)

09 冬山のてつぺん見えてくる岬   どんぐり(あ)

10 後悔に白山茶花のこぼれけり   つばな(由・春)

11 うたたねのさめて新酒の酔ひかすか 春休

12 大学に木の実降るだけ降って冬  まどひ(由)

13 こつぽりと歯を削られてしぐるるよ 春休(ま)

14 しちくどき我でありけり玉子酒  つばな(ま)

15 大壷にむべの実つるごと挿すもよし あたみ

16 石蕗の花老舗の宿はひっそりかん 由宇

17 ぎくしゃくと蜜を吸ひをり冬の虻 まどひ

18 脱衣場にばらばらばらと椎こぼれ どんぐり(由・あ・春)

19 手あぶりて女はかういふものだなぞ つばな

20 銀杏の実三粒食せば妙薬と    あたみ



【 金子由宇 選 】
○10 後悔に  洗練されたセンスを感じます。品の良い句です。
○12 大学に  北大→並木道→降る雪と連想し、冷気を感じます。
○18 脱衣場に  ポケットいっぱいに拾ってきた椎の実。ほほえましくて温かいです。
その他好きな句です
04 引越の荷に一束の吊し柿 
13 こつぽりと歯を削られてしぐるるよ
11 うたたねのさめて新酒の酔ひかすか

【 梅原あたみ 選 】
○04 引越しの  何方か柿を荷物の中に入れてくれたものでしょうか?それともこの柿だけはどうしても持って行きたい**引っ越しの心境を物語っています。
○09 冬山の  冬山は静かすぎます。いままで見えない山のてっぺんも目の前にせまる様に感じられます。
○18 脱衣場に  今日は一日お疲れ様、上着のポケットに入れてあった事なぞ忘れていたのに突然椎の零れ落ちる音にきずき拾う様子、近頃椎の実もお眼にかかれませんので懐かしく成りました。

【 山田つばな 選 】
○04 引越の荷に一束の吊し柿     
○06 芋煮会石見の山を二つ越え    
○08 我楽多に値のつく小春日和かな  
4*6*8です。他に好きな句は13*18です。
13 こつぽりと歯を削られてしぐるるよ
18 脱衣場にばらばらばらと椎こぼれ
よろしくお願いします。歯医者さん頑張ってください。

【 渋川どんぐり 選 】
○01ふるさとや 大切な田。「うち棄つる」と、言い切ったところに、寂寥感あり。子どもの頃、田んぼは遊び場で、草花や虫は幼なじみだった。野紺菊も・・・。
○05 鳥人の 山道で若き鳥人と遭遇した事がある。「あなたも飛ぶの?」と問われ、はにかんでおられた。そうかー。飛べば、疲れるんだなー。月まで飛んで欲しいけどなー。 
○08 我楽多に のんびり、ゆっくり、我楽多市なるものを歩いてみたくなりました。いい物、いい人と、出会えそうな気がしてくる句ですね。
この他に、面白かった句です。
11 うたたねの うたたね、新酒、酔ひ。「幸せ」のキーワードがずらりな句。「ちゃんと布団で寝なさいよ」と叱る人がいても、いなくても。
13 こつぽりと  歯医者さんは苦手なんだな。ぎりぎりまで我慢して、後で泣くのだ。歯医者と、しぐれ。あー、なんとも、しみる取り合わせです。
19 手あぶりて なんだか、とても、タメになりそうなお話です。ぜひ、お聞きしたい。

【 舟まどひ 選 】
○01 ふるさとや  打ち棄つると野紺菊の取り合わせがいいと思います。淋しくて、広々として寒々として。そしてああふるさと。
○13 こつぽりと  こっぽりが最高です。本当にうまい表現だと思います。しぐるるがまた付かず離れず雰囲気が出てると思います。
○14 しちくどき  玉子酒を飲みながら、自分を反省している図ですか。そしてどうにもならない自分にうんざりしている。

【 小川春休 選 】
○08 我楽多に  「我楽多に値のつく」という描写は簡潔で率直ですが、いろいろなことを想像させてくれます。
○10 後悔に  うまく説明できませんが、細かく語らないことで句に謎が生まれ、それがこの句のチカラになっているようです。
○18 脱衣場に  さーて風呂入るかー、と服をぬぐと…、という景が目に浮かびます。楽しい句。
01 ふるさとや  俳句の場合、思いは「出す」のではなく「込める」もの。この句の場合、「ふるさと」は言わず、目の前の「もの」に思いを込めた方がもっと共感が得られるのでは。
02 菊花展  「日和」でまとめてしまうと、報告句になってしまいます。
03 文化の日  「文化の日」「嫁」「活け花」「夫」とたくさんのものが詠まれていて、ちょっとごちゃごちゃしてしまっているようです。「文化の日」を取り、「活け花」を何か季語となる花の活け花として、もっとゆったり詠まれた方が良い句になると思います。
05 鳥人(フライヤー)の  なかなか面白い句なのですが、○にしなかったのは、季語があまり効いてないと思ったので。
09 冬山の  「見えてくる」と言いながら、読み手には岬と冬山の位置関係が見えてきません。「くる」の働きが曖昧なので、「くる」を取った方が句がすっきりするようです。「冬山のてつぺん見えて日御碕(ひのみさき)」などなど。
12 大学に  雰囲気のある良い句だと思います。
14 しちくどき  これもまた雰囲気のある良い句。
17 ぎくしゃくと  悪くはないのですが、「冬の虻」だから(弱ってきているから)ぎくしゃくと蜜を吸っている、という理がついてしまうのが難。私の気にしすぎかもしれませんが…。

来月の投句は、12月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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