ハルヤスミ句会 第九十六回

2008年10月

《 句会報 》

01 柿もぐや急流に身を乗り出して  まどひ(鋼・山)

02 大き葉に乗せ無花果のおすそわけ どんぐり(山)

03 みちくさと読みて写真通草とな  あたみ

04 屋上の庭の草抜く秋の昼     つよし(ど)

05 運動会風を孕みて鳶高く     春休

06 駆けつこの形に秋の昼寝かな   阿昼(あ・山・ま)

07 バイクにて農道コスモス咲くを見ゆ あたみ

08 錦秋の風に光りし蜘蛛の糸    つばな(あ)

09 稲架組むや御城は山の天辺に   春休

10 竹垣を低く越えゆく赤とんぼ   つばな(阿)

11 干し柿を吊るす喧騒街の中    つよし

12 坂道登り切りコスモス畑なり   あたみ

13 秋の日に透けて鴎の羽根に骨   春休(ま)

14 ロープウェイ葛の花はと覗きけり 阿昼

15 溢蚊よ天守閣までよう来たな   春休(◎阿・鋼・ま)

16 十三夜かげりて川の深き黒    つばな(あ)

17 虫の目に闇ありありと見ゆるかな まどひ(ど・春)

18 弟の退院祝う荒尾梨       あたみ

19 月の客二十歳二人のおとなしく  どんぐり(阿・春)

20 ボンネットバスの正面秋の山   阿昼

21 木犀や王退任の記事見入る    つよし(春)

22 待ち合はす秋の彼岸の足湯にて  春休(鋼・ど)

23 犬と犬嗅ぎ合ひ秋の深むかな   まどひ

24 秋の枯葉焚く喉飴ふくみつつ   あたみ

25 有明や月の色よく坐りよく    どんぐり




【 鋼つよし 選 】
○01 柿もぐや  危なそうな景色が浮かんでくる
○15 溢蚊よ  小さな蚊が天守閣まできた驚きがよくわかる
○22 待ち合はす  下五の足湯という意外性が良い

【 渋川どんぐり 選 】
○04 屋上の  屋上の庭。すこーんと澄んだ秋天がすぐ近く。下界の見晴らしもよく・・・。     
○17 虫の目に  闇が見ゆるかな?見ゆるかも。それもありありと。虫になって、見てみたいですね〜。
○22 待ち合はす  足湯とは、なんと良い待合せ場所。それも秋彼岸とあれば、極楽・・・。今度やってみよう。
この他に面白かった句です。
 06 駆けつこの  気合十分ですな!応援に行きたくなります!
 09 稲架組むや  稲架と山城。いい風景です。
 15 溢蚊よ  気の毒なほどの、動きの鈍さ。天守閣にお越しとはアッパレ。
 21 木犀や  向日葵の長嶋さん。月見草の野村さん。王さんは香り高き木犀。なるほど。

【 梅原あたみ 選 】
○06 駆けつこの  夏の昼寝は大の字にいかにも何者も寄せ付けまいと言った寝姿、それに引き換え秋は体を丸める様に何時の間にか自分の体温を逃がすまいとでもするかの様にそれが「駆けつこの様に」となるのでしょうネ*ゆかいな詩だと思いました。
○08 錦秋の  錦秋はあざやかな景色を思わせその中の一筋蜘蛛の糸は細く長く風にさからい光っている。美しい景を頂きました。
○16 十三夜  月の光に川が美しく見えた。が何時か月は雲の陰、見えるのはただ川の流れと墨絵の様な薄くらい川の底*アア*もう秋の深まりを感じます。

【 中村阿昼 選 】
◎15 溢蚊よ  今年の秋は松山城に2回行ったが、天守閣には上がっていない。階段急だし、観覧料がいるし、というのが理由だが、この句を読んで上って見たくなった。溢蚊でさえ上るのだもの。
○10 竹垣を  秋の深まりつつある頃のように思うのは、「低く」のせいかな。竹垣のくすんだ色に、赤とんぼの赤が効いている。
○19 月の客  おぢさん、おばさんパワーに圧倒されているのでしょうか。今年の月は車の中から見ただけだったけど、来年はにぎやかなお月見もいいな〜。
他に好きだった句。
 09 稲架組むや  小さなのどかな城下町なんでしょう。宇和島城あたりを思いました。切り出したままという感じの石段は高さがあって、天辺まで行くのはしんどいのですが、春は海へ散る桜がいい風情です。
 18 弟の  弟さんの好物なんですね。病院では食べたいものが食べられなかったのでしょう。
 21 木犀や  木犀の香の中、いろんなこと思い出してるのでしょうね。
 22 待ち合はす  柳散る足湯に浸かりながら、彼岸の人を待っているようにも読めるかも。

【 山田つばな 選 】
○01 柿もぐや  うわぁ、大丈夫でしたか?柿はおいしいですもんね。でも折れやすい木だそうですから、気をつけてください。
○02 大き葉に  おままごとのような昔話のような森の動物達のような、ほのぼのします。
○06 駆けつこの  わかるわかると思いました。疲れ果てるまで、遊んだんでしょうね。

【 舟まどひ 選 】
○06 駆けつこの  分かり易く素直な句。シンプルですが、秋の昼寝で駆けっこがいきてきます。ただの昼寝では暑苦しいだけです。
○13 秋の日に  やはり秋の日で透けた羽根の美しさ、淋しさ、爽やかさ、そして孤独感が出たと思います。
○15 溢蚊よ  溢蚊とよう来たなの言い方がぴったり。思わずご苦労さんと言いたくなります。建物も他の高い建物では駄目で、天守閣なればこそです。

【 小川春休 選 】
○17 虫の目に  どんな虫か明記されてはいませんが、色合い、目の大きさなどのたたずまいから、おそらくコオロギと見た。「見ゆるかな」でもまとまってはいますが、この五文字分でもっと内容を充実させることもできるかもしれません。
○19 月の客  目上の人が多い席では若者ってこういうものですが、それをずばりと言い止めた所が手柄。
○21 木犀や  最初から良い句だとは思っていましたが、どんぐりさんの選評を読んで納得しました。王さんと木犀が合っているんですね。ただ読むのではなくて、見入るというところも、書き手の気持ちが伝わってきて良いです。
 01 柿もぐや  内容に対して詠みぶりが穏やかすぎる気がしました。もっと「急流」を強調して、人の動きを出すには、「急流や柿をもがんと乗り出して」などとした方がマッチするのでは?
 02 大き葉に  素朴で好きな句だったのですが、三句選にはぎりぎり入りませんでした…。個人的には「大き葉に乗せて無花果おすそわけ」とした方がすんなり読める気がしますがいかが?
 03 みちくさと  中七の字足らずは解消すべきでしょう。上五で「みちくさ」としていますが、下五はどう読むのか、あけびかみちくさか、判断がつきませんでした。
 07 バイクにて  バイクと農道のコスモスだけで(そのどちらかをもっと詳しくすれば)一句になると思います。「咲く」「見ゆ」どちらも省略できます。
 08 錦秋の  「光りし」だと、今まさに光った!という感じではありません。「光れる」「光りて」「光るや」など、推敲してみてください。
 11 干し柿を  街の描写として「喧騒」は常套句です。干柿と街とにミスマッチを感じた、そのミスマッチを書き手なりに突き詰めてみてほしいです。
 12 坂道登り  句またがりと字余りの合わせ技で、とても読みにくいです。せめてどちらかだけに。
 14 ロープウェイ  これは、実際に見た人でないと、ロープウェイと葛の花の位置関係がはっきりしないのではないかと思いました。
 16 十三夜  「かげりて」「深き黒」では、原因・結果を全て言い尽くしている感があります。「かげりて」は言わないで句にすることはできないでしょうか?
 18 弟の  素直な句で好感を持ちました。「荒尾梨」に味がありますね。
 24 秋の枯葉  「秋の枯葉」と言われても、一般的な(冬の)枯葉と違うイメージは特に浮んできません。「秋の」がなければ○でした。例えば「枯葉焚くあまき喉飴ふくみつつ」とか。
 25 有明や  月を「坐りよく」とは良い表現だと思いましたが、「色よく」が蛇足に感じました。


来月の投句は、11月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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