最後に、世間には殆ど知られないことで、しかも「大和」「武蔵」の、
恐らく最大の自慢と思われる一点について述べなければならない。
それは、有史最大最重の砲塔(一基二千二百余トン)を、恰も己の手足を動かすように、軽々と、
スムースに動かす動力の施設であった。
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動力なぞは素人の凡そ注意しない所と思われるが、二千二百トンの大砲塔を、自由自在に旋回し、
同時に十八インチ砲を左右上下に、愛煙家が莨を指で動かすように振りまわす「力」というものは、
如何なる「力」であろうかを考えると恐ろしいのみならず、その「力」は、同時に、
火薬の運搬から装填まで演つてのけるのである。
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そもそも軍艦の一局部に、如何にして斯かる恐るべき力が賦興されたのであろうか。
勿論、砲塔と巨砲は「大和」の専売ではない。 昔から、戦艦のそれは機力で操作されるに決まつているが、
世界の常道はこれをレシプロ式機関によつて来た。
例えば戦艦「長門」は六百馬力のレシプロ・エンジン四基を以て操作し、米英の新鋭艦も略ぼ同様であつた。
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ところが、二千二百トンの砲塔、三連装の十八インチ砲を作動する「力」は幾何級数的に大である。
これを「長門」のレシプロ六百馬力で動かす為には、機関が二十四基も必要になる計算であり、
そのスペースは、軍艦の中に大きい工場を別に造るようなものである。そんな広い場所を取つて了つたら、人間の住む部屋が無くなるであろう。
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現れたのは実に六千馬力のタービン機関四基であつた。世界で最初の砲塔用タービンだ。
その力は戦艦「三笠」をらくに走らせてなお余力がある。まことに思い切つた新着想であつた。
新着想と言えば、十八インチ砲弾(重サ一トン半)を直立の姿勢で弾庫に格納して、垂直に引揚げる新方式をも採用した。
これにより、火薬(一発分は三三二キロ、米俵にして六俵分)と砲弾を塔下十五メートルの弾火薬庫から
揚げて装填発射するまでの操作を、僅か三十秒から四十秒の間隔で実施することが出来た。
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十六インチ砲に較べると口経は二インチだが、威力は一・六倍も高い。
その九発が三十秒毎に発射される威力は凄烈以上だ。どの見地から見ても、これを操作する砲塔と水圧ポンプとは驚異的なものであつた。
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宜なるかな、アメリカ海軍の「大和」研究の最高技術官は調査の結果感想を述べて、
「『大和』を造れと命じられれば我々もそれを造ったであろう。
ただ十八インチ砲塔を旋回する水圧ポンプだけは確信が持てなかつた。
この点には正直に頭をさげる。」と直言した。・・・・・
要するにこの大砲施設と超高力水圧ポンプとは、古来人間が軍艦の上に構築した 最高の技術であつたことに疑いない。
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