ハルヤスミ句会 第八十九回

2008年3月

《 句会報 》

01 流氷やただ捨てられただけのこと  つばな

02 春一番婚儀の窓を鳴らしけり    春休(鋼・ま)

03 城堀の大鯉跳ねもしうららかに   あたみ

04 鼻の穴広げて梅を嗅ぐ子かな    阿昼(あ)

05 梅なりにゆくやげそ焼き雀焼き   まどひ(鋼・春)

06 畦塗りの鍬の光れる春田かな    つよし(山)

07 残雪に前転もして下山かな     どんぐり

08 如月の鋏入れるや逃げる髪     まどひ(ど)

09 春の日やDOCOMOの裏の干雑巾 阿昼(山・春)

10 あちこちに飛んで出でたりクロッカス つよし

11 浮世絵が縁で嫁ぎぬ梅の頃     春休(ど・阿)

12 この雨で梅も終ひと小屋の犬    阿昼

13 龍天に昇るやわれ天守閣      あたみ

14 お土産は鮭のおむすび鳥帰る    つばな(ど・阿・春)

15 暮きって拗ねてふらここより降りず まどひ(山)

16 雨混じり霰混じりの黄沙降る    つよし(あ)

17 少年の選手宣誓水仙花       どんぐり(あ)

18 まっすぐや水仙の芽の志      つばな(鋼)

19 永き日のつかれに牛の涎して    春休

20 天守閣春の冨士をば望みなむ    あたみ

21 春ともし婚儀のあとの庭ひろく   春休(◎阿・ま)

22 春宵を酒粕抱いて帰りけり     どんぐり(ま)



【 鋼つよし 選 】
○02 春一番  春一番と婚儀がいろいろに読めてよい。
○05 梅なりに  雀焼きの下五が良い。
○18 まっすぐや  土から出たばかりの水仙確かに真っ直ぐです。スッキリした句。

【 渋川どんぐり 選 】
選句です。ほんと、おもろくて、困った、困った。
宜しくお願いします。
○08 如月の  逃げる髪がいいですね。子どもの髪の美しさが強調されて。仲春の光にキラキラ!!
○11 浮世絵が  詳しく聞いてみたいお話です。梅の花のように清楚で美しい花嫁姿だったんでしょうね。
○14 お土産は  どうぞ、お元気で。お土産にこれを。と、渡り鳥におむすび持たせてあげたような楽しさやよし。 
この他にとりたかった句です。
 04 鼻の穴  表情や仕草が浮かんで。ふっふっふっ・・・としばらく、笑えます。
 13 龍天に  難しい季語。なかなか使えません。龍も昇れば、われも昇る。なるほど!
 21 春ともし  にぎやかな祝宴のあと。お父さん、お母さんの心境か。やさしい春ともし。
以上です。

【 梅原あたみ 選 】
○04 鼻の穴  幼い子供の素直なしぐさを思い浮かべ、微笑ましく、家族の様子が解る様です。
○16 雨混じり  なんといろいろ、おまけに黄砂までも降ったのですから大変な一日だったでしょう。今度は花粉に悩まされますのでご用心下さい。
○17 少年の  大会の選手一同を代表して、晴れの宣誓をする緊張感。見ていてすがすがしくて、気持ちの良いものです。水仙の花の気高さが良いと思いました。

【 中村阿昼 選 】
◎21 春ともし  「庭ひろく」は嫁がせたあとの親御さんの気持ちそのままなのでしょうね。寂しさはあるけれど、やわらかな春の灯に穏やかな幸せを感じます。
○11 浮世絵が  梅が効いています。梅にまつわる物語は多いけれど、ここにもどんな物語が!
○14 お土産は  お土産の句は難しいけれど、コンビニで売ってそうな鮭のおむすびが、鳥帰るというちょっとセンチメンタルな季語を裏切っていて面白い。
今回は好きな句が多かったです。
 02 春一番  緊張の席にちょっとした春一番のいたずらですね。
 07 残雪に  そんなに急いで帰らなくても、ってからかわれてたりして。
 13 龍天に  天守閣から天に昇る龍を見ているというのは面白い。字足らずが惜しい。
 17 少年の・18 まっすぐや  水仙の二句は初々しい!
 19 永き日の  遊び疲れた目には牛も眠そうに。行楽帰りの電車の中でお父さんが居眠りしてるのかも。

【 山田つばな 選 】
○06 畦塗りの  まっすぐに見ている確かさが、気持ち良い句。
○09 春の日や  ソフトバンクの父さんの白い犬が、きちんと干しなさいと声をかけているようで楽しい。
○15 暮きって  かわいい。ぎゅーっと抱きしめてあげたい。

【 舟まどひ 選 】
○02 春一番  窓だから披露宴でしょうね。宴たけなわの大きな硝子窓を鳴らすほどの春一番だったのですね。
○21 春ともし  宴の後静まり返った部屋から庭へでると先程、部屋から見えていた庭がやけに広々としているという句。ほっとして何か寂しい。
○22 春宵を  何かの集まりでおみやげに頂いた酒粕か。わざわざ少し遠くの美味しい店まで買いに行ったのか。いい匂いで少し酔ったような気分で春宵の道を歩いている情緒。

【 小川春休 選 】
○05 梅なりに  広がりのある句。しかし何といっても句に確かさをもたらしているのは「雀焼き」の持つ土俗性とリアリティ。「梅」を脇役としてさりげなく描いた手腕も確かなもの。個人的には、太宰治の小説で雀焼きを食べる話があったのを思い出し、とても懐かしい気がしました。
○09 春の日や  句の中に、しっかり生活感を取り込んでいる。「DOCOMO」の句は初めて見た気がします。あんなに毎日目にしているのだから、もっとあっても良さそうなものですが…。伝統のある行事も大事ですけど、もっと「今・ここ」を句にしなくちゃいけないなという気がしてきました。先人も、こんな句を残しているくらいですから。「春の雨街濡れSHELLと赤く濡れ」(富安風生)ガソリンスタンドの句ですね。念のため。
○14 お土産は  帰っていく鳥と、家路に着く人。そのモチーフ自体は珍しいものではないですが、鮭むすびを配したことで、何か、ちょっとした温かみのようなものを感じる句になっています。帰れば、待ってる人がいるのです。
 04 鼻の穴  前半部分の描写には確かに発見があります。しかし「子」でまとめるとその発見の鮮度が落ちる気がする。例えば「梅嗅ぐやちひさき鼻の穴広げ」などと梅と鼻の穴だけにクローズアップした方が絵として鮮明だし、子どもの鼻の穴ということも十分伝わると思う(ちなみに、「子」と言わずに子どもであることを伝えるのに「小さい」という語を使う技は覚えておいて損はないと思います。他にも、着ている物、持ち物、行動・言動などによっても「子」と言わずに子どもであることを伝えられる場合があります。目下の研究課題です)。
 06 畦塗りの  素直な句ですが、こういう句あったような、という気もします。
 07 残雪に  ユーモラスな句ですが、「下山かな」でまとめてしまうと焦点がぼやけてしまう気が…。「前転」の方にピントを合わせてみては?
 08 如月の  今回、良い句が多くて困りました。この句も、着眼、雰囲気ともに良かったのですが、内容がしっとりした感じなのに、口に出して読んでみるとちょっとリズミカルなのがそぐわない気がしました。リズムもしっとりとしたものになれば、格段に良い句になるはずです。
 10 あちこちに  これも、派手さはないけど良い句だと思いました。
 13 龍天に  素材としては面白いので、字足らずが解消するように推敲してみてください。
 15 暮きって  雰囲気は好きですが、心底惜しいと思うのは、「拗ねて」が読者の読みを限定し過ぎている点。読みを限定し過ぎてしまうと、季語の持つバックボーンが生きてこない、利いてこない。例えば「暮きつて未だふらここより降りず」とすると、何かこの「遊び」が今も永遠に続いているような、現在の事として詠まれていながら、遠い昔の、自分が幼かった頃の事でもあるような、そんな広がりがこの句に生まれてくるのではないか(とまで言うと言い過ぎかもしれませんが…)。
 20 天守閣  「春の冨士」も悪くはないですが、「雪解の富士」とかいろいろ言い様はありそうな、という気もしました。
 22 春宵を  好きな句。酒粕の甘い香りが春宵の気分によく合ってます。


来月の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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