ハルヤスミ句会 第八十一回

2007年7月

《 句会報 》

01 「鞍馬山保育園」見ゆ夏木立    どんぐり

02 頭のみ出でて青田の白鷺よ     春休(あ・と・山)

03 忘られぬならそのままに夏つばめ  つばな(と・ど・春)

04 地に着きしところの茅の輪へこみたる まどひ(ど・春)

05 棘持ちて籠一杯の茄子胡瓜     あたみ(山)

06 間延びせし雅楽に蛇は衣脱げリ   まどひ(ど・山)

07 夕立や父の蔵書が膝枕       とど(あ)

08 どこへ行けども日盛りの選挙カー  春休

09 だまされる方も悪いよかたつむり  つばな

10 子等の声梅雨の合間の晴れる道   とど

11 はやばやと冷房切られ残業す    春休

12 白雨来る鞍馬の山に傘を買ひ    どんぐり

13 吹き戻し頬ふくらます夏祭     あたみ

14 太宰忌や知らぬ同士が一つ傘    まどひ

15 祭船御霊のおわす船の中      あたみ

16 夏草をまたいで家につきにけり   つばな(と・春)

17 ワイパーの速度負けたり集中豪雨  とど

18 エプロンを引つ張られつつ紫蘇刻む 春休(あ)

19 ごきぶりをとりにがしてはしかられて どんぐり



【 梅原あたみ 選 】
○02 頭のみ出でて
○07 夕立や父の
○18 エプロンを引っ張られ
今月は選句のみにて失礼致します。

【 とど 選 】
○02 頭のみ  白鷺が居ることによって、青々とした稲の成長を感じました。
○03 忘られぬ  秋には旅立つつばめへの親心の様なものでしょうか?
○16 夏草を  いつの間にか草が伸び放題になっている季節ですね。

【 渋川どんぐり 選 】
〇03 忘られぬなら  うーむ、胸が痛いですねー。このすっきりせぬ状況には、夏つばめ・・・。
〇04 地に着きし  夏越の茅の輪くぐり。へこむとあるのは、善男善女の足の跡でしょうか。みなさまに良い事ありますように。
〇06 間延びせし  衣を脱ぐ蛇と雅楽。えっ?と、驚きの取り合せですが、似合うかなあと思えてきました。
この他に面白かった句です。
14 太宰忌や  「人間失格」ならぬ「人間合格」というお芝居を見たこと、思い出しました。
17 ワイパーの  不思議な迫力があって、いいなあと思いました。
18 エプロンを  紫蘇の良い香りがこちらへも。

【 山田つばな 選 】
○02 頭のみ  すがすがしい美しさ、詩の世界ですね。
○05 棘持ちて  朝露のついた取れたてのなすときゅうりが生き生きしてます。
〇06 間延びせし  不思議な世界に迷い込んだ感じです。

【 小川春休 選 】
○03 忘られぬ  一体何があったんだろう?と読み手に思わせることができたら、それは句としてはすでに成功していると言えるような気がします。この句もそういう句。なかなか深いです。
○04 地に着きし  写生句らしい写生句で、何だか自分も実際にこの「茅の輪」を見たような感じがします。
○16 夏草を  草抜かなきゃな、と思いつつ、暑いし疲れたしまた今度にするか、という。さりげないけど共感できる句。
 01 「鞍馬山保育園」  地名・固有名詞の面白さもあるし、雰囲気もあるのですが、「見ゆ夏木立」がちょっと曖昧なような…。
 05 棘持ちて  一読、野菜の新鮮さがストレートに伝わります。素直な句ですね。
 07 夕立や  「父の蔵書」を枕にする、という内容と読んだのですが、とすると「膝枕」の「膝」という表現がちょっと正確でないように思います。下五を「枕にし」「枕とし」とすると良いのでは? 「夕立」と中七下五の対比が鮮明で、なかなか良い雰囲気の句ですので、ぜひ推敲を。
 13 吹き戻し  上五と下五が両方とも五文字の名詞になっている形になっており、こういう形を「山本山」と言う場合もあります。「山本山」になると、句がぶつぶつ切れたようになり、あまり動きのない句になりやすいです。どこかに切れを入れたり、語順を入れ替えたり、工夫してみてください。
 15 祭船  船がたくさんあるのでしょうか? 「祭船」と「御霊のおわす船」の数、位置関係が分かりにくいです。「御霊のおわす船」がたくさんあって、その中に一艘「祭船」がある? 一読でぱっと分かるように、推敲してみてください。
 17 ワイパーの  勢いのある句ですが、下五の字余りが気になります。あと、「集中豪雨」は季語ではないので、「大夕立(おおゆだち)」などとすると、五七五にも収まり、季節感も出てきそうです。
 19 ごきぶりを  何でもないような内容ですが、ちょっとせつない…。すべて平仮名表記にしたところに、この作り手ならではのウィットが感じられます。

来月の投句は、8月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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