ハルヤスミ句会 第九十一回

2008年5月

《 句会報 》

01 メーデーの隊列にして短かかり  つよし(阿・山)

02 桜蘂降るぶらんこを漕げば酔ふ  阿昼(ど)

03 春炬燵買うて程なく逝かれしよ  春休(◎阿・鋼・ま)

04 てのひらに野苺つつむ帰りみち  どんぐり

05 犬先に行ってしまひし桐の花   つばな(ま・春)

06 食卓の無言しよつぱき豆ご飯   阿昼

07 冷酒で薬飲み干し通夜の衆    春休

08 虫干しの動かぬ柱時計かな    まどひ(鋼)

09 こどもの日園児よろこぶ菓子袋  あたみ

10 弁当を増やせ減らせと雨蛙    春休(あ)

11 初夏の風の入りくる母屋かな   つばな

12 声はずむ端午の節句乾杯を    あたみ

13 街路樹に巻きつきのびて藤の花  つよし

14 万緑の大楠神木まつりかな    あたみ(ど)

15 母を焼く煙かぼそし藤の雨    春休

16 翅たたみ向きを変へたる夏野かな どんぐり(山)

17 まつしろな矢車草が石切り場   つばな

18 牡丹より小さき頭と撫でらるる  阿昼(鋼・ま・春)

19 竹散るや臼を郵便受けとして   まどひ(ど・あ・阿・山・春)

20 野鼠の苗代寒をつつ走り     つよし

21 人住まぬ家の小さき円座かな   まどひ

22 母逝けばこの家は燕住まふのみ  春休(あ)

23 母の日やおだいばぶらりきょろきょろり あたみ

24 先生の前行きたくて捕虫網    どんぐり




【 鋼つよし 選 】
○03 春炬燵  現実につらさがよく出ている。
○08 虫干しの  一つの発見が楽しい。
○18 牡丹より  比喩が良いし楽しい句になっている。

【 渋川どんぐり 選 】
○02 桜蘂降る  ぶらんこに酔う子どもだった私。一面の桜蘂の、濃い紅色にも酔いそうです。
○14 万緑の  大楠の立派な立ち姿。よろずの緑を従えて、楠若葉も美しく。素敵な祭ですね。
○19 竹散るや  晴耕雨読、悠々自適、憧れの生活が垣間見え。臼のなかにも、竹落葉が見えますぞ。
この他に、とりたかった句です。
 03 春炬燵  一緒にあたって、いろんな話をするはずだったのに。突然のお別れ。
 17 まつしろな  石切り場という、かたーい響きに、矢車草。それも、真白とは、意外な取合せでした。
 20 野鼠の  今春、野鼠が走るところを見たんです。たしかに、めっぽう、速かった!

【 梅原あたみ 選 】
○10 弁当を  田植えの時のじょうけいでしょうネ**微笑ましく受け止めました。
○19 竹散るや  ちょつと変わった趣向ですネ*見てみたい作品のようですが写真にのらないのが残念*
○22 母逝けば  人間何時の日か別れの日の来る事は、解っているはずですが、やはり寂しくてやりきれないものです。母との別れ、幼い頃の思い出の一杯残っている故郷の我が家との別れ、四季の訪れは今年も、来年も、再来年もこの家の有る限り燕のみの家の軒と成るのでしょう。

【 中村阿昼 選 】
○01 メーデーの  えっこれだけ?って感じなのでしょうか。まさに現代の句。
◎03 春炬燵  義父がそうだったらしいです。その炬燵は今は我家で活躍しています。
○19 竹散るや  臼のある家の広い庭が目に浮かびます。竹散るがそこはかとなく寂しい。
他に好きだった句。 
 07 冷酒で  冷酒に臨場感があります。
 10 弁当を  えーい、うるさいって感じ。
 11 初夏の  風通しのよい日本家屋の母屋。初夏の風が心地よい。
 21 人住まぬ  そこに座っていたひとはもういないのですね。
 24 先生の  先生と一緒なのも嬉しいのでしょう。子供と言わずに子供の姿がよく見えてきます。


【 山田つばな 選 】
○01 メーデーの  たしかに今って、そんな感じ。
○16 翅たたみ  蝶々かな?くっきり夏野が浮かびます。
○19 竹散るや  いい風景ですね。
他に好きな句、
 02 桜蘂
 03 春炬燵
 22 母逝けば
 24 先生の  以上です。

【 舟まどひ 選 】
○03 春炬燵  わざわざ買った炬燵。冬の間は炬燵にも入れないほどだった。漸くよくなってきてまづは炬燵で読書や針仕事でも、と楽しみにしていたのに。
○05 犬先に  リードをつけていない犬が、いつもの道を先に行ってしまった。自分と桐の花が取り残された。なんだかずっとここにいたいような気分になる。
○18 牡丹より  撫ぜているのはこのお寺の住職。いつもとてもやさしい。「だいぶ大きくなりましたね。お顔も牡丹のようだけど、おつむはまだまだ小さいね」

【 小川春休 選 】
○05 犬先に  何だか気の遠くなるような、ちょっと放心してしまうような感じです。そこだけが時間の流れ方が違うような…。不思議な魅力のある句です。
○18 牡丹より  面白いたとえで、撫でている方の親愛の情も伝わってきます。ただ、「撫でらるる」だと、第一義的には「撫でられているのは自分(書き手)」という感じがします(内容から、自分ではなくて子どものことなんだろうな、と推測はできますが)。「撫でたまふ」などの方が自然に読めそうです。
○19 竹散るや  これは言うことなしに良い雰囲気ですね。
 02 桜蘂  内容は良いのだけれど、ちょっと散文的。あっさりと「桜蘂降るやぶらんこ漕げば酔ひ」で良いのでは?
 06 食卓の  何だかちょっといたたまれない感じの食卓ですね…。無言になってしまうより、「これちょっとしょっぱいよー!」などと言って笑い合える方が良いですよねー。句に関して言えば、ちょっと詰め込みすぎかな。豆ごはんを食べるのは普通「食卓」なので、上五は蛇足とも言えるし…。ぜひ再考を。
 08 虫干しの  もう壊れているんだけど、思い出があるので捨てられない、そんな風情がほのかに伝わってきて好感を持ちました。
 11 初夏の  確かに、どこかで自分も経験したことがあるような景ですが、「初夏」はちょっと漠然としているような気がします。
 14 万緑の  「大楠神木まつり」で季語が「万緑」だと、あまり句に広がりが出てきません(両方ともイメージが近いので…)。季語をもう一度考えてみてください。
 16 翅たたみ  敢えてどんな虫かを述べない凝った作りの句ですが、「夏野かな」でまとめるとピントがぼやけてしまう感じです。たとえば、「翅たたみ夏野へと向き変へにけり」などとあくまで虫の方を中心に描いた方が、しっかりした句になるのではないでしょうか?
 17 まつしろな  余計なことを言わない写生句で、良いと思います。
 20 野鼠の  「の」は主格の助詞として使われているのでしょうが、ちょっと付き方が曖昧な気がします。「野鼠や」とした方がすんなり読めるし、驚きも伝わって良いような…。
 24 先生の  良い雰囲気なのですが、ちょっと可愛らしすぎる気も…。

来月の投句は、6月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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