ハルヤスミ句会 第九十四回

2008年8月

《 句会報 》

01 海に雨弾けてをりぬソーダ水   どんぐり(鋼)

02 落蝉のほつほつほつと朝の庭   つよし

03 ロープウェイ残暑の街を離れけり 春休(ど・阿・山・ま)

04 釣堀に猫をり猫のお皿あり    阿昼(鋼・ど・あ・山・ま・春)

05 ひぐらしや表紙折れたる文庫本  つばな(あ)

06 冷房に華鬘も袈裟もさりさりと  まどひ(ど)

07 ゼミナール男女のペアー夏休み  あたみ

08 滾る湯にそよぎたうもろこしの髭 春休(ま)

09 甲子園真夏の舞台チアガール   あたみ

10 柳さへ葉の裏暑く吹かるるよ   阿昼(あ)

11 ざつくりと欠けし弥勒の顔灼くる まどひ

12 納涼の烏賊焼きおやじ八十とな  あたみ

13 よその子に肩を揉ませて盆祭り  つよし(阿)

14 かたむきし腕が出てをり秋日傘  つばな

15 アナウンス最後の花火ナイヤガラ あたみ

16 大花火煙の峰を残しけり     春休

17 揚花火去年は泣かなかつたのに  阿昼(山)

18 カウントの10から0へ揚げ花火 あたみ

19 小便の果の身ぶるひ天高し    春休

20 おずおずと弥勒に触るる涼しさよ まどひ(鋼)

21 帰省子の帰るや元の静けさに   つよし(あ)

22 煎餅を割れば米の香小鳥来る   春休

23 ゑのころや世話になつたと胸張つて どんぐり(春)

24 何にでも文句あるてふ星月夜   つばな

25 新涼や小さき蜘蛛の下りて跳ね  どんぐり(阿・春)



【 鋼つよし 選 】
○01 海に雨  ソーダ水との取り合わせが良い。
○04 釣堀に  猫が待ち構えている驚きとユーモアが良い
○20 おずおずと  実感がよく出ていて季語の涼しいが気持ちよい。

【 渋川どんぐり 選 】
○03 ロープウェイ  登った先に、やはり残暑が・・とも思われるが、とりあえず、小さくなる街の景色やうれし。
○04 釣堀に  海のそばの住人なれば、釣堀とは、縁がないけれど、夏のおとぎ話のような楽しさ、と思われました。 
○06 冷房に  これはこれは大きなクーラー。風がブワーッと。さりさり・・・。極楽のような涼しさですね〜。
この他に、とりたかった句です。
02 落蝉の  ほつほつほつは、何か。もし、私の見た光景と同じなら、落蝉の歩く姿かと。ゆっくりと最後の歩み。
17 揚花火  恐いものしらずだった去年だけれど。一年で、また、お兄ちゃんになりました。
24 何にでも  星を見るなら一人。または、無口な人か、星をよく知ってる人と。文句の多い人は、ちょっとねー。

【 梅原あたみ 選 】
○04 釣堀に  可愛いくて、今にも猫が現れそうです。
○10 柳さえ  緑の目にしみる涼しさを思わせるはづの柳もこの暑さには勝てません。
○21 帰省子の  良くある話です。まして子育ての頃は子供にピントを合わせ写真も*パチり*撮りたいところですが、子供は親の心より早く帰りたいと*そんな事も今は昔の思い出に成りました。
○05 ひぐらしや  とてもお気に入りの本、ついに表紙が折れたのですネ、勉強好きな方のがっかりしている様子を思わせます。私の場合、勉強でなくはて?何にがっかりする事でしょう。

【 中村阿昼 選 】
○03 ロープウェイ  見晴らしがいいと、気分的に涼しくなりそう。
○13 よその子に  お駄賃もらって夜店に走るのかな。
○25 新涼や  夏の終わりに生まれた蜘蛛の子かな。小さな蜘蛛の小さな動きに新涼が感じられる。
他に好きな句
 08 滾る湯に  いい匂いがしてきそう。
 16 大花火  煙の峰を見ながら花火の余韻に浸っているのだろう。
 22 煎餅を  小鳥にもおすそ分け?米の香が秋らしい。
 23 ゑのころや  ゑのころが穂を伸ばすころ、夏休みで帰省していた子が帰っていくのかと。

【 山田つばな 選 】
○03 ロープウェイ  山の空気の清浄を感じ ふっと暑さを忘れました。
○04 釣堀に  釣り堀の主?風景が、目に浮かんで好きな句です。
○17 揚花火  大きな音が怖かったのかな?人混みがいやだったのかな?日々成長していく子供と、見守っている親の愛を感じました。

【 舟まどひ 選 】
○03 ロープウェイ  これから広々とした別世界へ行く乗車人としての自分とそれを遠くから客観的に見ている自分と二つの気分が味わえる句。 
○04 釣堀に  なんと言っても「猫のお皿あり」がいい。釣堀の存在感が出てきます。
○08 滾る湯に  滾るの熱さとそよぐの涼しさ。人生の荒波を飄々と生きている人が見えてきます。

【 小川春休 選 】
○04 釣堀に  何でもない景ですが、「猫のお皿あり」と言い切った所が手柄。「御皿」と書いた方が仰々しい感じが出るかもと思いましたが、その辺りは作者の好みですね。ちなみに「釣堀」は夏の季語。
○23 ゑのころや  そうそう、世の中を渡っていくには、そのくらいの図々しさがないとね。「ゑのころ」もさりげなく合ってます。
○25 新涼や  小さい蜘蛛のちょっとした動作から新涼を感じる感覚が良いです。
 01 海に雨  「ソーダ水」はちょっとツキスギ(弾ける感じが…)に感じました。「海に雨が弾ける」というところを深めて、取り合わせにしない方が良い句になると思います。
 02 落蝉の  どんぐりさんは「ほつほつほつ」を歩く姿と読んでいましたが、私は「ほつほつほつ」は落蝉が三匹いる様子と読みました。そのあたりがちょっと表現として不確かだと思います。
 05 ひぐらしや  蜩らしい雰囲気の句だと思います。
 06 冷房に  華鬘とは「仏堂内陣の欄間などにかける荘厳具。金・銅・革などを材料に、花鳥・天女などを透かし彫りにする。(『大辞林 第二版』(三省堂))」。7月に西本願寺の納骨堂に行って参りましたが、まさしくこういう感じでした。「さりさり」に触感が出てます。
 10 柳さへ  良い雰囲気なのですが、「葉の裏」を吹かれるというのがどういう状態なのか、「裏」に限定した意図がよく分かりませんでした。「暑く吹かるるよ」だけで十分なのでは?
 11 ざつくりと  「ざつくりと欠け」、しかも日光で「灼」けている弥勒尊。外で雨風にさらされているのでしょうか? 私は、そういう弥勒を見たことがない(堂内に安置されてるのがほとんど)ので、ちょっとしっくりきませんでした。お地蔵様なら分かるのですが…。
 12 納涼の  「烏賊焼きおやじ八十とな」は面白いと思うのですが、季語があまり働いていません。もっと「おやじ」についてイメージの広がるような季語を考えてみてください。
 13 よその子に  私の小さい頃でも、近所のおじちゃん(友人の父など)とは交流があったものです。今はどうなんですかねー。
 14 かたむきし  今一つどういう状態なのかがはっきりしません。何でかたむいているのか…。足元が不安定だったのか?
 17 揚花火  素直で好感の持てる句。うちの子も前より虫が嫌いになりました。子どもの成長・変化は面白い。
 20 おずおずと  良い句だと思うのですが、「おずおずと触れて涼しき弥勒尊」とする案もあります(私はこちらの形の方がかっちりしていて好きです)。「涼しさ」に重点を置くか、「弥勒」に重点を置くかの差でもあります。ぜひ考えてみてください。
 21 帰省子の  う〜ん、確かにそうなんですが…。「元の静けさ」を何か具体的なものや景で表現しないと、ちょっと漠然としてしまいます。

来月の投句は、9月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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