ハルヤスミ句会 第八十四回
2007年10月
《 句会報 》
01 秋の日の当たる白磁の香炉かな つばな(ど・あ) 02 水の音さては蓮の実落ちしかと 春休 03 急坂や麻布狸穴木の実降る まどひ(ど) 04 末枯をきて靴紐の毛羽立てる 春休(あ・ま) 05 芒原ぬけてより釣瓶おとしかな あたみ 06 搾り出す練り歯磨きや虫の宿 まどひ(ど・山・春) 07 露寒のまことしうねき寝癖かな 春休 08 朝食はルームサービスにて子規忌 まどひ(山) 09 抜きん出る薄の風にあふらるる つばな 10 葡萄棚するりと鼠身をかわし あたみ(山・春) 11 新米の炊けて図太き鐘の音 春休 12 主人より先に逃げ出す鰯雲 つばな 13 林檎踊り踊りてりんごテーブルに あたみ 14 神楽果て尻の冷たくなつてゐし 春休(ま) 15 蜘蛛の囲を引つ張つてゐる蔓の先 どんぐり(あ) 16 望の夜の物干竿に見とれたる どんぐり 17 落柿の熟るるに酔ふてしまふとは どんぐり(ま・春) |
【 渋川どんぐり 選 】 ○01 秋の日の そんな高級なものにご縁はないのですが、意外に鋭く強い秋の日差の中で輝く姿はさぞ美しかろうと想像しました。 ○03 急坂や そんなおしゃれな街に行ったこともありませんが、よく見ると「麻の布」に「狸の穴」、案外、木の実が似合うかも。 ○06 搾り出す 虫の声は必死の求愛とか。「搾り出す」は歯磨きより、そちらのほうにかかるような…。 この他におもしろかった句。 08 朝食は 子規先生は、食にこだわる人であったらしい。朝食、ゆっくり味わって。 09 抜きん出る そう、一本だけ揺れてる草や木に遭うことがあるんですよねー。 【 梅原あたみ 選 】 ○01 秋の日の なんとも言えない、ゆったりとした日常の姿を見ている様です。 ○04 末枯を 靴紐の毛羽立てる。本当にこの様な状景に成る事もしばしば有りました。これからの野山は紅葉で美しい事でしょう。 ○15 蜘蛛の囲を 蔓は何処までも伸びる。其処が何と蜘蛛の囲であろうとは**何も蜘蛛でなくても,** その他 03 急坂や 『童子」の大会の翌日の吟行が麻布でした。あの時の事がよみがえるのです。どうも吟行は慣れていませんので、ただドキドキするばかりです。可笑しなものです。 【 舟まどひ 選 】 ○04 末枯を 面白いところに目をつけました。今立っている場所の雰囲気がよくでていると思います。 ○14 神楽果て 夢中になって見ていたのですね。時間の経過や熱気、空気の冷え、そして神楽の動きまで見えてきます。 ○17 落柿の この感じよくわかります。私もつい3日程前に経験しました。なんかお酒になりそうな匂いでした。 【 山田つばな 選 】 ○06 搾り出す 味わい深いです。湯治宿でしょうか?情景が目にうかびます。 ○08 朝食は こちらはホテルですね…。その一室で子規に供養するような、厳かな感じがします。 ○10 葡萄棚 美しい景です。秋の深まりの中で生きる小さな命。鼠が逃げ出した音が聞こえるようです。 他に好きな句。 02 水の音 秋の静けさがいい感じです。 04 末枯を 好きな句です。ただ、靴紐が毛羽立つと言うのが、良くわかりません。 【 小川春休 選 】 ○06 搾り出す しみじみと味わい深い句。何気ない描写ですが、いろんなことまで連想を誘います。 ○10 葡萄棚 素直な写生句として、好感を持って読みました。葡萄棚の様子が眼に浮かびます。 ○17 落柿の 「熟るるに」かなぁ、「熟れしに」じゃないかなぁ、と思いつつ、リアリティと意外性のある内容で、面白い句です。 01 秋の日の とてもとても静かで穏やかな句。こういう句って、最初に選句したときに採らなくても、後から、採った方が良かったかな…、と思うことがよくあります。そんなことを思いつつ、今回も採らず。良い句だとは思うのですが…。 03 急坂や 実際の「麻布狸穴」はけっこう街なのかもしれませんが、字面としては「狸」も入っていてなかなか味がありますね。句の形が決まっているのもさすがです。 05 芒原 中八が気になります。「ぬけてより」を「ぬければ」「ぬけたる」などに替えればきちっと五七五になります。 09 抜きん出る薄の風にあふらるる つばな 12 主人より 「主人」というのが、夫なのか、飼い主か何かなのか、よくわかりません。なぜ逃げ出したのかも。ツキスギにならない範囲で、状況がもう少し分かる季語・言い方にしてほしいところです。 15 蜘蛛の囲を 写生句として、きちんと書けていると思います。下五に名詞を持ってくることで、句形も決まっています。 |
来月の投句は、11月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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