ハルヤスミ句会 第九十九回

2009年1月

《 句会報 》

01 大冬晴となりの村のポストまで  波子(鋼・阿)

02 弁当に箸のみじかや冬菫     春休(阿)

03 三枚の紙幣に冬の風当たる    鳴雪

04 この通り小ぶりの目立つ注連飾り つよし(あ・鳴)

05 去年今年まご娘来るアルバイト  あたみ

06 小気味よく餅搗く音のうれしけれ 波子(あ)

07 冬空の青に泣きたくなる日かな  阿昼(波)

08 室咲や思はず足が前に出る    鳴雪

09 雪見んと椅子持ち来るや窓の下  春休(あ・阿)

10 初茜エンジン音と靴音と     あたみ

11 一人づつ路地をすすむも初参   まどひ(波)

12 ふうはりと三四五羽や初すずめ  波子

13 しみじみと賀状に向い呟きて   あたみ

14 冬はつとめて焼きおにぎりの醤油焦げ 春休

15 子の後に入りて嬉しき初湯かな  つばな(波)

16 ぶらんこも私も冬日浴びてをり  阿昼(山・ま・鳴)

17 ジョーカーの手元離れぬ三日かな つばな(鋼・鳴)

18 水仙の思ひは風に聞くべしや   鳴雪

19 初東風に佃煮にほふ舟だまり   まどひ(春)

20 暖房の利いて粘土のにほひ甘   春休(ま)

21 初春の光の中へ手を伸ばす    つばな

22 降る雪や指に粘土のしつとりと  春休(ま)

23 走り居り家の中では着ぶくれて  鳴雪

24 膝に落ち弓の名手の投げ扇    まどひ

25 日の射して肌の温もり寒に入る  つよし

26 ふれあはぬ近さに冬の薔薇ふたつ 阿昼(鋼・春)

27 全くの虚報であれば冬林檎    鳴雪

28 飾りはずして燃えないものと分別す つよし(山・春)

29 初日の出網代湾まで見にゆけり  あたみ(山)



【 鋼つよし 選 】
○01 大冬晴  景色が大きくてよい。
○17 ジョーカーの  近頃は正月でもトランプすることなくなりました。
○26 ふれあはぬ  写生としてよいと思う。

【 梅原あたみ 選 】
○04 この通り  なんだか気になる眼目<小ぶりがいやに眼につく通りとは?いったいどんな通りかな?いろいろ想像してみたが面白い句だと思いました。
○06 小気味よく  正にそのものずばり、餅つきの喜ばしい一時は新春を迎える心いきを表す、うれしけれ**です。
○09 雪見んと  背伸びして窓の下の雪を見ようとしたが、*ふと椅子に気ずき可愛いしぐさで椅子を運び雪を見下ろす事が出来ました。目の前に状景が浮かび、なんとも言えない可愛らしさです。

【 中村阿昼 選 】
○01 大冬晴  久々に晴れ渡る冬の空。こんな日は歩くのが楽しい。
○02 弁当に  コンビニ弁当についているような箸かなあ。冬菫は咲いているけれどきっとまだ風は冷たい。
○09 雪見んと  子供かな。窓の側は寒いと思うけど、それでも見飽きないのだろう。
他に好きな句
 11 一人づつ路地をすすむも初参   
 18 水仙の思ひは風に聞くべしや   
 20 暖房の利いて粘土のにほひ甘   

【 山田つばな 選 】
16 ぶらんこも  冬の日を、いっぱい浴びているのに、そこはかとない寂しさを感じました。
28 飾りはずして  おめでたいものも、時期が過ぎたらゴミになってしまう。当たり前のことなのに、どきっとしました。
29 初日の出  ゆったりとして、正統派日本のお正月ですね。あこがれちゃいます。

【 舟まどひ 選 】
○16 ぶらんこも  浴びてがいいのでしょうか。何気ないのですが、ぶらんこの揺れや空気感、服装、心の中、公園全体等いろいろなことが想像されます 
○20 暖房の  季語と粘土のにほひで無心に制作している様子が見えてくる不思議な句。
○22 降る雪や  この感覚いいですね。読み手も無我の境地にひきこまれそう。降る雪で決まりました。

【 石川鳴雪 選 】
○04 この通り  別に小さいのがいいとは思いませんが、句全体に控え目な華やかさを感じました。
○17 ジョーカーの  正月三が日の楽しさが伝わって来ました。句作者は本気で悩んで居るかも知れませんが。
○16 ぶらんこも  季重なりも全然気にならない句だと思いました。

【 喜多波子 選 】
○07 冬空の  冷気の中で青空が目に沁みる 遠い昔の記憶までが色々思い浮かぶ 日常の冬の一コマが鮮やかです
○11 一人づつ  初詣では 産土の路地の奥の社でしょうか 一人づつ厳かに進む様子が目に見えます
○15 子の後の  何時もは二人になった夫婦、離れて暮らす子供達がお正月なので帰ってきた 子が皆入った仕舞い風呂で 手足を伸ばし家族の暖かさ嬉しさが感じられる句です

【 小川春休 選 】
○19 初東風に  海苔の佃煮でしょうかね。あまり大きくない港の雰囲気がよく伝わってきます。「初東風や」と切った方が良いような気もします。
○26 ふれあはぬ  近いけれども触れ合わぬその近さから、冬薔薇の存在感が伝わってきます。これも「近さや」と切るのもアリかもしれません。 
○28 飾りはずして  身も蓋もない言い方ではありますが、生活の実感として理解できます。個人的には、「もの」を漢字「物」にされた方が、より一層身も蓋もない感じになるのではないかと思います。
 01 大冬晴  素直で良い句ですが、単純に「冬晴や」でも良いのではないでしょうか。
 03 三枚の  冬の風が当たったというだけでは、紙幣がどういう状態なのかよく分かりません。三枚という枚数も、状態を読み取る手がかりになっていないようです。どのような状態・やり取りの中の紙幣なのかが分かれば、より生き生きとした句になると思います。
 04 この通り  見ての通りなどという意味の「この通り」なのか、ストリートの意味の「この通り」なのか(おそらく後者だとは思いますが)はっきりしません。語順などを工夫すれば、そういう曖昧さは排除できるはずです。小ぶりの目立つ注連飾り 
 06 小気味よく  気分の良い句ではありますが、餅搗とはそもそもこういうもの、餅搗の本意に含まれている内容という気もします。
 11 一人づつ  落ち着いた雰囲気が良いですね。
 12 ふうはりと  後から後から雀が集まってくる様子が窺われます。リズムも良いです。
 13 しみじみと  おそらくは自分に届いた賀状なんでしょうが、たくさんの賀状を書きながらつぶやいた、とも読めます。そうならないように、ディテールを描くことによって、状況を具体的にしながら、さらに句としての奥行きも出てくるのではないでしょうか。
 17 ジョーカーの  ばば抜きとすぐに分かる描写は良いと思うのですが、「三日かな」があまり効いていないような…。
 24 膝に落ち  弓の名手なのに投扇が下手、という面白ポイントがはっきりしすぎているようです。ちょっと川柳的な面白さではあります。
 25 日の射して  「射し」「温もり」「入る」と動詞が多いのでまとまりのない印象です。下五を「寒に入る」ではなく五文字の名詞などにはできないでしょうか。
 29 初日の出  素直に出来ていて好感の持てる句です。固有名詞がよく働いています。


来月の投句は、2月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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