ハルヤスミ句会 第八十六回

2007年12月

《 句会報 》

01 暖かやヒマラヤ桜咲くあたみ    あたみ

02 紅葉山葉書狭しと描きけり     春休(あ・阿・山)

03 県境をワンマン列車木守柿     どんぐり

04 ジャンパーの背負はされたるランドセル つばな(春)

05 裏山は蜜柑黄金や賑わえり     あたみ

06 汽車が出て木の葉が出たるトンネルを どんぐり

07 良き出汁の出て神等去出の焼竹輪  春休

08 茶碗蒸しに百合根見つけし嬉しさよ 阿昼

09 山城の跡に着くただ冬木立     どんぐり(山)

10 雪嶺にかかる雲なり石叩      つよし(あ・春)

11 裸木に枯れ実あまたやプラタナス  つよし

12 アコーデオン冬の空気を吸うて吐き 春休(鋼・ど・阿・山)

13 鶺鴒のちゆんと一鳴き冬の芝    つよし(阿)

14 討入りの日かと炬燵を這ひ出せり  阿昼(ど・あ)

15 さんざめく冬の星へと細き枝    つばな(ど)

16 ばあちやんと冬の出湯に泳ぎけり  阿昼(春)

17 炬燵より出づるに覚悟いりにけり  つばな(鋼)

18 一人寝の羽毛蒲団に齢かな     あたみ

19 時雨聞くついでに鳩の足音も    春休(鋼)



【 鋼つよし 選 】
○12 アコーデオン  春夏秋冬、冬の空気のほうが合っていそう。
○17 炬燵より  覚悟とおおげさななのがよい。
○19 時雨聞く  意外な取り合わせと表現がよい。
そのほか選びたかった句。
 07 良き出汁の出て神等去出の焼竹輪  
 09 山城の跡に着くただ冬木立 
 16 ばあちやんと冬の出湯に泳ぎけり 
以上 よろしくお願いします。

【 渋川どんぐり 選 】
○12 アコーデオン  その楽器を、そんなふうに、見たことはありませんでした。うーむ、なるほどー。
○14 討入りの  「おのおのがた、討入りでござる」と大石(長谷川一夫)の声に促され・・・(これ、分かる人、挙手願います)。とにかく、良い脱出方法ですね。
○15 さんざめく  と、ありながら、この上なく静かな世界ですね。冴え冴えとした冬の夜空。葉を落とした枝の、線の美しさ。
この他にとりたかった句です
08 茶碗蒸しに  百合の花もきれいですが、百合根もきれい。思わず、にっこりしてしまいますね。
17 炬燵より  実感!の句です。炬燵が大好きなもので。
19 時雨聞く  こんな耳を持ちたいです。心のゆとりと。
年末で、ご多忙でしょうに、面白い句が多かったですねー。
で、あの、私、なんと、季語の「木守柿」を「子守柿」と間違って、
投句してました。どんな柿だよー??すみません。来年は気をつけます。

【 梅原あたみ 選 】
○02 紅葉山  絵手紙なぞ頂いた時はとても嬉しいものです。私は特別記念になるハガキだけ、アルバムに収めておきます。だいたい何時の時も,素晴らしく心のこもった葉書を下さる方のは個人用のアルバムが出来ています。楽しい思い出と成り有り難いものです。
○10 雪嶺に  何故かあこがれに近い景色**熱海には**
○14 討入りの  こうしてはいられない**寒いの、何の、と言うまえに、やるだけの事はやり終わらせなくては**気持ちのひき締まる思い。

【 中村阿昼 選 】
○12 アコーデオン  冬の街角でのライブでしょうか。冬枯れの町にアコーディオンが呼吸しているような生命感があり、そうして奏でられる音のノスタルジックな響きがよいです。
○13 鶺鴒の  冬の枯芝だからこそ、鶺鴒の可憐さが増すと思います。
○02 紅葉山  葉書をもらった人も行きたくなるような紅葉山なんでしょう。
他に好きだった句
04 ジャンパーの  買ってもらったばかりのランドセルを背負って。ジャンパーもきっと大きめで指先だけが出ていたりして。待春の頃かなあ。

【 山田つばな 選 】
すみません〜。今回ちょっと忙しいので、選だけにさせてください。2*9*12以上です。どうぞ良いお年を。
○02 紅葉山葉書狭しと描きけり
○09 山城の跡に着くただ冬木立
○12 アコーデオン冬の空気を吸うて吐き

【 小川春休 選 】
○04 ジャンパーの  「背負はされたる」としか言い様のない子どもとランドセルとの大きさの関係がはっきりと見えてきます。見事。
○10 雪嶺に  雪嶺と下界とのコントラストが効いています。「石叩」から景がよく見えてきます。
○16 ばあちやんと  辻桃子の弟子としては、出湯とくれば泳がない訳にはいきません(?)。「冬の」がけっこう良い仕事してる気がします。
 01 暖かや  「あたみ」は地名の熱海でしょうか? それならば、漢字で表記した方がよいと思います。それと、作者の思いとしては冬の句として作ったのかなと思うのですが、冬の季語が入っていません。もし冬の句として作るなら、上五を変えてはいかが?
 03 県境を  ツキスギとまでは言いませんが、上五中七と下五の雰囲気が近すぎるような気がします。
 05 裏山は  「蜜柑黄金や」で十分に明るさは伝わってくるので、「賑わえり」は言わなくても良いのでは、と思います。上五中七は良いので、下五を変えれば味のある句になりそうです。ぜひ推敲を!
 06 汽車が出て  何だかごちゃごちゃしてますね。もうちょっとすっきりと、助詞も動詞も少なくして句を推敲してみてください。
 08 茶碗蒸しに  私もたまに「嬉しさよ」「めでたさよ」とかいう句を作るのですが、経験上、もっと意外な嬉しさ・めでたさでないと、句として成り立ちにくいようです。この句の場合、どちらかというと、「百合根」の描写を具体的にした方が、嬉しさが伝わるのではないでしょうか?
 09 山城の  雰囲気は良いと思うのですが、散文的になってる気がします。
 14 討入りの  「17炬燵より」と似た趣向の句ですが、少しこちらに軍配が上がりそうです。
 15 さんざめく  あくまで個人的にですが、「冬の星がさんざめく」というのは、表現としてはそれほど新鮮味がないように思います。それよりも、「細き枝」がさんざめいた方が新鮮ではないでしょうか。「細き枝冬の星へとさんざめき」「細き枝冬の星へとさざめくよ」とても気になる句だったので、ぜひ推敲してみてください。

来月の投句は、*月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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