ハルヤスミ句会 第九十回

2008年4月

《 句会報 》

01 触れ合へば壊れてしまふしゃぼん玉 まどひ

02 対岸やおぼろなる灯を連ねては   春休(山)

03 ぼんぼりをぬければ花の森となる  どんぐり(鋼・あ・阿・山)

04 花衣みごもりしとは見えざりき   春休(鋼・あ)

05 暮れかぬるしだれざくらにふく風は つばな

06 春嵐はじめの一歩つまずきて    あたみ

07 すがりつくべきは傘のみ春嵐    春休(ど・山)

08 桜挿して明日は燃えるゴミの日で  阿昼

09 雨戸打つ春の嵐と心臓と      あたみ(春)

10 この花へ今年は駆けてゆく子かな  阿昼(ど)

11 花の庭持ちて売家の売れのこり   春休

12 花に触れさくらと叫ぶすべり台   阿昼

13 初蝶のかげよ障子にうつりしは   どんぐり(阿・春)

14 町内の役員引継ぎ四月かな     あたみ(ど)

15 芽柳の向かうにゆるる家並かな   どんぐり

16 さしだせどつかまへがたくちるさくら つばな

17 風吹くや終の花びら尽くるまで   まどひ

18 さくらちるつんとよりくる犬の鼻  つばな(あ・春)

19 橋架けて霞の中や向かう岸     春休

20 大小の空箱重ね夏みかん      あたみ

21 さいふからっぽ山吹の七重八重   まどひ(鋼・阿)

22 一面の青麦畑車窓より       あたみ



【 鋼つよし 選 】
○03 ぼんぼりを  花の森という下五が作者の目を感じる。
○04 花衣  身ごもった人をみてすなおな思い。
○21 さいふからっぽ  とりあわせが良い。

【 渋川どんぐり 選 】
○07 すがりつく  これが頼みとすがりついた傘も、おちょこになったりする・・・。すさまじきものは、春嵐。
○10 この花へ  去年は、抱っこされて見たのかな。毎年見たい花がある。来年もまた、大きくなって、元気で来られますように。
○14 町内の  先日、わが町の道路掃除の時も、新自治会長の挨拶があり。初々しくて、よかった。これも、春なり。
この他に、とりたかった句です。
 06 春嵐  大丈夫。つまづくもんなら、最初につまづくが、よろし。と、思えるのは、春のせいか。
 17 風吹くや  そうですねー。あるんですねー。桜にも、最後の一片というもの。
 21 さいふからっぽ  蓑一つだに無く、さいふはからっぽかー。俺もからっぽだけど、心配すんな。と思える山吹の鮮やかさ!

【 梅原あたみ 選 】
○03 ぼんぼりを  お花見の状景が目に浮かびます。ライトアップの花見もおつなもので私の好きな一時です。
○04 花衣  健康そうな女性の花衣はその方にお似合いなのです。みごもりしとは身えざりきなんて素晴らしい。
○18 さくらちる  犬は猫と違い、頭が良い様に思います。犬ひいき目の私はこの句に愛着心を注ぎたく成りました。猫さん御免なさい。

【 中村阿昼 選 】
○03 ぼんぼりを  「花の森」という言い方が、観光地っぽくなくていいなーと思います。山里の神社やお寺の裏山が幻想的な花の森になっているのかも。
○13 初蝶の  影絵の世界。まだあまり日差しが強くない頃、初蝶の淡い影はまたすぐに消えてしまったことでしょう。
○21 さいふからっぽ  山吹はほんとにゆたかに咲きますね。さいふが空っぽでも山吹を見ているとゆたかな心持になれるような気が。
他に好きな句
 04 花衣  そういうことってありますね。細雪の姉妹のような美しいひとなのでしょう。
 07 すがりつく  人生もまた春嵐の頃を思い出します。
 19 橋架けて  ほんとうならすぐ向こうが見えそうな小さな木の橋かと。
以上です。

【 山田つばな 選 】
○02 対岸や  向こう岸は賑やかな明るい春。こちらがわは……?
○03 ぼんぼりを  春の楽しそうな、おめでたい感じがします。
○07 すがりつく  なんか歩くのも、生きてゆくのも大変だなぁ…と。
他に好きな句。
 01 触れ合へば壊れてしまふしゃぼん玉
 10 この花へ今年は駆けてゆく子かな
 13 初蝶のかげよ障子にうつりしは
 15 芽柳の向かうにゆるる家並かな
 19 橋架けて霞の中や向かう岸
以上です。こちらは雨で、ちょっと寒いです。

【 小川春休 選 】
○09 雨戸打つ  不思議な表現の仕方ではありますが、雰囲気はしっかり伝わってきます。全てを言い尽くしてしまっていないところに魅力のある句です。
○13 初蝶の  内容・言い回しともに申し分ない句。うまいです。
○18 さくらちる  「つんとよりくる」がさりげなくも愛らしいです。犬が好きでないと書けない表現だと思います。桜のムードに呑まれてないところも良いです。
 01 触れ合へば  う〜ん、ちょっとしゃぼん玉らしすぎるというか、しゃぼん玉という季語の本意をなぞっただけで終わっている感じです。もっと深く踏み込むか、裏切りのある句にするか、今後に期待です。
 03 ぼんぼりを  「ぬければ」ではなく「ぬけるや」ではないか、「となる」がベストか(「であり」「深く」「の中」等)、いろいろと欲の出るところですが(いや、「ぼんぼりをくぐりぬけるや花の森」の方がシンプルで良いか…?とか)、それもこれも目の付け所が良ければこそ。今のままでも良い句ですが、推敲を重ねればもっと良くなるかもしれませんよ!
 05 暮れかぬる  ちょっと「しだれざくら」らしすぎるような気が…。
 06 春嵐  とぼけた面白さがあり、なかなか良いです。
 10 この花へ  おそらく、「去年はまだよちよちだったが今年はしっかり駆けている」というようなことだろうなとは思うのですが、ちょっと文意が曖昧です。言い過ぎてもいけないし、言葉が足りなくても曖昧になってしまう、そこのところのバランスが難しいですね。
 12 花に触れ  すべり台の上に立って、さくらの花びらに触れていると読んだのですが、だとしたら、「叫ぶ」ところとそれが「すべり台」の上であるというところと見所が二つあり、盛り込みすぎっぽい感じです。それぞれの見所で一句ずつ作ったら、どちらも良い句になるのでは?
 14 町内の  「町内の役員引継ぎ」で季語が「四月」だと、あまりにもそのままというか散文的・報告的な感じです。違う春の季語を使って、もっとすっとぼけた句に仕立ててはいかが?
 17 風吹くや  古来から詠まれてきた桜のイメージから踏み出せていないように思います。これから焦らず句を深めていってください。
 21 さいふからっぽ  どことなく「大金をもちて茅の輪をくぐりけり」(波多野爽波)という句が思い出されます。爽波の句と比べるのも酷ですが、「さいふからっぽ」と「山吹の七重八重」という二つの状態描写だけでなく、動きがあった方が句が生き生きとしてくるのでは?

来月の投句は、5月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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