ハルヤスミ句会 第七十七回

2007年3月

《 句会報 》

01 末娘嫁がせ北の窓開く       まどひ(ど)

02 春の鶏羽根蹴ちらしてきたりけり  春休(ど・山)

03 日を弾く幼の頬や猫柳       由宇(ど・春)

04 黄水仙ひらきかけたる墓の横    つばな

05 島を出て行く日や若布持たされし  春休(ま)

06 戻り雪どかりと重き腰であり    由宇

07 春愁や句集いただき胸にかな    あたみ

08 片思ひとはこんなもの春埃     つばな(由)

09 新幹線春の伽藍を擦れすれに    春休(あ)

10 熱帯園捕らはれの身で鳥交る    まどひ(由)

11 耕しの後はうでくみ見守れり    あたみ(由)

12 小鳥の巣出入り口はきちきちで   まどひ(あ)

13 春昼や露天の風呂を独り占め    由宇

14 春眠をむさぼる夢にめざめけり   あたみ(山・春)

15 花の主欠けし茶碗に葱植ゑて    春休

16 春月やいくらかけても話し中    つばな(あ・ま)

17 頂きは馬酔木大木海見ゆる     どんぐり(山)

18 彼岸西風いよよ風紋消しゆけり   どんぐり

19 浜大根吹かれ物干竿鳴つて     どんぐり(ま・春)



【 金子由宇 選 】
○08 片思ひ  春、空は明るい陽光のはずなのに埃が立ってもやもやとした見通しの悪さ。一方通行の恋は、もどかしく心晴れない思いが澱のように積って。心情が春埃と不思議に重なりました。
○10 熱帯園  何かしらもの悲しさを感じます。
○11 耕しの  畝の出来具合をチェックして、植える作物を考えていらっしゃる。くわえタバコをしていそうな・・・・。
その他
02 春の鶏  幼い昔こんな光景見たことがあるような。

【 梅原あたみ 選 】
○09 新幹線  新幹線のすばやい外の景色に対しふと目を留めた、そこには伽藍がある。しかも電車にすれすれ鋭い観察句の様に感じました。
○12 小鳥の巣  何時も見かける風景、景色、小鳥の巣もその一つ、きちきちでと詠うところが俳味でしょうか?
○16 春月や  そうです。急ぎの用事、それともちょつとだけ声を聞きたい、私も自分の都合で相手の事も考えず掛けます。でも急ぎの用事の時は困りますネ**春の月ですから相手も気分良く長電話をしていたのでしょうネ

【 渋川どんぐり 選 】
〇01 末娘  末娘は一家のアイドル。嫁に行く日が来るなんて・・・。ぱーっと、北窓、開けましょうかねえ。
〇02 春の鶏  春です。元気出して。あたりのものは、蹴飛ばして!ほれ、あの鶏みたいにねー。
〇03 日を弾く  あー、猫柳と幼子の頬。よく似てるものリストに載せましょう。柔かくて、輝いていて、いいなあ。
この他に、とりたかった句です。
08 片思ひ そうそう、春埃。こればっかりはねー、自分でも面倒くさいったら、ありゃしない。なるべく被らないように。わかった?
09 新幹線 うわ、大きな音が聞こえます。現場を見たいです。現場は、どこでしょう? 遠くへ行きたい春。
16 春月や 一体、だれと、話してるのか。月は朧。えーい、家まで行ってみるかー。

【 舟まどひ 選 】
○05 島を出て  映画のワンシーンのようです。若布をどっさり持たされ、舟の受ける風、汽車の中で若布が匂っている様子などうかびます。
○16 春月や  花時、出掛けがちになったり、電話での話が弾む、うきうきした気分がよくでています。
○19 浜大根  広々と吹き渡る気持ちのいい浜風が日常の生活の場である物干しにやって来たという面白さ。

【 山田つばな 選 】
○02 春の鶏  勢いがあり、鶏が目に見えるようです。
○14 春眠を  ほのぼのとして、はっとします。
○17 頂きは  気持ちの良い広々とした句です。
他に好きな句、
05 島を出て  あったかい人の気持ちがいいです。
12 小鳥の巣  すごく面白いです。以上です。

【 小川春休 選 】
○03 日を弾く  吾子俳句を作りまくっている私としては、こういう率直に良く描けた子どもの句はうらやましいような気がします。猫柳も良いです。
○14 春眠を  寝過ごしたと思ってびっくりして起きたら、寝過ごした夢を見てただけだった、という。こういうことってあるある。下手をすると川柳っぽくなりかねない内容ですが、すっきりときれいにまとまっているのでその辺は気にせず読めました。
○19 浜大根  今月のどんぐりさんの三句、いずれも良かったです。その中でもこの句がもっとも具体的に描けており、作者の感覚の鋭敏さが表れてて秀逸だと思いました。
 01 末娘  末娘を嫁がせてから北窓を開くから、「北窓を開く」という本来は春を感じさせる行為に、娘を嫁がせた後のそこはかとないさびしさが感じられるわけです。これが北窓を開いてから末娘を嫁がせて、という順序だと、そういう陰影よりも晴れやかさの方を強く感じる句になるでしょう。そんなことを考えさせられた、良く出来た句です。
 06 戻り雪  擬音語・擬態語の多用は、時として句を平凡なものにしてしまいます。この句の「どかり」、戻り雪がどかっと降ったという使い方ですので、目新しくなく、あまり成功していないように思います。
 07 春愁や  まず「や」「かな」で切れが二つになっています。あと、「春愁や」だと、何だかあまりうれしそうではないように読める気がするのですが…。感謝の気持ちを表すつもりであれば、その気持ちが読み取れるような季語を用いなくては。
 10 熱帯園  昔、「捕らはれの蟷螂同士いさかへる」という句を作ったことがあります(ちょっと違ったかも?)。似てる句なのですが、「熱帯園」という上五が説明っぽい分、私の句に分があるかな、とも思います。
 11 耕しの  雰囲気は良いのですが、「後は」というところで句の中の時間の流れが冗長になってしまっています。
 16 春月や  自然な詠みぶりで、いかにも春月らしい気分が出ています。「朧夜や」とかだとムードが出すぎちゃうんでしょうね。やっぱり「春月」くらいがさりげなくて良いです。私はよくムードを出しすぎちゃうので気をつけよう。
 17 頂きは  気分の良い句。
 18 彼岸西風  これまた気分の良い句。言い回しも決まっています。

来月の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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