ハルヤスミ句会 第八十五回

2007年11月

《 句会報 》

01 筏ひく小船見下ろす紅葉かな    つよし(山)

02 黄葉に照らされ雨の森をゆく    どんぐり(あ)

03 バスを待つ鼻につんつん秋刀魚かな あたみ(鋼・春)

04 金庫番ひねもす足を焙りては    まどひ(鋼・ど)

05 石蕗咲くや水神さまに水汲めば   どんぐり

06 神の留守重ねし本の崩れたる    つばな(鋼)

07 嚔して直すともなくネクタイを   春休(ど・ま)

08 はばたきのはじめの羽音冬水に   どんぐり(ま・春)

09 かろがろと車の屋根に小春猫    つよし

10 蒲団干す文化財なる建物に     まどひ(あ)

11 子の冬帽親の冬帽子の中に     春休(山)

12 総持寺の托鉢僧に落葉飛ぶ     つよし(ど)

13 父の背に手を当ててみる日向ぼこ  つばな(あ)

14 焼き芋を包む新聞美智子様     まどひ

15 十三夜外灯影をなごうして     あたみ

16 イルミネーションに銀杏にほふかな 春休

17 芋掘りや終戦少女蔓を食べ     あたみ(春)

18 雑炊にあれやこれやと言ふでなし  つばな

19 山眠り泡風呂に泡消ゆる音     春休(ま・山)




【 鋼つよし 選 】
○03 バスを待つ  バスを待つ同乗者に荷からにおうのか店先かにおいが新鮮なような気もした。
○04 金庫番  金庫番のしぐさがなんとなくわかる。
○06 神の留守  神の留守の季語が本の崩れとぶつかり合って一つの風景を出している。
そのほかに選びたかった句
 05 石蕗咲くや水神さまに水汲めば
 13 父の背に手を当ててみる日向ぼこ
 14 焼き芋を包む新聞美智子様

【 渋川どんぐり 選 】
○04 金庫番  金庫の置いてある場所は、大抵、床が冷えて、大変なのですな。「ひねもす」がなんともよいです。大阪商人物の御芝居みたいな味が出てます。
○07 嚏して  くしゃみは、ねー。思わぬところで出るし、背広姿の持つ威信(!?)もぶち壊すような威力がありますよね。さー、気を取り直して、どうぞ。
○12 総持寺の  冬の御坊様は、本当に寒そうだと思います。白い僧衣の裾と、落葉がひらひらと。
この他に、しみじみした句です。
 06 神の留守  崩れたのは、本の山。うーむ。積み重ねた大事なものたちが、神留守に崩れませぬように。
 17 芋掘りや  芋の蔓は、戦争の記憶につながるのですね。平和を大切にと思います。
 18 雑炊に  酒は静かに呑むべかり。雑炊は静かに食ふべかり・・・。

【 梅原あたみ 選 】
○02 黄葉に  何処までも黄色く色をなす森は雨も気にならない、心のやすらぎを感じるのです。
○10 蒲団干す  文化財なる建物がひとひねりでしょうか・?実際そのものが文化財で有るなら尚の事すごーい!
○13 父の背に  娘の様な気がします。優しさのただよう、なんとも言えない好きな句です。

【 舟まどひ 選 】
○07 嚔して  人間の無意識の動作を捉えた面白い句。あらゆる所に句材はありますね。
○08 はばたきの  水の冷たさ、清潔、しぶきの白さ等が感じられる句です。音で映像を表現したような句。
○19 山眠り  山の静かな温泉。あるいは自宅なのか、こちらも音で静けさを表現した句。

【 山田つばな 選 】
今回はいい句がいっぱいで大変でした。読む度に迷っちゃって、秋の終わりってしみじみしちゃうからでしょうか?
○01 筏ひく  なんとも美しい。
○11 子の冬帽  ほのぼのしている。
○19 山眠り  体の芯まであたたまるような。
他に好きな句
 02 黄葉に  いい景。
 04 金庫番  目に浮かぶ。
 05 石蕗咲くや  清らか。
 07 嚔して  思い当たる。
 09 かろがろと  気持ち良さそう。
 10 蒲団干す  なんともまあ。
 12 総持寺の  はっとする。以上です。よろしくお願いします

【 小川春休 選 】
○03 バスを待つ  素直な句で好感を持ちました。「つんつん」がおもしろい。
○08 はばたきの  ハ行音の生み出すリズムが心地よい句です。句に生命力を与えるには、リズムはとても大事です。
○17 芋掘りや  「終戦少女」という語が文句なしに力強い。事実の重みが五七五からずっしりと伝わってくる。
 01 筏ひく  穏やかな写生句、良いですね。
 02 黄葉に  内容は良いと思うのですが、如何せん散文的。「照らされ」というところがこの句の眼目だと思うので、この表現がもっと活きるように推敲してください。切れもあった方が良さそうです。
 04 金庫番  内容はよく分かるのですが、「ひねもす」がちょっと説明っぽいかなぁ…。
 05 石蕗咲くや  かなりハイレベルな句ですが、だからこそ「汲めば」が気になる。必要以上に句に因果関係を持ち込んでいるような…。「水神さまに水汲みて」とすんなりと詠んだ方が、「石蕗」のさりげないたたずまいとも響きあうのでは?
 10 蒲団干す  面白いのですが、この面白さはちょっと川柳っぽい気もします。
 12 総持寺の  何の変哲もない句のようですが、じっくり読むと「飛ぶ」の二文字に力がありますね。
 13 父の背に  良い句ですねー。私もこんな父ちゃんになりたいものです。
 18 雑炊に  そうそう、雑炊ってそういうもんですよね。あまり深く考えず、勢いで作っちゃう。でも、「あれやこれや」言いたい側の気持ちもよく分かる。そういう楽しそうな食事の景が見えてきますね。今回、採りたい句が多くて困りました。


来月の投句は、12月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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