ハルヤスミ句会 第七十九回

2007年5月

《 句会報 》

01 初音してそつと近寄りその枝に  あたみ

02 急坂に砂浜風や豆の花      まどひ

03 ゴールデンウイークコンビに列の中 あたみ

04 払ひたる枝や小径を埋めつくし  春休(由・ど)

05 羊蹄の咲く三人の草野球     どんぐり

06 薫風や空にひとはけ白き雲    由宇

07 羊蹄の花まで飛べば本塁打    どんぐり(山・春)

08 新緑や手品に拍手まばらなる   春休(あ・ま・山)

09 新茶汲む急須の尻を高くして   まどひ(由・山)

10 夏風におきつぱなしの老眼鏡   つばな(ま)

11 ひるがほのけふはかられてしまふかな つばな(ま)

12 ひかげには石臼ひとつ桐の花   つばな(ど・春)

13 繰り言を聞きつ言ひつつ草むしり 由宇(あ)

14 薄暑かな右肩病めて五十肩    あたみ

15 熱高し小さき背に汗こんなにも  春休(あ)

16 青蔦の雨戸開くるや海がそこ   まどひ(由・春)

17 山蟻や露天湯の淵のぞき込み   春休(ど)

18 胡沙荒るる浜のやさしく夕焼けぬ どんぐり

19 ひと恋し鎮守の杜の青葉木菟   由宇



【 金子由宇 選 】
○04 払ひたる  枝がバサッと落ちる音が聞こえてきます。明るくなった小径、枝を踏むと緑の香り。
○09 新茶汲む  最後の一滴がおいしいのです。
○16 青蔦の  海辺の別荘だといいですね。久し振りに訪ねたら青蔦が伸びていて、夏へのときめきを感じます。
その他
 07 羊蹄の花まで飛べば本塁打  草野球。

【 梅原あたみ 選 】

○08 新緑や  手品を誰がしていたのでしょう? 余り上手でなかったのでしょうか? 人の沢山居る所で冗談をまじえてすると大受けです。
○13 繰り言  この句は全く私の事の様で、思わずふきだしてしまいました。
○15 熱高し  幼い子の高熱には余程注意しないと恐いです、「小さき背に」と言うところは親心のすべてを物語っています。

【 渋川どんぐり 選 】
〇04 払ひたる  枝払いの涼しさと、樹木の生命力と、あわせて感じることが出来ました。
〇12 ひかげには  「桐の花ほとほと遠き色なりし」・・切ない名句を思いますが、日陰の石臼との取り合せもいいですね。ひんやり。ずっしり。
〇17 山蟻や 何故か浮かんだのが、断崖から草原を望むジャングル大帝レオ。どうぞ、落ちられませぬよう。気をつけて。
この他に、面白かった句
 08 新緑や うーむ。新緑の中で、手品する人。興味あります。あんまり、上手ではないみたいですが。
 09 新茶汲む 最後の一滴まで、味わいましょう。新茶ですから。
 14 薄暑かな  肩こりや痛みはねー、しんどいんです。しみじみ。でも、これも句にしてしまう。たくましさを見習いたい。

【 舟まどひ 選 】
○08 新緑や  回りが新緑に囲まれている所で手品をしているとも、ただその頃ともとれますが、葉がわさわさ混んで来る感じとまばらな拍手の取り合わせが面白いと思いました。
○10 夏風に  なんかこう言われると、いかにも老眼鏡が「嗚呼涼しい」なんて言っているようで、不思議と風を感じます。
○11 ひるがほの  風も暑さも感じられる句。そしてひるがほのやわらかさも、刈られたあとのぺしゃんとした所も見えます。ひらがなが効果をあげています。

【 山田つばな 選 】
○07 羊蹄の  草むらに転がってゆくちょっと汚れたボールが見えるようです。
○08 新緑や  街並み、街路樹、通り過ぎる人々を感じます。
○09 新茶汲む  やっぱり新茶ですね〜。味の違いはよくわかりませんが、、
他に好きな句
 02 急坂に  海の匂いがするような。
 05 羊蹄の  いくつになっても少年のような感じがいいです。
 13 繰り言を  本当にそう、一人でやっていると飽きちゃいますよね。
 15 熱高し  くるしそう……早くよくなりますように。
 16 青蔦の  気持ちのいい句。

【 小川春休 選 】
○07 羊蹄の  この伸び伸びとした感じにひかれて採りましたが、「飛べば」では仮定の話になってしまい、句として弱い気がします。「花まで飛んで」とすれば、今まさにボールが飛んできた感じで、句に躍動感・力強さが出ると思いますが、いかが?
○12 ひかげには  私もこういう句が作れると良いのだけれど・・・。見たままを詠んでいるようでありながら、その奥に生活感や空気を感じさせる、確かな句です。「桐の花」が揺らぎない。
○16 青蔦の  一読景色が目に浮かぶ、巧みな句。中七の切れから下五への展開が鮮やかです。夏本番、って感じですね。
 01 初音して  さりげない内容と、中七下五の「そ」の音韻に好感を持ちましたが、散文的なところがマイナス。やはりどこかできちっと切れを入れるべきではないでしょうか?
 05 羊蹄の  本塁打の句と比べると、こちらは説明句と言わざるを得ません。
 09 新茶汲む  詠み手なりの発見のある写生句なのですが、ちょっと詰め込みすぎの感あり。「汲む」「高くして」と動詞が二つあるのが原因と思われるので、上五を「新茶かな」とするか、下五と「高々と」とするか、それとももっと別の言い様にするか。
 10 夏風に  この季語では景色が見えてきません。「新緑や」「端居して」などなど、もっと具体的に見えてくる季語を再考してみてください。
 11 ひるがほの  雰囲気は良いのですが、ちょっと雰囲気に流れている感じもします。
 13 繰り言を  「草むしり」という季語に対して、上五中七も人事なので、広がりのない句になっています。人事でも、意外性のある内容であれば、良いのかもしれませんが・・・。
 14 薄暑かな  薄暑と五十肩という取り合わせは面白くなりそうなのですが、何だか中七が説明っぽいです。例えば「薄暑かなそおつと挙げて五十肩」のように動きを入れて単純にするとか、どうすれば読み手にもっとよく伝わるか、推敲してみてください。
 18 胡沙荒るる  景色は素敵なのですが、言葉が多くてごちゃごちゃした感じです。大らかな景色の句は、大らかな詠みぶりでなくては。実際に声に出してみるなどして、ぜひ推敲してみてください。

来月の投句は、6月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

back
back.
top
top.