ハルヤスミ句会 第九十三回
2008年7月
《 句会報 》
01 朝※ぎのトマト烏がほしそうだ あたみ (※「手へん+宛」) 02 入道雲育ち盛りの腹鳴れり 春休 03 噴水や二段三十六方に どんぐり(阿・ま・春) 04 自転車のゆつくり倒る炎天下 つばな(あ・ま) 05 車座の反省会を合歓の下 つよし(ど・春) 06 子は父の腕に手を置き昼寝かな 阿昼 07 膏薬を貼りあうてゐる蚊帳の中 まどひ(鋼・山・春) 08 夜焚火の一つめ水平線につく どんぐり 09 抱かれたるかたちに歪み竹夫人 まどひ(山) 10 真夜中の雷鳴雨を言ひあへる つよし 11 ぬれびかりして白百合の雌蕊かな まどひ 12 七夕の短冊に肉食べたいと 春休(山) 13 夏草やただ一心に釜を引く あたみ(鋼) 14 よぢのぼる箒の先のかぶと虫 つばな(鋼) 15 こんなにもアロハが似合ふおひととは 阿昼(ど・あ・ま) 16 北国のサミットよりもラベンダー あたみ 17 輪抜け様婆様の分もくぐりけり 春休(ど・阿) 18 膏薬をリボンのやうに名古屋場所 どんぐり 19 かぶと虫ひつくり返つたまま前進 つばな 20 8キロのらっきょう掘つて漬け込んで つよし(あ) 21 翅のふち破れ大暑のてふてふよ 春休(阿) 22 子の髪を切つて二人で髪洗ふ 阿昼 |
【 鋼つよし 選 】 ○07 膏薬を 舞台で演じられているような光景を思い浮かべます。 ○13 夏草や 見ているだけで暑そうな感じがよく出ている。釜は鎌と理解しました。 ○14 よぢのぼる 箒の先だから作者の興味深く観察しているさまがよく出ている。 今月は佳句が多く迷いました。 【 渋川どんぐり 選 】 ○05 車座の 大きな合歓の木の下で〜。どう反省しても、「よかった、よかった。」と言ってくれそうな、優しげな花です。 ○15 こんなにも アロハが似合う。これは、ひょっとしてあの方のことかしらん。ひょうひょうと、涼しいお顔の。 ○17 輪抜け様 輪を抜けるのも、お作法があって、なかなかややこしい。この際、みんなの分、くぐっときましょう。 この他にも、面白い句がたくさんありました。 12 七夕の ほんとうに、元気なお願いで、いいなあ!! 14 よぢのぼる のぼった先には、さて、何が?などと思わず、まあ、のぼってみるか。 20 8キロの らっきょう。うわー、お疲れ様です。掘るも、洗うも、むくも大変。 【 梅原あたみ 選 】 今月は選句だけですが、宜しくお願い致します。 ○04 自転車のゆっくり倒る炎天下 ○15 こんなにもアロハが似合ふおひととは ○20 8キロのらっきょう掘って漬け込んで 【 中村阿昼 選 】 ○03 噴水や 噴水の大きさを表すのにこんな方法が! ○21 翅のふち 例年にも増す暑さ。大きな夏蝶のくたびれ加減がわかる。 ○17 輪抜け様 「輪抜け様」がいかにも村のお祭りのよう。来られない婆様の長生きを願ってくぐるのでしょうね。 他に好きな句 04 自転車の 自転車も熱中症? 07 膏薬を クーラーの苦手な老夫婦でしょうか。一度子供に蚊帳を体験させてみたい。 12 七夕の これで七夕の夜は焼肉に決まり! 13 夏草や 釜を引くがわからなかったのですが、鎌でしょうか。「ただ一心」が他に何も考えられないような暑さを表している。 20 8キロの 暑いなか、ご苦労さまです。うちもおばあちゃんのラッキョ、心して食べねば。 【 山田つばな 選 】 ○07 膏薬を 品が良くて情のある昔の白黒の映画を見ているようです。 ○09 抱かれたる うーん、その通りです。深い句だなあ…。 ○12 七夕の かわいい!肉、いっぱい食べさせてあげたいです。 他に好きな句、 01 朝※ぎのトマト烏がほしそうだ (※「手へん+宛」) 15 こんなにもアロハが似合ふおひととは です。 【 舟まどひ 選 】 ○03 噴水や 面白い噴水の表現です。漢数字がいかめしく、噴水の向こうに弁慶の飛び六方が見えるようです。 ○04 自転車の そうそう、こんなに暑いと日常のすべての動きがスローモーションの映像のようになってきます。見るものも又そんな風に見えてきます。 ○15 こんなにも アハハ普段は生真面目にネクタイなどして、礼儀正しい人なのでしようね。アロハを着たとたん、その人の隠れた一面があらわれたのでしょう。少しのやくざっぽさと胡散臭さ、でもそれは新たな魅力だったのでしょう。 【 小川春休 選 】 ○03 噴水や 「四方八方」とかいう慣用句的な捉え方でなく、「二段三十六方」というところが、見ないと書けないリアリティを感じる表現になっています。 ○05 車座の 和気藹々とした、そんなに深刻でない反省会の様子が浮かんできます。もしかすると、缶ビールくらい振る舞われてるのかもしれない。合歓が良い味出してます。 ○07 膏薬を 味わいのある句。老夫婦かな、と思ったのですが、私もこの句の老夫婦のように年を重ねていきたいものです。 04 自転車の 感覚的な句ですが、共感できます。ふっと気が遠くなるような、炎天下の一瞬。 06 子は父の 父と子の手の大きさの差など、他にもいろいろと句にしたい題材がありそうですね。 08 夜焚火の 景としては良いですが、必然性の感じられない字余りが気になります。たとえば「夜焚火や水平線に一つ点き」など、切れを入れたり語順を換えたり、いろいろと推敲して最も良い句形を探ってみてください。 10 真夜中の 「らいめいあめ」という呼び方は一般的なのでしょうか。「かみなりあめ」の方が自然な気がします。雷鳴のことを詠みたいのであれば、「雨」がない方がすっきりして、見所がはっきりした句になると思うのですが。 11 ぬれびかり 素直な写生句ですが、ここからもう一歩二歩踏み込まれることを期待しています。 13 夏草や 「釜」ではなく「鎌」でしょうか。暑い中での草刈の感じがよく出ています。 14 よぢのぼる 箒の先まで来てしまったら、もうよじ登る余地がないように思うのですが…。ちょっと位置関係がはっきりしないようです。「よぢのぼり箒の先やかぶと虫」なら、今登り切った、という感じに読めます。 15 こんなにも 面白いのですが、何だかどこかで似た句を見たことがあるような気がします。 19 かぶと虫 句の内容は面白いのですが、「前進」が固いのでは? 「進み」にすれば字余りも解消できます。 |
来月の投句は、8月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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