ハルヤスミ句会 第九十七回

2008年11月

《 句会報 》

01 二三歩にまたや猿酒     まどひ(山)

02 くうるりと秋の渡船の回りけり  阿昼(山)

03 コスモスや小雨ごときにくねくねと 鳴雪(春)

04 残菊の曲がりくねって咲きにけり あたみ

05 椎の実の降れるお宿に夜学かな  まどひ(鋼)

06 北窓をふさぎ革靴つやつやと   春休(鋼)

07 この町に八百屋三軒鯊日和    阿昼

08 冬薔薇のかつちり硬き蕾かな   どんぐり(阿)

09 稲の穂や一夜の雨に乱れけり   鳴雪

10 革靴や朝の舗道に冴えざえと   春休(鳴)

11 着ぶくれて来るが恩師でありにけり どんぐり(あ・阿)

12 冬日向ちと肥えたると腹さすり  つばな(あ)

13 白息につつまれ笑ひあひにけり  春休(ま・鳴)

14 けふのまた空の青さよ木守柿   つよし

15 だんだんに早起きにがて冬に入る あたみ

16 持ち株のどんと下がりや炬燵出す つよし(春)

17 神無月解放された心もて     鳴雪

18 酔ひ止めの薬一粒冬の月     つばな

19 猪の寝床や落葉ふんだんに    春休(あ・鳴)

20 今朝起きて炬燵出そうか出すまいか あたみ(鋼)

21 大根の葉の青々と干されけり   どんぐり(山)

22 ひろびろとせし駅の前冬の蠅   つばな

23 紅葉かつ散りそれぞれに裏表   まどひ

24 山茶花のちらほら咲きや冬立ちぬ つよし

25 冬田売る噂またたく間に村に   春休(鋼・阿・ま)

26 枯芝に蜜柑の白き筋外す     阿昼(ま・春)

27 星の数すみし夜空の冬に入る   あたみ



【 鋼つよし 選 】
○05 椎の実の  晩学の景色かなと思いいいと思う。
○06 北窓を  革靴というなんでもないものを取り合わせたところ買う。
○20 今朝起きて  炬燵出す 素直な感想。
○25 冬田売る  うわさはどこから出るやらまたたく間が妙。

【 梅原あたみ 選 】
○11 着ぶくれて  久し振りにお逢いした方、それは恩師で有りました。でもすっかりお歳をめしたせいでしょうか着ぶくれを強調する俳句になりました。
○12 冬日向  太りすぎは良く有りません。でも太ってしまう。お腹をさするしぐさが目に浮かび,他人事より我が身にしみる句でした。
○19 猪の寝床  落ち葉をふんだんにと言う事は少し早めに落葉する地域でしょうか?いずれにしても猪の姿は里まで近づき今熱海でも名物の蜜柑畑を荒らされて農家では悲鳴をあげています。そのため電気柵や罠を仕掛けて荒らされない様な対策をしているようです。でも猪の寝間が落ち葉で一杯となると、これも又捨てがたい可愛らしさも感じてしまいます。一度見てみたいです。

【 中村阿昼 選 】
○08 冬薔薇の  語調がよくて冬薔薇らしい。おさげ髪をきっちり結った少女のような蕾。
○11 着ぶくれて  きっと昔から寒がりの先生。着ぶくれの丸い姿が懐かしい。
○25 冬田売る  今年の米が最後だったのか。またたく間に噂が広がるのが村らしい。
他に好きな句
 03 コスモスや  たしかにコスモスはくねくねしている。「小雨ごときに」と言いたくなる気持ちわかります。
 13 白息に  寒い日は一人だと顔もこわばってくる。心置きなく笑い合える相手がいる幸せ。
 14 けふのまた  どんよりした冬空が続いた後の青空は格別。子守柿の小さな赤が映えて。
 15 だんだんに  気持ちよーくわかります。これからますます早起きがつらい。
 22 ひろびろと  もう少しリズムが整うといいかなと思うけれど、冬の蠅の目になって閑散とした駅前を見ているような気がします。

【 山田つばな 選 】
○01 二三歩にまたや猿酒
○02 くうるりと秋の渡船の回りけり
○21 大根の葉の青々と干されけり
 すみません、今回ちょっと忙しくて選だけでお願いします。

【 舟まどひ 選 】
○13 白息に  何人かで待ち合わせて、やっと揃ったところですね。目的地へ行く前にうれしくて立ったままその場で話が弾んでしまったのでしょう。冷たい空気に仲良しのそこの輪はあたたかく、幸せが白息につつまれているのでしょう。
○25 冬田売る  今年の収穫はどうだったのでしょうか。淋しげな冬田と「売る」ということが大事件になる村の雰囲気、その土地の暮らしぶりなどいろいろ想像されます。
○26 枯芝に  この句、なぜだかとても好きです。どうしていいのかうまく説明できないのですが言い方のうまさと、冷たい澄んだ空気にみかんのいい匂いがして、そしてここにも人のあたたかな輪がみえるのです。でも一人としてみても又いい雰囲気です。

【 石川鳴雪 選 】
○10 革靴や  作者の誇らしげな気持ちを私は読み取りました。ともすれば雑踏では不安をかき立てられがちな中、心を支えるものとして矜持は大切だと思いました。
○13 白息に  具体的な状況が特定されて居ず読み手の空想に任されて居るのいいと思いました。
○19 猪の  恐らく客観的な猪の生態からは否定される側面もあるのでしょうが、多分にメルヘンな空想がいいと思いました。

【 小川春休 選 】
○03 コスモスや  もうだいぶ花も終わりに近い頃のコスモスでしょうか。確かに、雨にも風にもいちはやく揺れるコスモスですが、「小雨ごときにくねくねと」という言い回しに勢いがあって良いです。
○16 持ち株の  果たしてこの株はその後下げ止まったんでしょうか…。気になるところです。株はどーんと下がったけれど、その他の生活は平常どおりという感じが、独特のペーソスとともに伝わってきます。もしかすると、お父さんがへそくりを株で運用していて、他の家族はそれを知らない、なんていう事情があるのかもしれませんね。ご愁傷様です…。
○26 枯芝に  少々散文的ですが、おそらくは、坦々とした表現の方が意図にかなうと判断した上でのものと受け取りました。個人的には、「枯芝に外す蜜柑の白き筋」と名詞で受ける形もアリかな、と。それと「筋」「外す」のどちらかくらいはひらがな表記にした方が、句の雰囲気とも合うと思うのですが、いかがでしょうか(どちらも漢字は少し固い)?
 02 くうるりと  これはこれで良い句だと思いますが、「くうるり」で「回りけり」は言わずもがなという気もします。
 05 椎の実の  良い雰囲気なのですが、「夜学かな」で全体をまとめるよりも、「夜学をしていたら椎の実が降ってきた」というような瞬間の動きの方が良い句になりそうです。
 07 この町に  これまた良い雰囲気ですが、「鯊日和」は少し弱いかなぁ。
 08 冬薔薇の  きちんと出来ていると思うのですが、ここをもう一歩深く踏み込んでほしいところです。
 14 けふのまた  気持ちのよい句。今年はとてもよく柿の出来た年でした。
 15 だんだんに  「冬に入る」というからには、立冬のその日の出来事を、瞬間的に切り取った句でないと、せっかくの「冬に入る」という季語が生きません。ぜひ再考を。
 20 今朝起きて  素直な句で、面白いと思うのですが、気になる点が一つ。この句の場合「今朝」は必要かどうか。「目が覚めて」などの方がすんなり読めるのでは?
 22 ひろびろ  「駅の前」ではなく「駅前を」の方が、冬蠅の動きが見えてくると思います。逆に「駅前に」とすると、何だかただそこにいただけ、というか、存在感も元気もない冬蠅という感じになります。助詞の使い分けは俳句のキモです。いろいろお試しあれ。
 23 紅葉かつ  散紅葉の裏表の違いを詠もうとした心意気は買いますが、「それぞれに」ではまだ具体性が足りない。ここが踏ん張りどころです。
 27 星の数  言わんとすることは何となく分かるのですが、言葉のつながり(特に助詞)がどうもすっきりしていません。内容を盛り込みすぎという気もします。冬空のごとくすっきりとした句に仕立ててください。

来月の投句は、12月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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