《 連句取扱説明書 》


1.連句とは
    風流の初めや奥の田植歌     芭蕉
     いちごを折りて我がまうけ草   等躬
    水せきて昼寝の石やなほすらん  曾良
 「連句」とは、ふつう五七五で完結する俳句に、このように七七の「脇」を付け、さらに五七五の「第三」を付け、というふうに、長句(五七五)・短句(七七)を交互にくりかえしてゆく文芸形式をいう。

2.付合とは
 「付合(つけあい)」とは、長句または短句に対して、句を付けること。その際、付ける句を「付句」、付けられる句を「前句(まえく)」、前句のそのまた前の句を「打越(うちこし)」という。連句が流れるように展開していくためには、「打越」の世界とはまるで違った「付句」を付けていくことが必要になる。
 前句・付句・付合の性質については、「AとかけてBととく、その心は?」という、カケ・トキ・ココロから成る三段式のなぞなぞがあるが、Aを前句、Bを付句、「その心」を付合と考えてもらうとわかりやすい。前句をよく読み込んでその世界を理解し、そこになんらかの関連性のある付句を作る、ということである。読む力と詠む力が必要になってくる。また、次の人が読解できないような句を作ることも避けねばならない。なお、「その心」について説明すると面白味が激減してしまうので、作者は「その心」を解説したりしないこと。

3.歌仙とは
 歌仙とは、三十六句から成る連句の形式のこと。歌仙という名称は、和歌の「三十六歌仙」から。連句の形式には他に、百韻・五十韻・半歌仙などがある。
 三十六句のうち、特別の名称を持つものは、「発句(第一句目)」「脇(第二句目)」「第三(第三句目)」「挙句(あげく)(第三十六句目・最後の句)」の四つだけで、他はまとめて「平句(ひらく)」と呼ばれる。
 特別の名称を持つ四つの句は、その連句一巻の「起承転結」をつかさどる(発句が起、脇が承、第三が転、挙句が結)。三十六句の歌仙と百韻との違いは、第三と挙句との間の平句の数の違いに過ぎないのである。

4.発句について
 付句の鑑賞は、つねにその句を前句とともに読み、二句の間(付合)を推論で埋めることによってなされる。それに対して発句の特殊性は、前句なしに一句だけで鑑賞されるという点にある。そこで一句をどこかで切って二句分に仕立てる必要が生まれた。その必要から「二句一章」の構造が必然的に考え出されたのである。その切れるはたらきをする字を「切字」という。
 発句には、当季の景物を詠むことが要求される。というのは、発句はTPOをふまえた、連衆への挨拶でなくてはならないからだ。

5.脇について
 発句の挨拶に対して、挨拶で返すのが脇である。発句のTPOをよくふまえて寄り添うように付ける必要がある。季も発句と同季が好ましい。句末を体言止めにするのが一般的である。

6.第三について
 発句・脇の世界を一転して、以下に新たな平句の展開を引き出すのが「第三」の役割である。句末は「て」、「にて」もしくは「らん」にするのが一般的。

7.挙句について
 一巻の巻き納めの句なので、「祝言」の心をこめて軽々と詠むことが望まれる。無理にめでたい句にしないまでも、不吉な句や悲しい句は避けること。

8.定座について
 かつて、連句を記していた懐紙の各ページに、月と花をもれなく詠み込むために、「定座(じょうざ)」が定められた。第五句目が月の定座、第十七句目が花の定座、第二十九目が月の定座、第三十五句目が花の定座となっている。
 他に、「出所(でどころ)」というものもあり、第十四句目が月の出所に当たる。「定座」は、前に移すこと(「引き上げる」という)が認められるだけだが、「出所」は、大体このあたりに月が出る、というくらいの意味なので、前にも後にも移すことができる。

9.季について
 四季の中でも春と秋は景物が豊かなので、三〜五句ほど続けることになっている。夏と冬は比較的景物が少ないので、一〜三句続けることになっている。
 同じ季の句を何句か続ける場合、同じ春の句だからといって、晩春の句の次に初春の句を付けるような季節を逆行させてしまう付け方は避けねばならない。
 連句の中での季節の移り変わりは、基本的には間に「雑(ぞう)」の句、つまり無季の句を最低一句ははさむことになっている。たとえば、春―雑―夏、のように。春―雑―秋や、冬―雑―夏のように、間の季節を飛ばしてしまってもかまわない。春―雑―雑―雑―夏のように、雑の句が複数になってもよい。春―夏、春―秋のように、雑の句をはさまないで他の季を付けることを「季移り」という。この「季移り」は基本的には避けた方がよいのだが、花(春)の定座の前句が夏であった場合など、いたしかたない場合もある。参加者(「連衆」という)各自が連句の流れを思いやりながら、このような場合を引き起こさないように付けていくのが望ましい。

参考図書:『連句への招待』乾 裕幸・白石悌三 著 和泉書院 一五〇〇円


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