「寒雷の」の巻 歌仙


二〇〇〇年十二月六日
於 弘前市元大工町・旅館うらしま



01 冬 寒雷の七里長浜より来たる      祥

02 冬  暑さ寒さも三寒四温        彦

03 冬 ほとほとや一人言など云ひもして   祥

04 雑  白湯をのんでもするめ食うても  真 菜

05 秋月 しろがねの月の光の照るばかり   うづめ

06 秋恋  夜寒の寝間のへたる枕に     元 気

07 秋恋 爽籟や書きかけの文飛ばされし   春 休

08 秋恋  思ひの丈を朝顔の花       元 気

09 雑 借金を返せ返せと通ひつめ     春 休

10 雑  たまには海へ行きたいと言ひ   真 菜

11 夏 いか釣の船の灯りのかうかうと   うづめ

12 夏  青き蜥蜴の出で来たりしも     祥

13 夏 姫君の参らせたもうバンガロー   真 菜

14 雑  働かざるもの食ふべからざる   春 休

15 冬月 疲れたる身を投げだすや月冴ゆる   彦

16 雑  原稿料は五枚千円        元 気

17 雑花 花丸をもらひ喜ぶ十七才      うづめ

18 春  春来たりなばミニスカートを    彦

19 春 鶯や鳥黐竿をふり回し       元 気

20 春  雛の道具こはれてをりぬ     真 菜

21 雑 妖しきは四谷シモンの人形ぞ     彦

22 雑  ガーターベルト片側はづれ    うづめ

23 春 春暁の吉田銀三判を押す      真 菜

24 春  春の潮を連絡船で        元 気

25 春 百鳥の弧を描きたるクレタ島    春 休

26 雑恋 男の嘘を楽しんでゐる      うづめ

27 夏 公園の夜の噴水に踏み込みて    春 休

28 夏月 月光仮面汗ばんでゐる       彦

29 雑 いま変はる私の中の私かな     真 菜

30 雑  香のにほへる聖観世音      元 気

31 冬 早朝の窓にきらめく六花かな     彦

32 冬  ひつきりなしにジングルベルも   彦

33 雑 換気扇油汚れの落ちざりき     うづめ

34 雑  それにつけても嫁不足かな    真 菜

35 春花 花筏一艸庵を出でにけり      元 気

36 春  いとのどけくも茶柱の立つ    春 休


            祥  三   彦  七
           うづめ 六  真 菜 七
           元 気 七  春 休 六

                  捌  春 休

                 執筆 春 休



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